荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第7話 赤い悪魔【中編】1

「テメェら全員、殺して喰うまでオレの“狩り”は終わらねェ」

「狩りだと? 猟師にでもなったつもりか? イカレ殺人鬼の分際で笑わせんじゃねぇ。笑い過ぎて切れ痔にも響いちまうじゃねぇか。悪化したらお前さんに慰謝料請求してやるからな」

「……? イシャリョーってなんだ?」

「待て。……ジョーキッド、お前さん……慰謝料もわかんねぇのか?」

「わかんねェ」

「慰謝料ってのはな、悪いことをした“お詫び”に金を払ってもらうって意味さ」

「カネってなんだ?」

「……。金ってのはな、つまり硬貨と紙幣だ。丸くて薄いヤツと人が描かれた紙。OK?」

「……?? ……全然わかんねェ……」

「おいおいジョーダンだろ!? こいつは超弩級のバカじゃねぇか!」

 ジョーキッドのあまりの頭の悪さにモーガンが口をあんぐりとさせていると、傍にいるダリスがトントン、と背中を軽く叩き声を掛ける。

「オッサン、フツーに考えてみろ。弾切れもわかんねーようなヤツに慰謝料がわかるかよ」

「おっと、そりゃそうだな。はっはっは! 俺としたことがマヌケだったぜ」

「……。俺が診てもらう前に、オッサンが診てもらった方がいいんじゃあねーの? アタマ」

「心配すんな、俺はまだ現役バリバリだ。脳ミソもムスコの方もな!」

「……。バッカじゃねェの!?」

「おいおい、ダリスお前チンピラのクセして何イイ子ぶってんだよ」

「イイ子ぶってねーよ。素直な気持ちを言ったまでだ」

「うぅ……そんなことよりも、ニコラスさんはまだ来ないんですか!?」

「あぁ、荷馬車なんていくらでも通ってそうなんだがな……!」

 なかなか戻って来ないニコラスにロビンとマイクが徐々に焦り苛立ち始める――くだらない茶番でジョーキッドを惹きつけておくのもそろそろ限界だ。――と、そのときだ。遠くから馬の蹄と車輪の軋る音が聞こえてくる。ニコラスが戻って来たのだろうか。

「! ――蹄の音……ニコラスか!?」

 4人が音の聞こえてくる方へ振り返ると、ニコラスが操る小さな荷馬車がまっすぐモーガンたちの方へ向かって来る。

「やっぱりニコラスだ! あの野郎、ハラハラさせやがって!」

 4人は待っていましたと言わんばかりに歓声を上げると、停まった馬車の荷台に先にマイクを乗せ、そのあと次々に乗り込んだ。

「おっせーよバカ! 荷馬車捕まえるのに何百年掛かってんだァ!?」

「うるせーな! この小っこいの一台借りるだけで精一杯だったんだよ!」

「よし、このまま北の崖に向かって走れ! ジョーキッドは必ず追って来るハズだ!」

「よっしゃ、かっ飛ばすからお前ら振り落とされんなよ!」

「ところでニコラス、お前……御者やるのいつぶりだ?」

「4年ぶりだよ」

「よ、4年……!?」

「絶対に操縦ミスするなよ!? ミスったら俺たちもジョーキッドと一緒にお陀仏だ!」

「おう! 大船に乗ったつもりでいろよ!」

「泥船の間違いだろ?」

「うるせぇ! とにかく出発するぞ! 確か場所は北の崖だったな!?」

 いつものくだらない小競り合いもそこそこに、ニコラスは北の崖に向かって馬車を走らせた。ガタガタとひどい揺れが5人を襲う中、マイクはジョーキッドの方に目をやると、彼は依然としてボーっとしたまま遠ざかる馬車を見つめていて、一向に追って来る気配はない。

「おい、マイク……アイツ追って来ねェぞ!?」

「心配するな、ヤツは必ず俺たちを追って来る。目の前に手負いの獲物がいるのに、おめおめと逃すようなマヌケなヤツじゃねぇさ。今はとにかくニコラスが事故らないように祈ってろ」

「……。あーあ、生命保険にも入っておくんだったぜ」

 果たして、マイクの狙い通りジョーキッドは後を追って来るのだろうか? 町の運命を賭けた決死の作戦が今、始まった。


第7話 赤い悪魔【中編】1 fin


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