黒と白

ルーフス@低浮上を極める
@Seto_Kurona

2人で歌うこと・その6

あれから大慌てで6人分の飯を作った。なんとかアイツのライブが終わるまでに間に合わせて、裏に持っていく。

午後のライブがあるバンのメンバーも裏で待っているらしいから、めんどくさいのでとりあえず全員分のを裏へ持っていくと、午前中の仕事を終わらせた親父も、肩を回しながら戻ってきた。

「いやぁ、一休みっと…!」

でっかく息を漏らしながらイスに座り込む親父を見て、バンのメンバー・岩俊(イワトシ)さんが申し訳なさそうに口を開いた。

「ごめんな、親父さん。ワガママ言っちゃって…」

「別に気にすんな!俺の気まぐれってなぁ!」

「そうっすよ。っていうか、むしろ俺が寝坊したせいだし…。」

「にしても、りょーちゃんが寝坊なんて珍しいよね?いっつもあたし達のライブだけは絶対見に来るのに。ん、うまっ♪」

早速俺の作ったチャーハンに食いつき始めたのは、カイトさんの妹で、同じくバンのメンバーの早月(サツキ)さん。

「しょうがないだろ、りょうも色々と忙しいんだよ。あと、まだイケメン君来てないだろ。先食べんなって…。」

そしてそれをなだめるのが、サツキさんの兄。ロックバンド「No Ban」のリーダー、快斗(カイト)さん。俺が音楽を始めるきっかけにもなった憧れの人だ。男前で優しくて、いつでもカッコいい。

「あぁ、そうだよイケメン君!」

と、兄の言葉に反応したサツキさん。

「どーしたの?あの子、りょーが連れてきたんだって?」

「あぁ、まぁ…、はい。」

「詳しいことは知んないけど、結構良いと思うよあの子!あたしのタイプとはちょっと違うけど。」

「それはカンケー無いだろ…」

イワトシさんが突っ込んで、カイトさんは苦笑い。これが、いつもの「No Ban」だ。

でも、ひとたびステージに立てば神級にカッコよくなる。マジで。

それに、ステージであんなにカッコいいのに本当はほんわかしてるグループだっていうのも俺の推しポイントだ。そういうの好きなんだよな〜。

「でもまぁ、」

カイトさんが口を開いた。

「俺も良いとは思うよ。あれが初めてのライブだとしたら、声も硬く無いし歌の伸びも良い。あれで緊張してるならもっと伸びしろは期待できるし、結構良い歌歌うよな?アイツ。」

「やっぱお兄もそう思うっ?」

座っていたイスから身を乗り出す勢いでサツキさんが返事して、そのまま倒れそうになったのを近くにいたイワトシさんが食い止めた。

そっからまた言い合い始めたその2人をまたまた苦笑いで見ているカイトさん。

やっぱ良いなぁ、ノーバン…!

俺もこんなグループ作れたら楽しいんだろうな〜。

なんて思いながら思いっきり背中をそって伸びをした俺の指先に、何かが触って目を開ける。

「お、お疲れさま…」

「うわぁっ!?」

今度は、俺がイスから転げ落ちる番だった。

「痛ってェ…」

やべェ、思いっきりケツからいったぞこれ…。

「ごめん…、またビックリさせちゃった…?」

「いいよもう…、お前はこういう奴だって分かったから俺。許してやる…。」

「うん、ごめんね…?」

「ってか、いつからいたんだよお前」

「えっと〜、さっき終わってここにきたら、ちょうどキミが見えたから…」

「俺に寄ってきたのかよっ」

「えっ、ダメだった?」

「ダメもなにも…、ライブ終わったら真っ先に自分の楽屋戻んのが普通だろ…?」

「そうなの?」

コイツマジで初心者すぎんだろ…。

っていうか、相変わらず涼しい顔してんなー。

本当に緊張とか、してなかったのかな…。

「なぁ、大丈夫だったかよ」

「ん、何が?」

「緊張したとか、その、ブーイング…とか。」

ちょっと申し訳なくて、尻窄まりになりながら訊いた。


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