黒と白

ルーフス@低浮上を極める
@Seto_Kurona

2人で歌うこと

俺はてっきり、こいつもバンドがしたいんだと思い込んで、快く了承してしまったけど…。とりあえずハウスに連れ込んでから後で話を詳しく聞いてみると、どうもそうじゃなかったらしい…。

「だから、僕は別に歌を作れればそれで…」

「歌作るんだったら別に歌ったっていいじゃんか!」

「で、でも…。その…」

「なに?」

「キミと一緒に歌うのは……、ちょっと…。」

そう言われて、俺の何かがプチンときた。

「っ!何だよそれ。じゃあ何で俺に声かけてきたんだし!悪かったよヘタクソが歌っててッ!!」

思いっきり椅子から立ち上がって叫んだから、音に気づいて親父も顔を出してきた。人を連れて帰ってきたのは言ってあったから、心配してくれたんだろうけど。

「おい、どうした?」

それにハッとして、つい俺は何かが背中にぶつかったようにハウスから飛び出してしまった。


もうすっかり暗くなってしまった郊外の町は、人通りも少なくて、込み上げてきた涙を隠すのにも好都合だった。

面と向かって人にあんなこと言われたのは初めてだった。別に、俺が好きで勝手に歌ってるだけなんだけど。それでも、俺の歌を聴いて笑ってくれる人がいることを知ってしまってから、俺の中で“音楽”っていう存在は大きくなりすぎてしまったのかもしれない。

ただ、好きなものを否定されるのなら俺は別にどうとも思わなかったのだ。昔から、そういう感性が人よりちょっとずれてるっていうか、好みがちょっと変っていうのは自分でも分かってたから、他人は他人、自分は自分って割り切れてた。

そんな俺が、初めて他人の「好き」と俺の「好き」が一致したのをひしひしと感じたのが、歌うことだった。

自分の「好き」が、こんなにも人に伝わるんだって思った。

だから、なのかもしれない。

「やば、涙止まんないんだけど…っ」

昔っからすすり泣くのが癖で、人から隠れて泣いていた俺が、久々に声を我慢できなくなっていた。



「それで?兄ちゃん、一体アイツと何があったんだい。」

僕は今、恨みを買ったであろう男の子のボスに取り調べを受けていました。

「いや、僕はただ…、あの子に歌を歌ってもらえれば良かったんですけど…。なんか、僕悪いこと言いましたかね…?」

本当に分からないんだ…、僕ってほんと鈍感…。

いつも人と意見が食い違ってしまう。

だから、今もこうして僕の歌を歌ってくれる人を探していた。多分、あの子で記念すべき5人目だ。

それにしても、あの子は細すぎるくらいにスタイル良かったのに、どうやったらこんな怖い人からあんな天使みたいなのができるんだ…?

「兄ちゃん?」

「あっはい、すいません。考え事、してて…」

「まぁ、そんなに思いつめてもらっても困るんだがよ。アイツ、なんで怒ったか分かるか?滅多にあんな感じにはならねぇヤツなんだがな…」

「えっと…、確か、一緒に歌ってくれって、言われたんですけど。僕は、ただ作った歌をあの子に歌ってもらえればそれで良くて…。別に歌とかは、歌いたいって思ってたわけじゃないんです。

それに…。そうだ、キミと歌うのは…。って言ったら、急に怒っちゃって…」

「あ゛?」

「ヒィッ…!」

「オメェ、アイツのこと嫌いなのか?なんでアイツに声掛けたんだ?」

あれ、あの子もおんなじこと言ってた…。

っていうか、

「き、嫌いなんてそんな!僕は、あれほど素敵な歌を歌う人は見たことなかったんです!

っだから、あの子に僕の歌を歌ってもらえたら、きっとすごいんだろうなって思って…」

そこまで言って、思わず興奮してしまっていた自分に気がついてちょっとだけ恥ずかしくなってしまった。口をつぐむと、とても気まずい沈黙…。

「ッハハハ!なんだァ、そういうことかよ!オメェ紛らわしいヤツだなぁ、ハハハッ!」

いきなりのことに、今度はこっちが固まる番だった。こ、これは口を開いてもいいんだろうか…?

「あ、あのぅ…」

「つまりオメェ、アイツと釣り会える気がしねぇからあんなこと言ったのか!」

「は、はぁ…。だって、僕なんかが一緒に歌ったら、足引っ張っちゃいそうで…。」

「そりゃぁオメェ、誰だって怒り出すぞ?まるで“お前って歌下手だなぁ”って言われたと思うだろうよ。」

「えぇっ⁉︎そんなことはっ!全然違いますよ!」

そうか。よくよく考えれば僕、あの子の言ったこと全部否定してばっかりだったなぁ。あの子は歌っても良いよって。歌いたいんだって言ってくれてたのに。僕、ワガママばっか言っちゃって…。

挙げ句の果てに「キミとは歌いたくない」なんて言われたら…。

「僕、謝ってきます!」

一刻も早くあの子に「ごめんなさい」を言いたくてドアから飛び出そうとした瞬間に、親父さんから呼び止められた。手招きされたので寄っていくと、とても優しい、まさにお父さんの顔で、親父さんは佇んでいた。

著作者の他の作品

他サイト『診断メーカー』の診断内の世界観共有のためのものです。ご不明な点...

「“不良”じゃねぇよ、“普良”だよッ!」友に感化されて久々に戻ってきたジャン...