異形のサーカス

ルーフス@低浮上を極める
@Seto_Kurona

異形ノ双子ト父ノ声

それからしばらく経った、ある日のことー。

「ジャア、行ってクルわネ?」

「イイ子にシテるんダゾ?」

母が、父が、双子の頭を撫でて言った。

「ウン!いってらっしゃい、オカーサン!」

「いってらっしゃい、オトーサン…」

「スグ帰るカラネ!」

「お土産もイッパイ持っテくるかラナー!」

そう言って、あの闇の中へと消えていく両親を、双子は笑顔で見送った。


「ウーン、つまんナイネー?」

「…ソウカナ…?」

「つまんナーイ!お外デ遊びタイ〜」

「ダメだヨ、オトーサンと一緒にアソボって、ヤクソクでショ?」

「ダッテ、ぜーんぜん帰っテこナイもん!

ネ!チョットだけだから…」

「ダメッ!」

「…、何デ?」

「ボクはオウチにいたいモン…」

言われた片割れが、それきり黙りこくる。

ー『オネーチャンだから、我慢出来ルわよネ?』

『ウン!ワタシ、オネーチャン頑張るネッ!』

思い出していたのは、先の母の言葉だった。

2人で大事に使う体は、今は弟の好きなように。

それが、母との約束だった。

静まり返った部屋の中、ただ時間だけが過ぎていこうとしていた。

『ガチャン』

「ひっ!?」

奥の部屋から聞こえてきた物音に、弟が肩を揺らした。この間、外に恐ろしい影が見えたと言っていた部屋である。

この歳の子供のことだから、窓に映った木の影が揺れたのを化け物に見間違えたのだ。

けれど、そんなこと彼らにわかるはずもなかった。

「××、ダイジョーブ?」

「ウゥ…、こわイヨゥ…」

自分の方に擦り寄ってきた弟の頭をそっと抱き寄せて少し考えると、姉は無理矢理立ち上がって言った。

「ヤッパリ、お散歩行コウッ?」

戸惑う弟を半ば引きずるようにして扉の前まで来ると、元気よくそれを押し開けた。

「ウワァーッ!ホラ、カワイイがイッパーイッ!」

「ワァ…、キレイ……。」

「ネーネー、リンゴがあるヨー!」

「ブドウ…、イッパイ…!」

「アッ、オレンジだーッ!」

「イチゴもあるヨ?」

年頃の双子の興味は尽きることがない。

目に飛び込んできたワンダーランドに、一瞬にして心を奪われたようだった。

「キノコが生えテル…。」

「キノコ〜?ホントだ!カワイイーッ!」

「ハイ、お花…。オネーチャンに…。」

「キャーッ!アリガトー!!」

自分の見つけた物を教えると跳ねて喜ぶ姉を見てからは、弟も笑顔を取り戻し、ついには家の周り中の摩訶不思議を全て見つけ尽くしてしまった。

「ネェネェ、もうチョットアッチに行ってみようヨー!」

「エー、ボクもう疲れチャッタ…」

「ン〜、あとチョットだけダカラ…。ネッ?」

眠そうにアクビをした弟の顔を覗き込んで姉は言う。少し機嫌を悪くした弟が姉の顔から目を背けて、家をぐるりと取り囲んだ茂みの奥を見据えた時。

『…ッ!…ォ…!』

その微かな音に、弟が気づいた。

「ナンダロウ…」

「エ?」

姉の問いには答えず、音のした方へ指だけさして答える。

揃えて耳をそちらへ向けると、確かに誰かの喋り声が聞こえた。

「ン〜?…オトーサン?」

何人かの男たちの声だった。姉はその中に、聞き覚えのある声を見つけていた。

「でも、イッパイイル…」

「オトモダチかなァ〜?」

『ニ……ォッ、…ゲ…ッ!』

だんだんとハッキリしてきたその声を聞いていた弟は気づく。

「…、チガウ…。オトモダチ、チガウ…」

「エ?ドーシテ?」

「だって、オトーサン…ケガ、して……」

声とともに露わになったその主の姿は、頬を切り裂かれ、腕を切り取られ、足を突き刺された父だった。

著作者の他の作品

俺の世界には、いつだって音楽が鳴り響いて止まなかった。楽しい時も、悲しい...

他サイト『診断メーカー』の診断内の世界観共有のためのものです。ご不明な点...