荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第6話 赤い悪魔【前編】3

 そのとき、出入り口のドアが開くと男がふたり中へ入って来た。ふたりのうちのひとりは先ほど牧場で“怪物”と遭遇したフレデリック=ロータスで、顔面蒼白で手足がひどく震え、まともに立って歩ける状態ではない。もうひとりの男に弱った背中をしっかりと支えられている。

「あれ!? お前、フレデリックじゃねぇか! どうしたんだ!? 顔色が悪いぞ!?」

 尋常ではないフレデリックの様子にギョッと驚いたニコラスが腰を上げると、ふたりの元へ駆け寄る。しかし、フレデリックは錯乱しているのか、ニコラスにまったく気づいていない。

「さっき偶然、道端で座り込んでるのを見つけて……何があったのか訊いたんだが、バケモノがって泣くばかりで埒が明かないから、ここまで連れて来たんだ」

「バケモノ!?」

 “バケモノ”という不吉な言葉を聞いた他の4人もそれぞれ手を止めると駆け寄って来る。

「おい、フレデリック……バケモノっていったい、どういうことなんだ!?」

「……、…………」

「フレデリック! 何とか言え! いったい何があったんだ!?」

「……バケモノ……、真っ白な長い髪の、赤いバケモノが……俺んちの物置小屋で……、……お、おおお俺のっ……! 俺の親父を殺して喰っていたんだああああああああっ!!」

「!!」

「うわあああああーっ! 親父ーっ!!」

 恐れていたことがついに“現実”になってしまった――ニコラスたちに激震が走る。そして、そのショックで誰もが言葉を失った。物置小屋での凄惨な光景が脳裏に蘇ると、恐怖のあまりフレデリックはうずくまり泣き叫んだ。緊迫する事務所内に彼の慟哭が響く。

「……“赤い悪魔”だ……間違いねぇ……! あの野郎、俺たちが現場の捜査に行ったとき、或いはその前から既に物置小屋に潜んでやがったんだ! クソっ! 何てこった……俺たちが見落としたばかりにロータスが犠牲にっ……!!」

「まさか事件直後からずっと物置小屋に隠れているなんて、誰も思わなかっただろうよ……どうする? 俺たち全員でかかっても勝てるかわからねぇぞ。なんせ相手は西部史上最悪の猟奇殺人鬼だからな」

「負けは“死”だ! だが、ヤツが現れて被害が出た以上、そんなことは関係ねぇ……俺たちは保安官……俺たちがヤツから町を守らなきゃならねぇんだ! 全員さっさと準備しろ! 今すぐロータス牧場へ行くぞ!」

「あぁ!」

 それぞれが戦いの準備を始めたそのとき、また男がひとり事務所へやって来た。

「おーい保安官! レストランで発砲だ! すぐに来てくれ!」

「何だって!? ったく、非常事態だっていうのに……!」

「やれやれ、どこまでも間が悪い……ニコラス、ロビン。お前たちはレストランの方を頼む。赤い悪魔は俺たち3人で何とか抑える」

「たった3人で大丈夫なのか!?」

「3人もいれば十分さ。早く行け、時間が無い!」

「わかった。事態を収束させたら俺たちも急いで応援に行く……お前ら、それまで絶対に死ぬんじゃねぇぞ! ――行くぞ、ロビン!」

「はい!」

 保安官たちは急いで戦いの準備を済ませると、二組に分かれてそれぞれの現場へ駆けて行った。


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