荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第6話 赤い悪魔【前編】3

「わーっ! おねえさん強ーい!!」

 あっという間にならず者たちを片づけた勇猛な女にマリアはキラキラと目を輝かせながら歓声を上げると、女の元へ駆け寄る。一方の死神はというと、ここまで強い女は今までに見たことがないようで依然、唖然としたままだ。

「……あら、“恥ずかしいところ”を見られちゃったようね。あはははっ!」

「ううん、とーってもカッコよかったです!」

「ふふ、ありがと。それにしても可愛い子ねぇ~! この子、アンタの娘!?」

「……あ、いえ――違います」

 女に声を掛けられた死神はハッと我に返ると、おもむろに腰を上げ女の傍へ歩み寄る。

「女性でありながら、一瞬でならず者たちを倒してしまうとは……お見それしました」

「あんなヤツら何てことないわよ。あっ、アタシはジェーン=マグワイア、賞金稼ぎよ」

「ジェフ=ロギンズ、“死神”と呼ばれています。こちらは連れのマリアです」

「マリア=レナードです! えっと、死神先生の“一番弟子”です!」

「死神!? アンタがあの!?」

 西部一と謳われる殺し屋“死神”の意外な正体にジェーンは目を丸くすると、ジロジロと品定めをするように彼の顔を見つめる。

「へぇ~っ! アンタがあの死神……何よ、陰気で弱そうだけど結構イイ男じゃない!」

 笑顔でそう言うと、ジェーンは思いっきり死神の背中を叩いた。彼女に背中を叩かれた瞬間、バシィン! という“破裂音”のような音と共に、骨が軋み、内臓まで震えるような重く激しい衝撃が全身を貫く――まるで“鈍器”で殴打されたような激しい痛みだ。

 これが大男を軽々と放り投げた女の力なのか、あまりの痛さに死神も思わず「痛っ!!」と、短い悲鳴を上げるとその場にうずくまってしまった。背中を押さえながら声にならない声を上げて小刻みに震える死神のその姿に、マリアも思わず「ひゃああ……」と両手で口を押え、顔を青ざめさせる。

「何よ、これくらいで情けないわねぇ! アンタ男でしょ? 男ならしっかりしなさいよ」

「あ、あなたの力が“異常”なのですよ……! ……は、吐きそうだ……」

「せ、先生ーっ! だ、だだだ大丈夫ですかっ!?」

 顔色が真っ青を越えて“深緑色”になっている死神の背中を必死になってさするマリア。その光景を見て「やれやれ」とため息をつくジェーン。3人の傍らで、先ほど肩に銃弾を受けたならず者のひとりが気づかれないようにやや上体を起こすと、近くに落とした銃を手に取りその銃口をジェーンに向ける。

「くっ……、このクソアマが! 死にやがれっ!!」

「! ジェーンさん! 危ないっ!」

「えっ!?」

 男に気づいたマリアが咄嗟にジェーンにしがみついて押し倒す。その刹那、店内に銃声が響いた――。


10 / 14

著作者の他の作品

その場のノリと思い付きだけで書いた「荒野の死神」のハロウィンパロ。ただの...

舞台は17世紀ヨーロッパ。トランシルヴァニア公国の貴族「ギュスターヴ」の跡...