荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第6話 赤い悪魔【前編】3

 一方、時を同じくして保安官事務ではマイク・ロビン・ニコラス・ダリスの4人が応接スペースでモーガンが散らかした大量の書類の仕分けと整理に追われていた。散らかした張本人のモーガンはというと、4人を手伝う素振りもなく自分のデスクで黙々と新聞を読み耽っている。

「おーい、モーガン! 新聞なんか読んでないでお前もちょっとは手伝え! だいたい書類散らかしたのお前だろ!? 何で俺らが毎度毎度お前の尻拭いしねぇといけねぇんだよ?」

「うるせぇな、今忙しいんだよ。後で片づけとくから纏めて置いておいてくれ」

「お前、この前も同じこと言って出しっぱなしの書類片づけなくて、結局俺が全部片づけたんだろ!? ったく、一日中“岩”みてぇに椅子に張りつきやがって――だからいつまで経っても痔が治らねぇんだよ。最近、悪化したの知ってんだぞ」

「――あぁ? 何で知ってんだよ? だいたい俺の持病は関係ねぇだろ。それとも何か? “お前らの手伝いすりゃあ治る”って医学的に証明でもされたのか?」

「そうだよ。だからさっさとこっち来て手伝え」

「後でな」

「今すぐ来いよ! 今すぐ!」

「書類片づけるのなんか別に今じゃなくてもいいだろ! それとも何か? 早く片づけねぇと書類に“足”が生えて蜘蛛の子散らしたように全部どっか行っちまうってか!?」

「そうだよ!」

「ケッ! つまんねぇことばかり言いやがって」

「つまんねぇこと言ってんのはお前だろ! タコ!」

 マイクとモーガンのやり取りを黙って聞いていたニコラスがダリスとロビンに視線を向けると、小声でふたりに向かって話し掛ける。

「おい、何かあいつら険悪じゃねぇか? 俺がいない間に何かあったのか?」

「どーってことねェよ、ただの喧嘩だよ」

「喧嘩!?」

「え、えぇ……赤い悪魔のことで言い争いになって……」

「そーそー、俺とロビンが止めたからよかったけど、危うく殴り合いになるところだったんだぜ? ったく、イイ歳したオッサンがよくやるよなァ」

「へぇ~……あいつらがなぁ~……珍しいこともあるもんだなぁ……」

「きっと明日は雨と槍の代わりにクソが降るぜ」

「ハハ、違いねぇ!」

「……。……僕……何かすっごく嫌な予感がします……」

 笑い飛ばすダリスとニコラスの傍らで、ふたりの仲が拗れたことに言い知れぬ不安を感じるロビン。そんな彼をニコラスは「バーカ、変に考え過ぎだよ!」と笑顔で励ますが、依然としてロビンの表情は浮かない。

「そーだよ、あいつらのことだから明日には元通りになってるって!」

「で、でも……殴り合い寸前だったんですよ!?」

「ダリスの言う通り、あいつらだってガキじゃねぇんだ。いつまでも喧嘩なんかしねぇって! 下手すりゃあ夜、酒場で飲んだらすぐに仲直りするかもよ? そうだろ!?」

「……。はい……」

 ふたりに諭されたロビンは何とか強引に納得すると、再び書類の仕分けを始めた。手を動かしながら同じく作業を進めるマイクとデスクに鎮座するモーガンを一瞥するも、彼らはしかめっ面のままだ。

「……」

 こんな状態で本当に“仲直り”など出来るのだろうか? ――ロビンの口からは思わずため息が漏れた。


12 / 14

著作者の他の作品

その場のノリと思い付きだけで書いた「荒野の死神」のハロウィンパロ。ただの...

舞台は17世紀ヨーロッパ。トランシルヴァニア公国の貴族「ギュスターヴ」の跡...