荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第8話 赤い悪魔【中編】2

 不死身の怪物・ジョーキッドを倒す為、無謀な作戦を決行した保安官たち――荒野の北の崖までジョーキッドをおびき寄せる為、馬車を使い誘導を試みる。しかし、逃げたと思われたのか、ジョーキッドに動く気配は一向に見られない。

「おいマイク! 本当にアイツ追いかけて来るのかよ!?」

「心配すんな、必ず追いかけて来る。だから今のうちに銃に弾を装填しておけ」

「でも、もうあんなに遠くなっちまったぞ!?」

「だから心配するなって言ってんだろ! お前もいい加減しつこいな!」

 焦るダリスに苛立ち混じりで返事をするマイクの顔は青白い。出血がひどいのか、大量の冷や汗が頬を伝い、呼吸も徐々に乱れてきた。傷口にスカーフを押し当てる手も震えている。

「マイク、顔が白いぞ……大丈夫か!?」

「あぁ、心配すんな。あいつを殺すまで死にゃあしねぇよ」

 一方、遠ざかっていく馬車を静かに見つめるジョーキッド。足元に落ちているナイフを拾うと、ゆっくり瞼を閉じ、一拍間を置いてから見開く。――と、次の瞬間、歪んだ笑みを浮かべたジョーキッドは馬車を追って駆け出した。

「! おいでなすったみたいだぜ!」

 双眼鏡で様子を窺っていたモーガンが声を発した。マイクの読み通り、ジョーキッドは後を追って来たようだ。――だが、何かがおかしい。猛スピードで走る馬車相手にぐんぐん距離を縮めて来る。

「なっ……!?」

「お、おい! 何だよアイツ……メチャクチャ速ェぞ!!」

 モーガンとダリスが驚愕の声を上げた。馬車にまったく引けを取らないジョーキッドの俊足に、ふたりの血の気が引いていく。当然だ、走る馬車を追走するなど人間業ではない。

「まずい! どんどん迫って来る!」

 気づけばジョーキッドと馬車の距離はわずか数メートル程にまで縮まっていた。そして、ジョーキッドは荷台に乗ろうと手を伸ばす。

「やっぱりマイクを狙っているのか! ヤツを絶対に荷台に乗せるな!」

「ニコラス! もっとスピードを上げろ! ダリス、ロビン! 銃を構えろ!」

 ニコラスが馬車のスピードを上げ、モーガン、ダリス、ロビンは銃を構える。

「撃てーっ!」

 号令と同時に3人はジョーキッドめがけて集中砲火を浴びせる。しかし、激しい揺れとジョーキッドが動き回るせいもあってか、撃ち放たれた弾丸はいずれもジョーキッドには命中せずに周囲の地面を削る。

「チクショー……! やっぱり全然当らねェ!」

「まるで羽毛に向かって弾を撃ってるみたいだ……!」

「ヤツが身軽なのもあるが、コッチは揺れる荷台の上だ。さっきよりも分が悪い」

「クソ! 算段が狂っちまったか……まさかアイツがあんなに速いとは……!」

 4人は思わず弱音を零す――だが、ここまできて諦めるわけにはいかない。もし、荷台に乗られれば終わりだ。3人はジョーキッドを近づけさせないように間髪入れず弾丸を浴びせ、負傷しているマイクは装填役に回る。――北の崖までのデス・レースが幕を開けた。


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