荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第5話 赤い悪魔【前編】2

 帰り道――事件のことを話しながらダラダラと歩くダリスとロビン。そしてふたりのやや後を歩くマイクとモーガン。凄惨な事件を目の当たりにしても平静なマイクとは対象的にモーガンの表情は強張っている。

「やれやれ、これからふたつも事件を抱えて忙しくなるぞ。――まったく、こんなことになるならあいつら(賄賂を受け取っていた保安官たち)処分するんじゃなかったな」

「……」

「それどころか判事までハリー=ウィルソンと癒着してたとはな……ったく、本当に狡猾で抜け目のねぇ野郎だぜ。ある意味死んで良かったかもな……そう思わねぇか?」

「……」

「モーガン?」

 いつもならベラベラと喧しいほどうるさいモーガンが今日は不気味なほど静かだ。――それもそのはず、家畜殺しとはいえあんな凄惨な事件が起これば、トルカ一図太いであろうモーガンでもショックを受けるのは無理もない。だが、やはり気に掛かるし何より気味が悪い。

「おい、モーガン。聞いてるのか?」

 マイクの声が聞こえていないのか、モーガンから返事はない。――さすがに何か様子がおかしいと思ったマイクは恐る恐るモーガンの顔を覗く。

「!」

 目に映ったモーガンの表情にマイクは戦慄した。――瞼が広がる限界まで大きく見開かれた目、頬から肌を伝い流れる滝のような汗、強く噛まれた唇からは薄っすらと血が滲んでいる。――“まるでこの世のものではない何かに追われているような”ひどく切迫した表情だ。

「モ、モーガン……」

 長年、モーガンの相棒として共に仕事をしてきたマイクだが、どんなときも冷静沈着で力強く皆を引っ張って来たモーガンの、彼のこんな表情を見るのは初めてだった。

「モーガン、お前……どうしたんだ!? 大丈夫か!?」

 マイクに声を掛けられたモーガンはハッと我に返る。

「あ、あぁ……大丈夫だ。――なんせ稀に見るえげつない現場だったからな……」

「それはわかるが……ひどい形相をしてたぞ? まるでこの世の終わりのような」

「この世の終わり、か……。……それよりマイク、お前たちは繫華街へ行ってニコラスを呼んで来てくれ。たぶん死神と一緒に酒場にいると思う。――俺は先に事務所に戻って“ヤツ”の手配書を探す……まだ資料棚のファイルの中に原本が残ってるハズだ」

「手配書? ……いったい誰の?」

「――ジョーキッド=ザ=ハートイーター……人呼んで“赤い悪魔”だ!」

「赤い悪魔!?」


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