荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第7話 赤い悪魔【中編】1

 それぞれ未練を語ると銃を抜いた。どうやら、こんな状況でもまだ諦めていないようだ。

「……。いくら撃ってもムダだ……なんでかはわかんねェけど、オレはいくら銃で撃たれても、ナイフで切られても、崖から落ちても絶対に死なねェんだ」

「あぁ、たった今見たぜ。とんでもねぇ身体してやがるなお前さん。正直言って逃げ出したい気分だ――だがな、俺たちは保安官、たとえどんなに絶望的な状況でも“町の治安を守る者”として逃げるわけにはいかねぇんだ。だから、ジョーキッド……死んでもここでお前を倒す!」

 さすがは正義の味方といったところか。しかし、ジョーキッドが本当に不死身であることが発覚した今、モーガンたちに勝ち目はほぼ無いに等しい。

「シビれるくらいカッコイイこと言うけどよ、何か勝算はあるのか?」

「あったらとっくに実践してるよ」

「相変わらずノープランか。お前らしいや。サマンサも切れ痔も呆れてるぜ」

「ケッ! ――とにかく、今は攻撃するしかない。ヤツが音を上げて逃げたくなるくらいな」

「……、……逃げ出す……そうだ、それだ! それだよモーガン!」

「……? どういうこった、ニコラス?」

「とにかく攻撃しまくって、あいつが逃げざるを得ない状態にするんだ!」

「しかし、猛攻を仕掛けられるほどもう弾は無い」

「そう思って持って来た。それに弾が尽きても、そんときは徒手格闘に切り替えればいい」

「徒手格闘だと!? そんなハリー=ウィルソンじゃあるまいし!」

「4人でかかればイケる」

「バカ野郎、それでもし失敗して繫華街にでも逃げ込まれたら大変なことになるぞ!」

「だったら繫華街へ逃げられないようにすりゃあいいだろ! モーガン、お前なにやる前からビクビクしてんだよ!? いつからてめぇのケツの穴はそんなに小さくなった!? 成功だとか失敗だとかこの際どうでもいい! とにかく“やるだけやる”んだよ! わかったか!?」

「……」

「ニコラスの言うとおりだぜモーガン。こうなったらやるっきゃねーだろ!」

「そうですよ! 結果はどうあれ、やれるだけのことはやりましょう!」

 モーガンは押し黙っていたが、仲間たちの𠮟咤激励に決心すると大きく頷いた。

「わかったよ! ったく、お前ら――人の気も知らずにいとも簡単に言いやがって」

「おっしゃ! そうと決まればさっそくマイクの弔い合戦だ!」

「おう!!」

「人のこと勝手に殺すんじゃねぇよ、このタコ!」

 突然の声にダリスはギクッと身体を跳ね上がらせた。声がした方を見ると、胸を切り裂れたマイクが上体を起こしながらダリスを睨んでいる。

「マイク! テメェ生きてやがったのか!?」

「当たり前だろ! 俺が死んだら誰がそこの要介護者モーガンベビーダリスの面倒見るってんだ!?」

「あァ!? 誰がベビーだコラ!!」

「お前以外にいったい誰がいるんだよ、この大ダコ!」

「ハハ、さすが俺たちの“ママ”だぜ」

 マイクは気力を振り絞って立ち上がると、血で赤く染まった胸を押さえながらモーガンたちの傍へ戻って来る。幸いなことに、先ほどのジョーキッドの一撃は致命傷には至らなかったようだ。しかし、それでも受けたダメージは深刻で足元がおぼついていない。

「マイク、お前はこのまま逃げろ。後は俺たちが何とかする」

「お前らの作戦は聞いてたよ。猛攻撃なんていかにもバカが考える作戦だ。――やなこった」

「マイク!」

「仲間を置いて自分だけ逃げたなんて親父に知られたら、俺はブッ殺されちまう」

「今は状況が違う。お前はケガをしてるんだぞ!」

「でもまだ動ける」

「いいや、このまま逃げるんだ! 今のお前はハッキリ言って足手まといだ」

「お断りだ」

「マイク! これは“命令”だ! またブッ倒れないうちにとっとと逃げろ!!」

「断る! いいか、よく聞け、モーガン! みんな! ――俺に名案がある」

「名案!?」


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