荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第7話 赤い悪魔【中編】1

「ダリス―っ!」

「このクソヤロー! ブッ殺して畑の肥料にしてやるッ!!」

 腕を切られて激昂したダリスは咄嗟にジョーキッドに発砲した。だが、信じられないことにジョーキッドはこの超至近距離から発射された弾丸を躱した――弾丸は彼の動きに合わせてカーテンのように靡く真っ白な長い髪を通り抜け、僅かに散らしただけだ。

「何ィーッ!?」

「弾丸を躱しただと!? バカな! そんなことがありえるのか!?」

「弾丸を躱したんじゃない! ヤツはダリスの銃を握る指の動きを見て“発砲する”と予測したんだ! だからダリスが引き金を引くよりも一瞬早く身体を翻して回避することが出来た!」

「一瞬で指の動きを!? 何ていう動体視力だ……あいつは本当に人間なのか!?」

「赤い悪魔……想像以上のバケモンだ……! 俺のケツが悲鳴を上げてやがる……!」

「ウガアァァッ!!」

 ダリスの攻撃が外れたその刹那、ジョーキッドは咆哮と共に彼の腹めがけて回し蹴りを放つ。真横から放たれた脛がメキメキと軋むような怪音を響かせながら脇腹に深くめり込むと、ダリスはうめき声と共に吹っ飛んで倒れ込んだ――そして、衝撃で銃を手放してしまう。

「うっ……! グアアアアッ……!」

 痛みを堪えて何とか起き上がろうとしたそのときだ、ジョーキッドがダリスに馬乗りになると、その首に血で濡れたナイフを突き立てようとする――ダリスは咄嗟にその手を掴んだ。飢えた狼、もとい悪魔の執念とでもいうのか、ナイフを握るその力は想像以上に強く、肩と腕と腹にダメージを受けた今のダリスでは抑え切れない。徐々に刃先が喉元に迫ってくる――。

「ヒヒヒヒヒッ……逃げずにオレに向かって来たコトだけは褒めてやるぜ、ニンゲン!!」

「チッ……クショウ……! こんなとこで死んでたまるかァーッ!」

「死ぬんだよ! 残りのふたりもスグにオレの腹の中に納めてやるぜ……! まだまだ喰い足りねェからなァ! ヒャーハッハッハッハッハッ!!」

「クソーッ!!」

 そのとき、発砲音と同時にナイフの刃が吹き飛んだ。ジョーキッドは音がした方へ振り向くと、モーガンが銃口を向けている。そして、モーガンはすぐさま駆け出すと跨るジョーキッドを蹴り倒し、間一髪のところでダリスを救助した。

「ダリス! 大丈夫か!?」

「あ、あァ――あのヤロー、ゴボウみてーな身体の割にかなり力がありやがるぞ……! ったく、ホントどこまでもデタラメなヤローだ! 今まで捕まらなかったのも頷けるぜ!」

「早く物陰に隠れろ! 撃ってくるぞ!」

「ダリス! 走れ!」

 3人が物置小屋へ向かって走り出したのと同時に数発、発砲音が響く――しかし命中精度が低いのか、放たれた数発の弾丸は誰にも当たらずに地面を削る。そして3人は無事に小屋の中へ駆け込み難を逃れた。――しかし、それは束の間の“安心”。すぐにまた、ジョーキッドの攻撃がくる。


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