ひかり射す庭にて。

夢見る宇宙

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ギスギスした空気は、嫌だった。


それはもう、誰が見ても明らかなほどに、海斗が湊を嫌っていたからで。海斗は「俺はお前を絶対に認めねえからな!弓引きとしても、この弓道部の部員としてもだ!」なんて高らかに宣言までしてしまった。七緒が仲裁してくれたけれど、海斗はあのまま放っておけば、湊のことを殴りそうな雰囲気だった。


「五人揃ったと思ったのにね」

「なまえ、うるせえ。俺は団体戦は出ないからな」


拗れている。湊がこの前までの意見をコロリと、手のひらをくるりと変えてしまったからなのだそうだけれど。それにしたって、やっと団体戦に出られると思っていたのに。


「個人戦もいいけど、団体戦のあの流れるような動きも、見るの好きなんだけどなあ、僕」

「…チッ」


湊が意見をコロコロ変えたこと、自分が怖いからと次々に辞めていった部員たち。海斗のイライラは、そろそろてっぺんに届きそうだった。

そんなとき。


『仲直り作戦?』

『そう、俺と遼平で考えたの!』

『遼平って、山之内くん?』

『遼平です!』


ある日の夜。

メッセージウインドウが、なまえのメッセージアプリの画面にぽん、と出てくる。いつの間に仲良くなったのだろうか。よろしく、と軽く挨拶をして、七緒と遼平の作戦を、なまえは見守っていた(遼平と七緒のグループになぜ自分が入れられているのかは、なまえには解らなかった)


このところ、弓道場の鍵が朝に借りられている形跡があった。綺麗に掃除もされているし、神棚の榊もいつも綺麗な水になっていた。朝練はなかったはずだけれど、そうしたら誰がそんな風に綺麗にしてくれているのやら。


「…、十中八九、湊くんかな?」

「なまえもやっぱり、そう思うっしょ!」


メッセージではなく、二段ベッドの上にそう言うと、七緒の声が返ってきた。


「きっと一人で早朝の練習をしてるんだと思う。…早気対策の練習、とか」

「でしょでしょ!?それをかっちゃんに見てもらえれば、」

「スポ根好きな海斗は、」


「「絆される!」」


声がハモった。さすが双子。


「かっちゃんはもう少し素直になってくれないと、困るよねぇ」

「弓が好きな気持ちは、誰よりも真っ直ぐなのにねぇ」


それから、遼平と待ち合わせの時間を詰めて、双子は早起きのために明日の支度を始めたのだった。







「遼平!めっはー!」

「おはよう、山之内くん」

「おはよ!七緒!如月さん!」


七緒と遼平がいつの間に仲良くなったのだろう、となまえが眉をひそめていたら、


「如月さんさあ、俺の苗字、言いにくいだろ?名前で呼んでいいからさ、遼平って」

「え、…?」


今度はなまえへの距離も詰めてきた。遼平はなまえのクラスメイトでもあるから、一緒にいる時間はそれなりにあると言えばあるのだが、クラスの誰とでも仲良くなっている遼平は、孤立しがちななまえにとっては眩しかった。


「てかさ、てかさ!如月さん、湊のことは湊くん、って名前で呼んでるじゃん!?」

「あれは、…山之内くんがいつも、湊が、静弥が、って言ってるから…」

「その割には、部長のことは苗字呼びっしょ?」

「…湊くんは前に1度会ったことあるし…、竹早くんはなんか、名前で呼びづらい雰囲気がある…」

「…、わかる」

「わかるの!?さすが双子!!!」


結局なまえは遼平に押し負けた。なまえは既視感を覚えながら、弓道場に向かう。道すがら、今回の作戦をおさらいしながら(七緒のイラストは個性的だと、なまえは思っている)歩いていると、目の前を静弥が横切った。


彼も弓道場の早朝掃除が気になっていたのかと思えば、妹尾たち女子部員3人も揃って来ていた。気になるのは皆同じだったようだ。

海斗も合流して、全員で弓道場に向かう。湊がここに居なかったことが、早朝掃除の犯人を雄弁に語っていた。


こそりと近づき、静弥と湊の会話に耳をすませる。静弥の言葉が、ここにいる湊以外の部員誰もが言いたかったことだった。早朝掃除のこと、あんなに拒んでいた入部を翻した理由。早気が治っていない湊がまた、弓を手にした理由。


(それは、あまりにも、…)


素敵な出会いだったのだ。眠っていた子供の頃の気持ちを、強く揺さぶり起こされたのだ。

聞いてみたい。その、湊の気持ちを揺り動かした弦音。


「かっちゃん、…」


海斗がそろりと弓道場から離れる。七緒と遼平が、海斗を追いかけた。


「…如月さん、追いかけなくていいの?」


七緒たちの背中を見送るなまえに、花沢がこそりと声をかける。


「あのふたりに任せておけば大丈夫だと思う」

「如月さんがそう言うのなら、大丈夫なのでしょうね」


白菊がそう言うと、なまえは嬉しそうに頷いた。


「きっと大丈夫。今日の放課後が楽しみだな…」

「さて、じゃあ、私たちも行こうか」


妹尾が歩き出した先へ、女子部員がついていく。おはようございます。朝の挨拶が、弓道場に響いた。