荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第6話 赤い悪魔【前編】3

 気を取り直して繫華街を歩いていると「よっ!」っと脇から来た男性にポンと肩を叩かれた。死神は振り向いて顔を見てみると、その男性は先日会った銃器店の店主だった。

「おや、先日はどうも」

「黒ずくめの兄ちゃん、まさか兄ちゃんがあの“死神”だったとはなぁ。ビックリして髪の毛とケツ毛が同時に抜け落ちそうだったぜ。――ところでよ、あんたがあのクソッたれ悪徳町長を殺ったんだろ? みんな噂してるぜ、大したもんだ」

「いいえ、自分ではありませんよ。今朝からずっとそう言われて困っているところです」

「はっはっは! 別に隠さなくてもいいじゃねぇか! あんたのお陰で事実上、このトルカ町は救われたんだ。誰も責めやしねぇさ」

「町の方々は責めなくても、保安官には責められますよ」

「ま、それがヤツらの“仕事”だからな。――あ、そうそう! あの野郎に没収されてた商品、全部戻ってきたから営業再開したぜ。時間があるときに是非来てくれよな、マケておくぜ」

「おや、本当ですか? それはありがたい。では、後ほど伺わせて頂きます」

「おう! 待ってるぜ」

 ふたりに手を振り去って行く店主を、マリアも笑顔で手を振りながら見送る。

「これで安心してお買い物できますね! 先生!」

「えぇ。食事を済ませたら伺いましょう」

「わー……ついに銃の扱いを教えてもらえるのね……なんだか緊張してきちゃった!」

「気が早いですよ」

「だってだって! 生まれて初めて本格的に“銃”を握るんですもの!」

 喜びでピョンピョン飛び跳ねるマリアに死神はチッチッチと人差し指を振る。

「あなたに“本物の銃”はまだ早い。銃を握る以前に、あなたはまずその脆い精神を鍛える必要があります。先ほどのように些細なことで泣き叫んでいるようでは、実戦など夢の夢だ」

「うぅ……はい……」

 死神からやんわりと苦言を呈されると、マリアは風船がしぼむように身を縮めて落ち込んでしまった。

「フフ……さ、行きますよ」

「あっ! 待ってー!」


***


 時を同じくして再びロータス牧場。凄惨な事件現場を目撃したショックで伏せっていたジョン=ロータスの息子のフレデリックは喉の渇きで目を覚ますと、おもむろに身体を起こしてベッドから離れた。部屋を出ると階段を下りてリビングへ向かう。

「うわっ、何だこれ……!?」

 リビングに入った彼の目に飛び込んできたのは、酒瓶で散らかり殺伐としたテーブルと床。おまけに床にはガラス片まで落ちている。

「まったく親父のヤツ、こんなに散らかしやがって……!」

 文句を垂れながら酒瓶とガラス片を片づけるフレデリック――そのとき、彼はここで初めて“異変”に気がついた。部屋の中はしん、と静まり返っており人の気配が無い。外では番犬のロッキーがけたたましく吠えている。

「ん……親父……いないのか? おーい、親父―!」

 家中をくまなく捜すも、やはりどこにもいない。仕事に出たのか? しかし、家畜はあの通り全滅して仕事など出来る状態ではない――。では、父親はいったいどこへ行ったのか?


4 / 14

著作者の他の作品

その場のノリと思い付きだけで書いた「荒野の死神」のハロウィンパロ。ただの...

舞台は17世紀ヨーロッパ。トランシルヴァニア公国の貴族「ギュスターヴ」の跡...