異形のサーカス

ルーフス@低浮上を極める
@Seto_Kurona

異形ノ双子ト八ツ足ノ紳士

体にぶつかる強い風に首を傾げて、きつく閉じた目を開ける。

目の前は真っ黒で、それでも背中に感じる腕の感触で、自分が抱きしめられていることは理解した。

腕と真っ黒な胸板との間から顔をねじって視界を確保すると、すぐに見えたのは、眼下に今までいた街の家の屋根、そして自分たちより少し上を見上げるようにして笑顔の、姉の顔だった。

「オネーチャン…?」

それにつられて、弟も上を見上げた。

「エッ?」

そこに見えたのは、綺麗な飴色の瞳をした男の顔だった。

双子の視線に気がつくと、彼はこちらを見つめ返して、一瞬だけフッと笑みをこぼした。

視線が外れてハッとした弟は、やっと状況を理解した。

自分たちは今、男に抱えられて空を跳んでいた。

この彼が、自分たちをニンゲンから救ってくれたのだ。

男は着地地点を探しているようで、しばらく遠くをキョロキョロと見ながら家の屋根を蹴って、何回か飛び上がっては落ちてを繰り返した。

それから「あった」なんて呟く声が聞こえて、やっと風が止んだ。

足が地に着くと同時に、背中に回されていた腕と真っ黒な胸板が離れていく。

そして初めて彼の全身を見た双子は息を呑んだ。

その男には、肩から生えている2本の腕と、股から生えた脚が“6本”あったのだ。

「「ウワァ…」」

「初メテ見タ〜…」

「イッパイある…」

双子の視線の釘付けにされて、少し戸惑ったように彼が笑う。

「吃驚させちゃったかナ…、ごめんn」

「「オトモダチだーッ!!」」

双子はその姿には心当たりがあったのだ。

母が言っていた、自分たちにしかできないオトモダチがいると。そのオトモダチは、アタマが1つ、ウデが2つ、アシが2つの普通のニンゲンたちではない、と。

「「ヤッタァーッ!オトモダチーッ!」」

「えっと…まァ、そう…、カナ?」

「ネーネー、ドコに住んデるノ〜?」

「ネーネー、お名前ハ〜?」

「スキなモノは〜?」

「何シテるノ〜?」

あっという間に興味津々になってしまった双子に質問責めにされて、彼はまた戸惑ったような笑みを見せる。さっきまでの恐怖はすっかり忘れてしまったようだった。

「えっとネ…」

「「ナニナニ〜?」」

「キミ達は、さっきのニンゲン知ってるカイ?」

が、彼の目的は双子の恐怖についてだったのだ。

双子の表情が一瞬にして凍りつく。

彼はもう一度言った。

「さっきキミ達を殺そうとしたニンゲンを、知ってるカイ?」

「……ウウン。知ラナイ」

答えたのは弟だった。目をそらした姉とは逆に、少しきつめの視線で彼を見上げて口を開いた。

「オニーサンも、ボク達を殺ソウとするノ?」

視線は真っ直ぐに彼を捉えて揺らぐことはない。

彼は真正面から見つめて返す。

「違う。私は絶対ニそんな事しないヨ。」

弟は2回ほど瞬きをした。

それから、綻んだように先ほどの笑顔を見せると、「ジャア大丈夫ダネ!」とだけ言った。

それを聞いた彼は、もうニンゲンのことは諦めたのか、双子に他愛もない話を持ちかけ始めた。

俯いていた姉もいつのまにか元気になって、楽しそうに話し始めている。

それから3人は日が暮れるまで、好きな食べ物や花の話、怖い動物や楽しい音楽と、くだらない事を喋り続けていた。

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