転生少女は白と黒の明日を観る

照乃 ☾teno☽︎~actorfox~
@Lost_a_heart

#1 もうひとり、まだひとり

もしも。アレを選んでいれば。


 もしも。ああ言っていれば。


 もしも。もしも。もしも・・・。

誰にでもあるだろう。自らの過去の選択に後悔をする。

そして、その選択は世界を分岐させ世界を作る。

この物語は、無限にある分岐した世界線の一つにすぎない。


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 最近、よく夢を見る。

決まって僕は見慣れた教室の自分の席に座っていて、他には誰もいない。

無機質な空気と僕。ただそれだけの教室。

 今確かにこの空間に存在している僕だが、この体は僕のものではなかった。目線は一人称であるが、同時に三人称視点から自分を見る、というより感じることが出来る。僕の今の体は小柄で幼く、髪は白で肩につくかつかないかの長さ。いつも割れかけの白い狐のお面をしている不思議な少女。

 しばらくすると、目の前にもう一人の少女が現れる。

容姿は僕とそっくりだが、髪は黒色で、変わらず同じお面をしている。

その少女はほんの1m先に立っていていつも何も喋らず黙っている。

何分も何時間も、少女達は沈黙の中向き合ったまま。



そして目が覚める。




 僕は、日常に飽きていた。

用意されたテンプレートに乗っかっている。そんな日々だった。毎日なにも変わらない。そんな日々に飽き飽きしていた。

 刺激が欲しい。自分から動けば何か変わるかもしれない。そんな思いで一人称を男子でもないのに“僕”にしてみた。でも、変わったのは些細な周りの反応だけだった。


(そういえばラノベの新刊、何冊かためてたな~)

 そんなことを考えながら高校の校門を通過。

飽き飽きしているとはいえ、楽しくないわけじゃない。高校が家から遠いため、近くのマンションに一人暮らし。親が気を利かせて、一年前入学祝いに猫を買ってくれた。いやいや、今から高校生活で忙しくなるのに・・・。そんな風にも思ったけど、今となってはおかげで寂しくもなく、ありがたかった。

 猫の名前はアオ。自分の名前”葵(あおい)”から取ってつけた。

そうだな、そんな生活に未練はない。けど、強いて言うなら、美青年美少女に囲まれて生きたい人生だった!!!あとは、溜め込んだラノベの新刊達(もはや新刊ではない)の消化と、アオともう少し遊んでやりたかったな。って、何考えてんの。


 1時間目、世界史。

 世界史の長谷川先生は、最初の方は近代の世界情勢の話をしていたが、途中から脱線し、未来人ジョン・タイターの話に話題がズレていた。ジョン・タイターとは、有名な自称未来人兼タイムトラベラー。

「先生の推測に過ぎないが、彼は自分の生きていた世界線には帰れなかっただろう。事の始まりは2000年。ちょうど2000年問題が世間を騒がせていた頃、彼は2036年からやってきた。彼の目的は・・・」

長谷川先生はこのテンプレートからはじまる。

そして20分ほど話していると


キーンコーンカーンコーン


 チャイムの音で打ち切られる。

長谷川先生はいつも通り、悔しそうに

「時間か。ほら、挨拶するぞー。」

そういって、挨拶を済ませ教室から退室する。

そんな長谷川先生をめで追いかけていると

いつもとは違った寂しそうな顔でこちらを見ていた。気がした。


 2時間目、現代文。自習。

 現代文の日比先生は出張らしい。自習になった。1時間目の長谷川先生の話のせいか、昨夜のネット掲示板巡りのせいか・・・、猛烈な睡魔に襲われた。いいか、自習だし。

僕は顔を伏せて深い眠りに落ちた。





 ――しばらく眠っていた。寝すぎたかもしれない。でも、チャイムはまだ鳴ってない。

廊下を通る先生達に変な目で見られる前に勉強してるふりでもしていよう。


 僕は顔を上げた。


 周りにはクラスメイトはいなかった。

あれ、ホントに寝すぎた?次移動教室だっけ?


 なかなか眠気が抜けず目をこすった。

目を開けた。さっきと変わらない教室だが、どこか、どこか無機質な・・・。まるで、あの夢のような・・・。


瞬きをした。


 その一瞬で黒髪の少女は現れた。夢で見た少女と全く変わらなかったが、夢より鮮明に、そして美しく見えた。

いや、これも夢なのか。そうも思ったが、感覚はハッキリしていた。

いつもの夢そのものの光景が目の前に広がっている。ただ、一つだけ違う箇所がある。それは僕。僕はいつもの白髪の少女ではなく、僕自身だった。


沈黙はそう長くなかった。少女を眺めていると、お面越しに彼女が口を開いた。


「世界は選択を、君に委ねた」


 それだけだった。瞬きをすると、少女は消えていた。何だったのだろう。彼女の言った言葉の意味は理解出来ない。

なんだか、瞬きをするのが怖くなった。今、ここで瞬きをしたら、何かを失ってしまう。そんな気がした。


「選択を放棄する事は生を放棄する事に等しい。世界はそれを許さない。」


 教室中に少女の声が響いた。

瞬きをしたら何かが変わる。逆に瞬きをしなければ何も変わらない。彼女はそう言っている。

毎日がテンプレの変わらない日々と、未知。その二つを天秤にかけた選択権を与えられていた。


 選ぼう。そもそも、今の生活に大きな悔いはない。

僕は目をゆっくり閉じた。