転生少女は白と黒の明日を観る

照乃 ☾teno☽︎~actorfox~
@Lost_a_heart

#2 黒白と観測者

――眠ってしまっていた。あれからどれだけ眠っていたのだろうか。

寝起きだというのに、妙に意識はハッキリしていて冷静で、それが本能的に先程のことは夢ではないということを察していた。


焚き火の音。


弱い風に揺れる木々の音。


人間の弱々しい寝息のような音。


自分の呼吸と心臓の音。


よかった。僕は生きている。それが実感でき、安心して目を開けることができた。

あたりは木々に囲まれ、真ん中には今にも消えそうな焚き火。それを挟んだ僕の反対側に

夢に出てきた黒髪の少女が眠っていた。が、夢とは違ってお面をしていなかった。


(・・・可愛い)


 滅多にいないよこんな可愛い子。べつにロリコンでもなければ同性愛者でもないし、小さい女の子はみんな可愛いけど、その可愛げな寝顔の中には不思議な気品を感じることができた。

自分の隣に、一冊の本が落ちていることに気付く。

その本には太い革のベルトが施されていて、留め具が無く、ぱっと見では開き方がわからない。

僕はその本を手に取って開けようとした。

・・・その時。


 本の隙間から青白い光が勢いよく溢れ出した。いきなりすぎて思うように声が出ない。


「・・・なにそれ」


 少女も強い光で目を覚まし、目を丸くして僕と本へ視線を行ったり来たりさせている。


「わ、わかんないよ!わかんない!」


 それもそう。突然光りだしたんだから。

しばらくするとその本はだんだん光を弱め始めた。ゆっくりと手から離れ、10cmほど浮いて静止した。

そしてまたゆっくりとベルトが解け、本のページが風に吹かれたかのようにペラペラとめくれていく。

ページがちょうど半分くらいにまで来て止まった。すると、左のページに黒い潰れかけたような文字が浮かび上がってきた。


”主(マスター)を特定した。存在の命(さだめ)を遂行すべく、覚醒す。”


「・・・え?」


本は続けた。


”ようこそ主君達。私の名前は観測者(オブサーバー)。主君らの生誕を心から祝福するとともに、心から歓迎する。”


「なんだか堅苦しい本だね・・・。」

少女がそう呟き、僕は頷いた。なんだか夢で見た時とイメージと違う。もっとこう・・・、ツーンとした感じかと。


”主君らに名前はまだない。この世界での最初の課題を贈呈しよう。双方は互の名を名付け、我に刻め”


「名付けろって、僕名前あるんだけど・・・?」


”前世、及び他の世界線で与えられた名は原則使用することはできない。”


「前世・・・。予想はできてたけど、やっぱり転生したってことで合ってるのか・・・」


 なんとなく違和感が起きた時からあった。

 まず、地面がかなり近い。座っていて分かりにくかったが身長が半分かそれ以下になっている。それに、自分の手もかなり幼い。あとは、先程からちらちらと視界に入る白い前髪。これだけの条件が揃えば言えることは1つ。僕の体は今、夢の中の時の姿だということ。


「そうみたい・・・。」


 また少女は呟き、黙ってしまった。


 しばらくの沈黙。とっても気まずい。”本”も何も言ってくれないし、何か、何か話出さないと・・・。


・・・そうだ!


「じ、自己紹介!」


 いきなり過ぎたかな・・・。少女はまた目を丸くしてこちらをじっと見てきた。


「・・・そ、そうだね。しよう、自己紹介。」


 ため息が出た。よかった。これで何も返してくれなかったらどうしようもなかった。


「じゃあまず僕から。僕の前の名前は牧瀬 葵(まきせあおい)。歳は17、高校3年生。帰宅部。趣味は読書とゲーム。」


「私の名前は佐渡 朱音(さわたりあかね)。歳は私も17で高3。演劇部だったんだけど、ちょうど最近引退したところ。」


朱音は言い終わると、近くにあった水溜りを覗き込んだ。


「どうした?」


「夢の中の時から思ってたんだけど、私たちってほんとそっくりだよね。双子みたい。」


「・・・夢?朱音も見てたの?夢。」


「朱音もって?葵ちゃんも見てたの?」


「ん?・・・ああ。ねぇ、夢の中で言ってた”世界の選択を委ねられた”ってどういうこと?」


「・・・え?それを言ったのは葵でしょ?」


 二人でお互いの夢の話をしてお互いが見ていた夢は立場が逆転しただけの全く同じ夢だったことが分かった。偶然ではないだろう。その夢の意味は今の僕たちには、まだ理解できなかった。


「それにしてもそっくりだな~。違うの髪の色だけじゃないか?」


「そうだね、そうだ葵!私たちの名前、葵が”モノ”、私が”クロ”とかどう?」


「僕の名前を”シロ”にしなかったところは安直じゃなくて感心したよ。いや、結局は安直なのか(笑)」


「それはそうだけど、1から人の名前を考えるのって難しいでしょ?これくらいがちょうどいいよ」


確かに。


「んー。うん。いいんじゃないかな。僕はモノ。」


「私はクロ。決まりだね。」


”確認。主君らの転生を正式に確認しました。”


「名前が決まったのはいいんだけど、全く状況が理解できてないし色々説明してもらいたいんだけど・・・。てか、その堅苦しいの、なんとかならない?」


”どのような発言仕様がお望みで?”


「私はこのままでもいいのだけれど、そうだね。もうすこし軽い話し方だと親近感持てるかも。」


「そだな」


”うっす”


「「!?!?」」


”んじゃ、説明していくからよぉぉく聞いとけ”


思わぬ方向に軽くなった・・・。クロはツボにハマったらしく笑いをこらえて地面にうずくまっている。


大丈夫かな・・・。先が思いやられる。