荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第5話 赤い悪魔【前編】2

「すみません、僕が間違ってました……」

「だろ? 今夜は頑張ろうぜ、俺もとことん付き合うからよ」

「はい……」

 しょんぼりするロビンを慰めるようにマイクは彼の肩にポンッと手を置いた。

「あーあ……僕、雑用する為に保安官助手になったわけじゃないのに」

「そうブー垂れんな、俺も入ったばかりの頃は雑用とモーガンの尻拭いばかりやってたぜ」

「マイクさんも!?」

「そうだよ。モーガンもニコラスもダリスも、みんな最初は“雑用”から始まったんだ」

「へーっ! ……ねぇ、マイクさん。新人時代のマイクさんってどんな感じだったんですか?」

「俺の新人時代? ……もう20年も前のことだ、覚えちゃいねぇよ」

「えーっ! マイクさんの話、聞きたかったなぁ……やっぱり苦労したんですか!?」

「当たり前だろ、いつもモーガンと他の“先輩方”からコキ使われまくってたよ」

「……僕もいつかモーガンさんたちみたいな立派な保安官になれますかね?」

「真面目に仕事すりゃあな」

「そ、そっか……! よーし、僕、頑張りますっ!」

 マイクの適当な返事に希望を見出したロビンは満面の笑みで応えた。彼を見つめるその目はやる気の炎で燃えている――そんなロビンにマイクは「ははは……単純なヤツだな」と苦笑いを浮かべながら小さな声で呟く。

 マイクとの会話で失いかけていた仕事への情熱とやる気が戻ったロビンは床に散乱した書類を片っ端から掻き集めると、これでもかと山積みにする。

「おい、そんなに積み上げたら崩れるぞ」

「大丈夫、大丈夫! モーガンさんがこーやってモノ運んでるのいつも見てますから!」

 マイクの忠告にそう返すとロビンは両手に抱えた書類の山を応接スペースのテーブルの上にドサッと勢いよく置く――その瞬間、衝撃で積み上げられた書類の山は雪崩のように崩れて辺りに散乱した。

「あーっ!!」

 無惨にも崩れ去った書類の山。ロビンは絶望の悲鳴を上げると、再びガクリと膝から崩れ落ちた。

「何やってんだバカ! 言わんこっちゃない!」

「ああああ……す、すみません!!」

「ったく、余計な手間掛けさせるなよ!」

「モ、モーガンさんに出来るなら、僕にも出来るかなって思って……うぅ……」

「あいつに出来るからって、お前にも出来ると限らないだろ!」

 マイクは調子に乗ってやらかしたロビンを小突くと散乱した書類を掻き集める。

「ん?」

 そのとき、掻き集めた書類の中に1枚の“手配書”を発見し、おもむろに手に取った。

〔“JOEKID=THE=HEARTEATER”〕

「あった! こ……これだ! ジョーキッド! おーい、モーガン! 手配書あったぞー!!」

「本当か!?」

 一報を聞いたモーガンたち3人は棚を漁る手を止めると、急いでマイクの元へ駆け寄る。

「いったいどこにあったんだ!?」

「お前が散らかした書類の山の中に……ったく、思いっきり見落としやがってこの野郎!」

「おぉ、そうか! いやぁ~すまんすまん!」

「どれどれ、どんなヤツだ!? 見せてくれよ!」

 またもや横からしゃしゃり出てきたダリスはマイクから手配書をぶんどると、どんなヤツかと期待に胸を躍らせながら手配書を裏返して見る。

「……ん? 何だよこれ!? “後ろ姿”じゃねーか!」


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