異形のサーカス

ルーフス@低浮上を極める
@Seto_Kurona

異形ノ双子トニンゲンノ街

あれから、姉はなんとか、赤い実の生る木を見つけた。果実の重みで手の届くところまでしなっていた枝を一本、手繰り寄せて実をもぎ取る。

錘のなくなった枝が勢いよく上へ跳ね上がっていったのを慌てて避けると、姉の手には美味しそうな真っ赤に熟れた果実が1つ、握られていた。

軽く手のひらでこすって綺麗にし、大口を開けてかぶりつくと、水しか飲んでいなかった口に、確かな感触を感じた。

シャリ、と鳴って姉の口の中に転げ落ちてきた果実のかけらを、よく噛んで飲み込む。

「ン〜ッ!」

「食べる」というのはこういう事なんだと、改めて思った姉は、久方ぶりにその頬を思いっきり緩めた。

「ホラ××、オイシイヨ〜ッ?」

そう言って隣の弟に呼びかけると、もう一口実をかじってよく噛み、項垂れていた弟の頭を自分の方へ寄せると、口移しで食べさせてやった。

幸い、まだ飲み込む力だけはあったようで、姉が顔を離すとしばらくして、口から唾液を漏らしながらも、弟の喉が実を飲み込んで動いたのを確認する。

「ネ、オイシイでショ?」

もう一口、もう一口と、自分と弟と交互に食べていって、それが20回ほど続いたところで、実は無くなった。

それから、少し疲れてしまった姉はその木の幹に体を預けてしゃがみ込んだ。

「ハァ〜…」

久しぶりについた溜息は、目の前に広がっただだっ広い青い空に吸い込まれていったようだった。

周りが静かだから、そう思ったのかもしれない。

さっきまでニンゲンに見つからないようにするのが大変なくらいには人目があったが、いつの間にこんなところまで来ていたのだろうか…。

目線を落として遠くを見ると、少し下に下ったところに、先ほどまでの街が見えた。家々の隙間から見える大通りには、今も絶えずにニンゲンが行き交っていた。

同じニンゲンのはずなのに、こそこそ見つからぬように隠れて生きてきた自分たち。なぜか理由は分からなかったが、あの惨劇を目の当たりにした今では痛いほどに理解した。

母が自分たちに言いつけたあの言葉の意味が、やっと分かった気がした。

ー『アタマが1つ、ウデもアシも2つの“普通”のニンゲンたちには会っちゃダメよ?』

『ドーシテー?』

『私タチにはネ、私タチにしか出来ないオトモダチがたーくさんいるノ。だから、“普通”のニンゲンとオトモダチになっちゃったラ、私タチのオトモダチが私タチとオトモダチになれなくなっチャうでショウ?』ー

つまりは、“普通”のニンゲンは自分たちのような「アタマが2つ、ウデが2つ、アシが4つ」のニンゲンを受け入れてくれないから、自分たちのような者どうしで友達になりなさい。ということだったのだろう。


著作者の他の作品

「“不良”じゃねぇよ、“普良”だよッ!」友に感化されて久々に戻ってきたジャン...

またまた新しい創作です。悪なのに、美しい。正義なのに、捻くれてる。そんな...