荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第7話 赤い悪魔【中編】1

「ふ、不死身!? そ、そんなおとぎ話みたいなこと……現実にあり得るんですか!?」

「だから言っただろ? ……正直そんなバカげた噂、誰も信じちゃいねぇさ」

「で、でも――もしそれが本当だったら、モーガンさんたちに勝ち目は無いですよ!」

「そうだよ、だからさっさと騒ぎを収束させてあいつらの応援に行くんだ!」

「うぅ……みんな、僕たちが行くまでどうか無事でいてくれ……!」

 そうこうしているうちにレストランの前に到着すると、ふたりはドアの両側の壁際に身体を寄せ銃を抜き構える――発砲事件が起こったのにもかかわらず、中からは銃声はおろか悲鳴すら聞こえない――嫌に静かだ、本当に事件などあったのかと疑いたくなるほどに。

 ニコラスが反対側のロビンに目配せをすると、ロビンは小さく頷きドアの隙間から店内の様子を窺う――が、中はしん、と静まり返っていて人の気配も無ければ物音ひとつしない。

「あの……ニコラスさん、人の声も物音も何も聞こえませんけど……」

「何も聞こえないだぁ!? そんなワケあるか! もう一度耳の穴かっぽじってよく聞け!」

「ほ、本当ですよ! 犯人らしき人物の声も、人質の悲鳴も何も聞こえません!」

「……いったいどういうことだ……?」

 ニコラスも試しにドアに耳を当ててみるが、ロビンの言う通り中からは何も聞こえない――と思ったが、一瞬、遠くの方から微かに複数の人の声が聞こえた。何やら楽しそうに喋っているようだが、遠い上にドア越しなので何を話しているのかまではわからない。

「……今、中から微かにだが人の声が聞こえた。――それも楽しそうにお喋りしてやがる」

「お、お喋り?」

 まさか虚偽の通報だったのか? しかし、そんなことをする必要がいったいどこにあるのか。何とも不可解な出来事にふたりは互いの顔を見合わせると、頭に疑問符を浮かべながら小首を傾げる。

「とにかく中へ突撃するぞ! ロビン! 後に続け!」

「えっ……あ……は、はい!」

 次の瞬間、弾けたようにニコラスが飛び出しドアを蹴破って中へ突入。ロビンもすぐ後に続く。

「保安官だ! 動くな! 全員、銃を捨てて両手を上げろ!!」

「少しでも動いたら容赦なく撃つぞ!!」

「あーっ! ニコラスさん!」

「へっ!? マリア!?」

「おや、おふたりともお早い到着でしたね。……暴れたならず者たちなら先ほど全員縛り上げてそこに放置してあるので、連行してください。死体が一緒ではうまい食事もまずくなる」

「あれ!? 死神も!?」

 何事もなかったかのようにのんびりと食事をしている死神たちに思わず呆然とするニコラスとロビン。よくよく周囲を見てみると、死神とマリアの他に客の姿は無い。恐らく、騒ぎが起きたのと同時に全員逃げ出したのだろう――つまり、まったくの無駄足だったということだ。

「聞こえませんでしたか? そこの連中を早く片づけてくださいと言っているのです」

「は? ――お、おい、これはいったいどういうことだ??」

「ふふん、悪い人たちはジェーンさんと先生がやっつけちゃったんですよ!」

「何だと!? 死神、てめぇついにならず者とはいえ“殺し”やりやがったのか! いつかはやるとは思っていたが、こんなに早く、しかも俺がいなくなった瞬間にたぁふてぇ野郎だ! こいつらと一緒にお前も逮捕してやる! ――さぁ来い、俺がお前を死刑台へ送ってやる!」


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