荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第7話 赤い悪魔【中編】1

 目の前のダリスは不利な状態ながらも懸命に敵と戦っている。ふたりの言うとおり、仲間への誤射を恐れている場合ではない。モーガンは覚悟を決めるとジョーキッドに銃口を向けた。しかし、ふたりが動き回っているせいでなかなか狙いを定められない。

「おいダリス! 動くな! 狙いを定められねぇ!」

「はァ!? バカ言ってんじゃねーよ! 止まったら殺されちまうだろ!」

「クソッ! チョロチョロすばしっこい野郎だ、ヤツの前世はゴキブリか!?」

「ウガアァァァッ!!」

 咆哮と共に突き出された刃、ダリスは身を翻すとガラ空きになったジョーキッドの腕を掴み一気に捻り上げる。ジョーキッドは痛みでナイフから手を放すと、そこに一瞬の“隙”が生じた――。

「今だ! ふたりともブッ放せーッ!!」

 ダリスの号令と同時にモーガンとマイクが発砲した。腕を押さえられているジョーキッドは回避することが出来ず、胸と腹にそれぞれの銃弾を受けると、悲鳴を上げる間も無くその場に崩れ落ちる。

「や、やった……!」

 大捕り物はわずか10分足らずで決着がついた。ダリスの決死の行動が実を結び、何とかジョーキッドを倒すことが出来た。モーガンとマイクは緊張の糸が切れたのか、脱力するとその場にへたり込む。一方、ダリスは急いで落ちている自分の銃を拾うと、ふたりの元へ駆け寄る。

 ――と、次の瞬間、ふたりから同時に頭上に鉄拳を落とされた。

「痛いっでェーッ!!?? な、何しやがんだテメェらっ!?」

「このバカ! バカ! バカ! バカ! ムチャすんなって言っただろ!!」

「マイクの言うとおりだこのバカ! 無事だから良かったが、一歩間違えばお前もロータスのように殺されてたんだぞ!? わかってんのかこのバカ! バカ! バーーーーカ!!」

「な、何だよオッサンたち! そんな怒ることねェだろ!?」

「怒るに決まってんだろバカ!」

「バカバカバカバカうっせーよ! 第一、俺のお陰で赤い悪魔倒せたんだろ!?」

「“俺のお陰”だぁ? 調子に乗ってんじゃねぇよこのタコ!」

 命懸けで戦ったのにもかかわらず小突かれた上に怒鳴られたダリスは頭をさすりながら不服そうに唇を尖らせる――と、そこへレストランへ向かっていたニコラスとロビンが合流する。

「モーガン! マイク! ダリスーっ!」

「おう、遅ぇぞお前ら!」

「悪い悪い! それよりもお前ら無事か!? 赤い悪魔はどうなった!?」

「見ればわかるだろ? ジョーキッドはそこに倒れてて、俺とモーガンは無傷だ。だが、ダリスがケガをしてる。野郎、俺たちの中で一番小柄なあいつを狙って攻撃してきたんだ」

「何だって!?」

「ケガって言っても、こんなもん“かすり傷”だよ。ツバつけときゃ治る。それより聞いてくれよふたりとも! このオッサンたち、俺が赤い悪魔に狙われてるのを逆手に取って“陽動”してやったのに、鉄拳お見舞いした上にバカバカ怒鳴るんだぜ!? 俺のお陰で勝てたよーなもんなのに、ありえねーだろ!? なァ!?」

 その瞬間、またもやダリスの頭上に鉄拳が落とされた。――今度はニコラスの鉄拳だ。

「でェ~~~~ッ!!??」

「バカ野郎! ふたりが怒るのも当然だ! 赤い悪魔相手にムチャしやがって!!」

 激痛にのたうち回るダリスの傍らでマイクがおもむろに立ち上がると、倒れているジョーキッドの傍へ歩み寄る。――ジョーキッドは仰向けに倒れたまま、ピクリとも動かない。

「死んでる、のか……? いや、死んでるよな。胸と腹に銃弾を受けて死なない人間なんかいねぇ。“人間凶器”と言われたあのハリー=ウィルソンですら、腹に4発撃ち込まれて死んだんだ。だからこいつだって死ぬハズだ。……いや、むしろ死んでくれなきゃ困る」


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