荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第5話 赤い悪魔【前編】2

 一方、事務所ではモーガンが必死に資料棚から赤い悪魔に関する資料を漁っていた。彼の周囲には膨大な量の書類が散乱していて、もはや足の踏み場もない。

「くそー……ダメだ、全然見つからねぇ! 」

 かれこれ数十分は探しているが、一向に資料は見つからない。苛立ちを抑えきれずモーガンは思わず手に持ったファイルをバシッ! と床に叩きつけた。叩きつけられた衝撃でファイルに綴じられていたこれまた大量の書類が床に散乱し、辺りは惨憺たる状態になってしまっている。

「せめてヤツの“手配書”だけでもあれば……!」

 ギリッと歯を食いしばり拳を握るモーガン。こうしている間にも、赤い悪魔は町のどこかで次の獲物を求めて蠢いているのかもしれない――不安と焦りだけがどんどん募っていく。

「おーいモーガン! 戻ったぞ……って、あーっ! なんだこりゃあ!?」

 ドアを開けて入って来たマイクは書類が散乱した床を見た途端、悲鳴を上げた。モーガンの周りには散らかった書類が積もっていて、さながら“紙の雪”だ。しかもその量は半端ではない、恐らく“資料棚ひとつ分”はあろうか。

「お、おおお、お前! 俺とロビンが3日徹夜して纏めた資料をっ! 何てことしやがる!」

「モーガンさーん、資料ありましたかー? って、えーっ!? 何なんですかコレ!?」

 マイクに続いて入って来たロビンも床の惨状を目の当たりにした瞬間、悲鳴を上げた。そして、絶望からか脱力しガクリと膝から崩れ落ちる。

「何だ何だ!? 何かあったのか!?」

「どーしたどーした!?」

 ふたりの断末魔の悲鳴を聞いたニコラスとダリスも慌てて事務所に入って来た。

「うおっ!?」

「ゲッ! おいおい何だよコレ!? 俺とニコラスのデスクよりひでェじゃねーか!」

「お前と一緒にすんなバカ!」

「はァ!? 大して変わらねーだろ!?」

「何だとぉ!?」

「あァ!? やんのか!?」

「うるせぇ! ニコラス! ダリス! くだらねぇ喧嘩してるヒマがあんならお前らも資料探すの手伝え!!」

 モーガンの一喝にふたりは気まずそうに互いの胸ぐらから手を放すと、まだ手つかずの方の資料棚をニコラスとダリスが、モーガンが散らかした書類の見直しと片づけをマイクとロビンが手分けして始める。

「あーあ……こりゃまた徹夜だぞ、覚悟しとけよ、ロビン」

「えーっ!? また僕が手伝うんですか!? 勘弁してくださいよもう……」

「当然だろ? お前以外に他に誰がいるんだよ」

「モーガンさんがいるじゃないですか」

「あいつが人の手伝いなんてするわけないだろ、そもそも手伝おうって“気”すらねぇんだから。あいつはただ“人を使う”だけの自己中ヤローだよ」

「じゃあ、ニコラスさんとダリスさん」

「お前なぁ~……ニコラスとダリス、あのふたりに“書類の整理”なんて出来ると思ってんのか? 自分たちのデスクすらあの有様なのに」

 わかりきったことを言うロビンにマイクは呆れ顔をしつつ“あれを見ろ”と言わんばかりに顎で指した。それを見て何かを察したロビンもマイクが指した方向に恐る恐る視線を向ける。――視線の先には書類で散らかり殺伐としたニコラスとダリスのデスク。

「…………」

 “それ”を見るとふたりは「はぁ~」とげんなりした様子で深いため息をついた。


9 / 13

著作者の他の作品

舞台は17世紀ヨーロッパ。トランシルヴァニア公国の貴族「ギュスターヴ」の跡...

その場のノリと思い付きだけで書いた「荒野の死神」のハロウィンパロ。ただの...