red rose

菜亜弥
@tunatuna_m

屋敷の少女と子供たち1

この小説は夢小説 (名前変換ができる小説) です。
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こんな世界は生きにくい。

みんな、遠くに行ってしまう。

寂しいけど、それは仕方の無いこと。

だったら、私はただ我慢してここで待ってる。

だから、必ず無事で帰ってきてね。

それだけで十分だから。







「マリーただいま。」

部屋の外から父の声がした。数週間ぶりの帰宅だったが、マリーは自分のベッドから動こうとしない。

「…………。」

「………。俺は書斎にいるから、気が向いたらいつでもおいで。」

そう言うと、ドアの向こうから足音が遠ざかって行った。マリーは、自分の膝を抱えるように腕に力を込めた。


その日、仕事でしょっちゅう家を空ける父が7人の男の子を連れて帰ってきた。

歳は私よりも5歳年上のお兄さんたちだった。みんな、孤児院っていう所から来た。私は近い年代の子と遊ぶ機会が少なかったから、どうやって彼らと接したらいいのか分からず、結局一度も部屋から出ることなくその日を終えた。


彼らはジークのお手伝いとしてこの家に来たようだった。引きこもりがちだったマリーは、一日のほとんどの時間を自分の部屋か、書庫で過ごしていた。今日も、読み終えた本を持って書庫へと向かった。もとあった所へしまうと、新しい本を手に取る。そして、日差しの直接当たらないところで開いて読み耽る。静かな屋敷の中で、マリーが本のページをめくる音だけが心地よく耳に届いた。すると、急に目の前に影がさしてマリーは顔を上げた。そこには、掃除用具を手に持った少年が立っていた。

「っ…………!?」

マリーはビクリと肩を震わせて少年の方を見る。だが、少年は何を言うでもなくすぐ近くにあった本に手を伸ばすと、マリーの隣に腰掛けて本を開いた。

「………………?」

「…………ここ、いい場所だな。」

「………うん。」

それきり、少年が話しかけてくることは無かった。1時間ほどたった所で、少年はおもむろに本を閉じて立ち上がる。

「そろそろ他のところを掃除しないとバレちまいそうだ。じゃなあ。またここの掃除をする時に来るよ。」

「うん………。」

「お前、いつもここに一人でいるのか?」

「うん…。」

「そうか。名前は?」

「……マリー」

「俺はローだ。」

「ロー…?」

「あぁ。」

そう言うと、ローは書庫を出ていった。


翌日。今日もマリーは書物庫に来ていた。いつもの場所に座って、読みかけの本を開く。彼らが来てから少しだけ、屋敷の中に音が増えたような感じがした。同じ屋根の下に、誰かがいることが分かることに、嫌な感じはしなかった。どちらかと言えばどこか心が暖かくなるような、安心感を得ることが出来ていた。

きぃ……っとドアが音を立てて開く。マリーははっと入口の方に顔を向けた。そこには、昨日とは違う男の子が立っていた。綺麗な金髪に、片目が覆われたその男の子はマリーに気がつくと、ニコッと笑って軽く頭を下げる。その仕草は、どこか大人びていて優雅さを感じた。

「ごきげんよう。可愛らしいレディ。失礼しても、いいですか?」

初めて会う男の子に、マリーは緊張しながらも小さく頷いた。

「どうもありがとう。それにしても、まさかこの屋敷に君のような麗しいレディがいるなんて知らなかった。失礼ですがお嬢さん、お名前を聞いてもいいですか?」

「……マリー」

「マリーちゃん、俺はサンジです。どうぞお見知り置きを。」

「うん……。」

「………。そう言えば、もうすぐおやつの時間ですね。良かったら、一緒にどうかな?」

「………えっ?」

「少し、待っててくださいね。」

そう言うと、サンジは書物庫を出ていった。そして、すぐに小さなお盆を手に持って帰ってきた。それを、マリーの前にあるテーブルに置くと、手際よくランチマットを広げてお茶を入れる。部屋にふんわりとただよう甘い紅茶の香りに、マリーはつられるようにテーブルに向かった。

「今日のおやつは、クッキーだそうですよ。」

そう言って、サンジはマリーの前にクッキーの乗った皿を出した。いつもジークが部屋に持ってきてくれるのだが、マリーは部屋にこもるようになってからほとんど手をつけることなく返していた。今日も、やはり食べようという気は起きず、どうしたらいいか困ってしまう。すると、サンジはマリーの正面の席に座ると、クッキーを1つ手に取り口に運んだ。

「うん。おいしい。クッキーなんて、久しぶりに食べたなぁ。こんな美味しいものが毎日食べられるなんて、マリーちゃんは幸せ者だね。」

美味しそうにクッキーを頬張るサンジを見て、マリーは急に自分も食べたくなってきた。

「わ、私も一緒に、食べていい?」

「もちろん。こっちにおいで。」

手招きをするサンジに、マリーは勧められた席に座ると1つクッキーを手に取った。どこか緊張しながら口に運ぶと、程よい甘さが口の中に広がった。

「おいしい……。」

「でしょ?」

マリーの言葉に、サンジは自分のことのように嬉しそうに笑った。

「どんなにおいしいご飯でも、一人で食べると味気なく感じるからね。誰かと食べるのってそれだけですごく楽しいことだと思うんだ。だから、マリーちゃんも一緒にご飯食べようよ。」


書物庫の掃除を終えたサンジが出て行ってから、マリーはさっき言われたことを考えていた。たしかに、誰かと食べるのはすごく楽しかった。だけど、ほとんど顔を合わせることの無くなった父に自分から顔を合わせることにすごく抵抗を覚えるのだった。


そして夕食時。自室に戻っていたマリーのもとにジークがやってきた。

「マリーお嬢様、お食事の時間ですよ。」

部屋の外から呼びかけられ、いつもならお盆が入るくらいの隙間を開けて中に入れてもらうのだが、マリーは勇気を振り絞ってドアを大きく開いた。

「マリー様?」

驚いているジークに、マリーはボソボソと口を開く。

「わ、私も、みんなと一緒に……食べる。」

「………。そうですか。それでは、広間に向かいましょう。皆さんお揃いですよ。」

ニコッと微笑むジークに、マリーは少しだけ恥ずかしそうに俯きながら、広間へと向かうのだった。


ジークが広間の扉を開くと、たくさんの目が自分の方へ向けられるのが分かり、マリーは視線を落とした。

「マリー!」

がたっと椅子の音を立てて父が立ち上がる。だが、どうしても前へ足が進まずその場に立ちすくんでいると、すっとサンジが立ち上がりマリーの方へとやってきた。そして、スマートに手を差し出すと、ニコリと微笑む。

「お手をどうぞ、お嬢さん。」

正面にサンジが立ったことで、周りの視線が気にならなくなり、マリーは少しだけ気が楽になるのを感じた。そして、手をサンジの手に重ねると、そのままマリーの席へと案内される。その様子を、驚きの表情で見ていたシャンクスも、ふっと力を抜いてまた座り直した。

「それじゃあ、みんな揃ったことだし、夕食にしよう。」