red rose

菜亜弥
@tunatuna_m

貧しい国の子供たち

この小説は夢小説 (名前変換ができる小説) です。
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とある貧しい国があった。

そこは、ずる賢い大人の闊歩する汚い国で、力のないものが生きるにはあまりにも息苦しい所だった。だが、それを知って、自分のことしか考えない大人は知恵を絞る。弱い人間を自分の手中にたくさん置くことで、自分の手を汚すことなく金を手に入れられると。彼らは自らの権力を行使して、多くの働き盛りの若い男性達を買収し自分のためだけに働くようにさせた。働き手のいなくなった小さな町は、老人や女子供達だけで切り盛りしなくてはいけなくなってしまった。そうしているうちに、家計が厳しくなり子供を養うことが出来ない家が増えてきた。特に、まだ手のかかる乳幼児を施設に預けるという苦渋の決断をくだす若い母親は少なくなかった。こうして、施設に小さな子供たちが増えることで、今度は施設の経営が火の車となってしまった。その日の食事を摂るのもやっとな状況で、職員たちは子供たちに積極的に教育を施し、できるだけ早く簡単な仕事ならできるようにすることを始めた。何でも屋として人出の足りない農家や工場の手伝いに毎日子供たちを数名ずつ送り出して、その日の食費をみんなで稼ぐのだった。


ここ、オーラヴェル院でも7名の少年を本日の仕事先へ送り出していた。

「いいですか、今日からみなさんはここで1週間働かせてもらうのです。皆さんを雇ってくださるとても親切な方なのですから、くれぐれも失礼の無いようにお願いしますね。」

「「はい」」

子供たちは口を揃えて返事をすると、心配そうに見送る先生に背を向けて、目の前の大きな屋敷へ足を進めた。7名の中から、トンっと誰かに背中を押されたサボが、1人、1歩前に出た。ジロっと後ろを見たサボだったが、諦めたように扉をノックする。重そうな扉が音を立てて開いた。出てきたのは、シワのないタキシードをスマートに着こなした初老の男性だった。鋭い視線が、子供たちを見た途端にふっと緩んだ。

「あぁ、君たちが今日から私のお手伝いをしてくれる方達ですね。さぁどうぞ、君たちの部屋を用意しているので、荷物はそこに置いてきて下さいね。」

男性の言葉に、緊張した面持ちだった子供たちの肩から少しだけ力が抜けた。

「さて、それでは早速お仕事を始めましょう。旦那様はまだお仕事からお戻りになっていないので、帰ってきてから挨拶をしましょうね。そうだ、私はジークと申します。この屋敷の執事でございます。」

そうして、子供たちは一人一人仕事を与えられ、それぞれの作業を始めるのだった。

数時間がたったころ。屋敷の1階を掃除していたサボは、自分のすぐ横に誰かの影が伸びていることに気付いて顔を上げた。そこには、大きな荷物を隠すように全身をマントで覆った男がいた。マントや、マントから少し見える肌は薄汚れており、サボは勢いよく立ち上がった。

「お前、何者だ!この屋敷のものを盗むつもりか!」

サボの剣幕に、男は少しだけ肩を震わせると、頭をすっぽりと覆っていたフードを外した。

「はっはっはっはっ。威勢のいいガキだなぁ。」

「お前!ご主人様の留守中にそんなことさせないぞ!」

サボの大声を聞きつけて、ジークがやってきた。

「ジークさん!怪しいやつが屋敷の中に!」

サボの言葉を聞いて、ジークは顔を男の方に向ける。そして、ふっと表情を緩めた。

「旦那様、お帰りなさいませ。お勤めご苦労様です。」

「おう、ジーク。留守中は何も無かったか?」

二人の会話を聞いて、サボはきょろきょろと交互に2人の顔を見る。

「サボ、こちらがこの屋敷のご主人様、シャンクス様です。」

ジークの言葉を聞いた途端、サボは一気に表情を青くして勢いよく頭を下げた。

「大変申し訳ありませんでした!とんだ勘違いを…。」

怒られることを覚悟してぎゅっと目をつぶったサボは、ポンと自分の頭に乗せられた手の感覚に顔を上げた。

「威勢だけじゃなくて、ちゃんと礼儀も知ってるんだな。自分の非を認めることは簡単にできる事じゃない。院長さんの教えをきちんと聞いているんだな。」

何が起こったのか理解が出来ないでいるサボを見てシャンクスはまた笑うと、ジークの方に顔を向けた。

「もうすぐお昼だ。ほかの子達も呼んできて一緒にご飯にしよう。」

「かしこまりました。」


「マリーはまた部屋から出てこないのか?」

「はい…。」

「そうか、それならしょうがない。みんな、腹いっぱいになるまで食べるんだぞ。午後からも働いてもらうからな。」

シャンクスの言葉に、広間に集められた子供たちは目の前に広げられた食事を見て目を輝かせた。お金のない施設では、満腹までご飯を食べられることがほとんどない。それに、奉公先でも奴隷のように扱われて三食の食事を貰えないこともあった。こんな待遇は初めてだったのだ。

子供たちは一気にご飯を口に運ぶ。その様子を、シャンクスは満足げに見ているのだった。

「この国には、これからを担う若者の力が必要なんだ。だから、君たちには曲がらず立派な人間になって欲しい。」

「……でも、それをほとんどの大人は許してくれない。自分たちさえ良ければそれでいいんだ。」

「おい、ロー!旦那様にそんな口の利き方」

「構わないよ、サボ。確かに彼の言う通りなんだ。この国のやり方が間違っていると思っている人も確かにいる。だが、表立って動きを起こしてしまうと、すぐに大きな力によって潰されてしまうんだ。だから、私達は徐々に力を集めているところなんだよ。」

「俺たちに、出来ることはないんですか…?このまま俺たちが大人になっても、まともな教育を受けていないんじゃ、きっと使い物にならない。そんな子供はこの国にたくさんいます。」

サボの言葉に、シャンクスの表情も曇る。

「それは私も懸念しているところだ…。だが、こればかりは私個人の力ではどうすることも出来ない。」

「だったら…あんたが俺たちに教えてくれればいいじゃないか。この国がおかしいのは子供でも分かる。でも、どうすることが正しいことなのかは分からない。旦那様、あんたは正しいと思うことをしているんだろ?だったらそれを教えてくれよ。」

食ってかかったような言い方をするローに、サボは勢いよく立ち上がって口を塞ごうとする。だが、ローはその手を払って、なおシャンクスを見つめる。

「誰かを教育する…か。考えたこともなかった。だが、確かに自分たちの味方をつけるには確実な方法だと言えるな。時間はかかるだろうが。ふむ……少しだけ考えてみることにしよう。」

そう言うと、シャンクスは立ち上がり、部屋を出て行った。そして、部屋には子供たちとジークだけになった。サボはローを睨みつける。

「おいっ!さっきの態度はなんだよ。旦那様がいい人だから大事にならなかったけど、下手したら仕事させてもらえなくなる所だったんだぞ!」

「ふん。俺は、相手を見て言葉を選んでいる。あの人は、俺達の言葉に耳を傾けてくれると思ったから言ったんだ。」

「はいはい。二人ともその辺にしなさい。旦那様は視野の広いお方です。きっとローの言葉も受け止めてくださっています。それでは、これからは皆さんの本分を全うしてもらいますよ。」

そうして、子供たちは再び仕事を再開するのだった。