荒野の死神 荒野の死神 第2部【赤い悪魔編・上巻】

第4話 赤い悪魔【前編】1

 一方、時を同じくして町の郊外にある小さな牧場。モーガンたちは事件の通報者の牧場主の男性と共に現場確認の為、家畜小屋の前に集結していた。

「ここか? 家畜が殺られた小屋は?」

「あぁ、そうだ」

「よし……んじゃさっそく捜査といくか」

「その前に、中はかなりひどいことになってる。ケツからゲロ吐く覚悟で見てくれよ」

「……そんなにひどいのか?」

「あぁ、餌をやりに行った俺の30にもなる息子がショックで寝込んじまったくらいな」

「……」

 モーガンたちにそう念を押すと男性は家畜小屋のドアを開ける。ギイィ、という軋むような音が周囲の緊張感をさらに高める。4人は顔を見合わせると、モーガンが先頭を切って中へ入り、その後をマイク、ダリス、ロビンが続く。

 小屋の中に入ると、壁はバケツでひっかけられたような赤黒い飛沫で染まり床は一面血の海。その中に牛が数頭沈んでいる。全頭、腹を大きく切り裂かれ臓物がそこら中に散乱し、屋内は鉄臭い血の臭いと臓物の腐敗臭で充満している――その光景はまさにこの世の地獄だ。

「うげっ!! 何だよこれ……!? 怪獣にでもやられたのか!?」

「本当にひでぇな……クマやコヨーテだってこんな殺し方しねぇぞ」

「あぁ、こりゃあ確かに“事件”だな」

「ぼ、僕……具合が悪くなってきました……うぅっ……」

 稀に見る凄惨な事件現場にモーガンたち4人も思わず血の気が引いた。そして、尻からヘドを吐きそうなのを我慢し全員で手分けして現場一帯を調べる。

「ん? これは……? おい、モーガン」

「ん? 何か見つけたのかマイク?」

 捜査を始めて暫くして牛の死骸を調べていたマイクが牛の頭に“穴”が開いているのを見つけると、近くにいるモーガンを呼んだ。呼ばれたモーガンはマイクの傍へ歩み寄りしゃがみ込むと牛の頭に開いた穴をじっくりと調べる。

「この穴……これは“銃創”だ」

「銃創……つまり牛は銃で撃ち殺された後、腹を裂かれて心臓を抜き取られたってことか?」

「ま、そういうこったな。どっちにしろやり口が“異常”なのには変わりないがな」

「異常、か……本当にその通りだな。ったく、とんでもねぇイカレ野郎がいたもんだぜ」

 ホラー小説顔負けの残忍かつ猟奇的な犯行に思わずため息をつくマイク。――そしてふと“もしもニコラスがここにいたらショックで気絶してただろうな”と考える。

「しっかしニコラスのヤツがいなくてよかったなぁ、もしあいつがここにいたら、ショックでゲロ吐いてブッ倒れてただろうよ、あいつグロいのダメだからな! はっはっは!」

「俺も今、モーガンとまったく同じこと考えてたよ。あいつ図体と言うことはデカいくせしてこういうのはてんで弱いからな。笑っちまうぜ、本当に」

 ニコラスの噂で笑い合うモーガンとマイク。そんなふたりを“こんな状況でよく笑えるな”と言わんばかりに捜査を続けるダリスとロビンが冷ややかな目で見つめる。

「こんな状況で笑えるかフツー? あのオッサンふたりも相当イカれてるよな」

「ですよね……僕は気持ち悪くてもう当分ステーキなんか食べられそうにないですよ」

「俺も。あーあ、俺もあそこまで図太い人間になりてェなァ~」

「何言ってるんですか、ダリスさんは十分図太いですよ……」

「あのふたりにゃ負けるよ」

 寄り添ってコソコソ話をするダリスとロビンに後ろから「お前ら何か言ったか?」とモーガンが声を掛ける。モーガンの声にふたりはギクッと身体を震わせると恐る恐る振り返り、しかめっ面のモーガンに苦笑いを浮かべて有耶無耶にすると捜査を続行した。

 だが、そんなものがモーガンに通じるわけもなく、ダリスとロビンは容赦なくその場で絞め上げられた。悲鳴を上げるふたり――そんな3人を見てマイクは「やれやれ」と肩をすくめた。


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