アーテラ神話

奥部一咲
@K_Issa_Okube

5.人間の誕生

 創造神によって名付けられた獣達は世界の隅から隅まで、様々な場所で豊かな自然から恵みを貰いながら数を増やしていきました。獣達は初めは彼らを豊かにしてくれる自然に感謝し、自然と共に生きていくことができました。しかし、彼らの感謝の気持ちは次第に薄れていき、遂には数を増やしたいという欲にのまれ、自然を喰らうようになってしまいました。

 欲にのまれた獣達は進む先に自然の恵みがあれば全てを喰らい、彼らが通った後は草木も残らない大地となり、豊かな緑で溢れていた地球アーテラは生命樹の周りを残して全てが荒れ果ててしまいました。

 これを見た大地神グリアは神々だけでは増え過ぎた獣達から生命樹を護ることができないと気付くと大きな危機感を抱き、まだ成熟していない小さな生命樹の実を急いで四つ取ると、生命樹を護り、獣達を従わすことのできる生き物を創り、増やせと火神フレイ、水神サリャータ、土神ノフィ、風神リムオンの四柱の神に命じました。

 フレイはグリアから実を貰うとそれに炎を吹きかけ、握り潰しました。すると零れ落ちた実の中から燃え盛る炎のように大きく強靭な身体を持つ一対の生き物、ビクマが生まれました。フレイはビクマ達に火を操る力を授けると、その力で生命樹を喰らおうとする獣達を払い除けよと命じました。ビクマ達はフレイの命に従い、火を自由自在に操って迫り来る獣達を追い払うと、獣達は少しずつ生命樹から遠のいていきました。

 ノフィは生命樹の下を掘って生命に満ち溢れた土を手に入れると、グリアから貰った実をその土の中に入れ、自身とよく似た形の土塊を作り乾かしました。土塊が乾くと表面が崩れ落ち、中からノフィと姿形が似ている一対の生き物、ヒュムが、生まれました。ノフィはヒュム達に豊かな土を作る知恵を授けると、その力で大地を蘇らせよと命じました。ヒュム達はノフィの命に従い、獣達が退いた後の荒れた土地に向かうと荒れた土を掘り返して整え直し、わずかに残っていた種を埋めました。すると種はみるみる大きくなって草木となり、世界に少しずつ緑が戻ってきました。

 水神サリャータは生命樹の近くにある泉に赴くと、グリアから貰った実を泉の中へ投げ入れ、渦を巻くように混ぜていきました。混ぜられた実はサリャータの力によって小さな身体を形作り、中の種は透き通った水晶へと変わっていき、サリャータが混ぜるのを止めた頃には水晶のような綺麗な石を持つ小さな生き物、プティクが生まれていました。サリャータはプティク達に水を操り、生き物を癒す力を授けると、その力で傷ついた者、荒ぶる者に癒しを与えよと命じました。プティク達はサリャータの命に従い、怪我をした者や荒ぶる者の前に立ち、彼らを水で優しく包み込んで癒しの力を使うと、怪我はたちまち治り、荒れた心は穏やかになりました。

 風神リムオンは獣達の中から欲に負けず、自然の恩恵を感謝する心を忘れなかったわずかな獣をいくつか見つけ出すと彼らの前に現れ、グリアから貰った実の欠片を差し出してこれを食べよと言いました。彼らはリムオンの恵みに感謝し、その実の欠片を食べると彼らの身体はみるみる変わっていき、獣の耳と尾を持ちながら、二つ足で歩く生き物、ヴィーマへと生まれ変わりました。リムオンはヴィーマ達に風を読む力を授け、迷える獣達を導けと命じると、彼らはその命に従い、行き場を失った獣達に手を差し伸べ、風の赴くままに緑が蘇った土地へと連れていき、自然と共に生きる術を教えました。そして二度と同じ過ちを繰り返さないように獣達を従わせました。

 こうして生命樹は四柱の神と彼らによって生まれた四つの生き物達の働きにより獣達の脅威から護られました。グリアは四柱の神を讃え、神と共に生命樹を護った四つの生き物に人間という呼び名を授けました。

著作者の他の作品

石田咲(オリジナルキャラクター)のショートストーリー。(1394文字)

第二回創作企画作品[お題:熱血少年漫画風、擬人化、鎧(西洋東洋、時代、世界...