荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第7話 赤い悪魔【中編】1

 戦いを忘れて小競り合いを続ける保安官たちの一方で、ジョーキッドはようやく“何か”に気づいたようで、銃に弾が残っているかを確認し始めた。睨めっこを始めて既に5分近く――実に長い道のりであった。そして銃身を外し中を確認すると案の定、弾は1発も残っていない。

「……」

 スッカラカンなのを理解すると、今度はコートをパタパタと叩いて“予備の弾”が無いかを確認し始めた。通常の回転式拳銃リボルバーであれば、銃身とは別にある“薬室”に弾を込めればそれで済むが、ジョーキッドの持つ“ペッパーボックスピストル”は銃身兼薬室の“一体鋳造”で弾丸を装填するには一度“銃身”を取り外し、弾を装填してから再度取り付ける必要がある。

 しかし、銃撃戦中においてそんなことをする時間と余裕は無いのは火を見るよりも明らか――だからこそ、ガンマンたちは皆、自分の置かれた状況や残りの弾数に神経を尖らせるのだ。

「……無い」

 ポツリと呟く――どうやら完全に弾切れしたようだ。そして解体用のナイフも折られてしまった今、もはやジョーキッドになす術はない。彼に残された道はただひとつ、“逃げる”しかないが、モーガンたちがそれを許すはずがない――そう、言うまでもなく“絶体絶命”だ。

「あいつ、どうやら完全に弾切れしたみたいだぞ……これは千載一遇のチャンスだ!」

「あぁ、ヤツを絶対に逃がすな! もし万が一繫華街へ逃げ込まれでもしたら、それこそ大パニックになる――この場で必ず仕留めるんだ!」

「よっしゃ! 待ちに待った“一方的虐殺”の始まりだ! いくぜヤローども!」

「気が早ぇっつうの。ヤツが弾切れだからって決して油断するなよ? いいな!」

 またとない好機――もし、この機を逃せば応援が来る前に3人は終わりだ。3人は互いの顔を見合わせて頷くと、壁際からジョーキッドに向けて一斉に発砲。だが、一瞬早く“殺気”に気づいていたジョーキッドは真横に飛ぶと飛んでくる弾丸を回避。一方的な銃撃戦が幕を開けた。


***


 ジョーキッドとの戦闘からやや時は遡り、発砲事件が発生したレストランへ向かい繫華街を走るニコラスとロビン。既に町の中は白昼堂々と起こった発砲事件の話題で持ちきりだ。

「赤い悪魔に続いて3日連続で発砲事件……ったく、この町はいったいどうなってやがるんだ!? こんなに連続で事件が起こるなんてよ、もしかして“呪われてる”んじゃねぇのか?」

「えぇ、本当に急ですもんね……ハリー=ウィルソンも死んじゃったし……」

「それもこれも全部あの野郎、死神が来てからだ。あいつ本当は“疫病神”だろ絶対」

「もう、人のせいにするのはよくないですよ。きっと偶然ですって」

「だとしたら“嫌な偶然”だな――ったく、偶然なんかで死んだらたまったもんじゃねぇ」

「……、モーガンさんたち、大丈夫でしょうか……」

「あぁ、相手はあの赤い悪魔だからな。応援に行くまで無事であることを祈る他にねぇよ」

「……」

「それに赤い悪魔には“妙な噂”もありやがるからな……真偽のほどは不明だが……」

「噂? ……何ですか? その噂って!? 僕にも教えてくださいよー!」

「聞きたいのか? ……あまりの現実離れっぷりに開いた口が塞がらなっちまうぜ?」

「そ、それでも聞きたいです! 教えてください! お願いします!」

「……。……“不死身”……つまり、赤い悪魔は何をやっても絶対に死なないんだ」

「えっ……!?」


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