黒と白

ルーフス@低浮上を極める
@Seto_Kurona

色づいたあの日

そんな俺がきいちゃんと初めて会った、っていうか見つけたのは、俺が相方を探し始めてから1ヶ月後の路上ライブの時だった。

あんまりあちこち回るのが面倒臭くて、いつも同じ場所でやってたからか、顔なじみのお客さんが結構聴きに来てくれるようになってからのこと。

常連さん以外にも、気になって立ち止まったり手を打ってくれたりする人はいたものの、それはたったの2、3人で、それ以外の人たちはやっぱり耳を傾けるくらいで、そのまま歩いて行ってしまった。

今日もあんま、手応えないなぁ…。

なんて思っていたその時。

ちょうど近くの信号が変わって、人が大勢目の前を通り過ぎて行った時。

その人の波に揉まれて、何度もよろめきながらも俺の方に向かってこようとするもやしみたいなやつがいたのだ。少しばかり息を切らして、やっと人混みから逃れたそいつは、背中に背負って斜めがけにした自分のギターの紐を両手でぎゅっと掴んで、まるで星でも眺めているみたいな輝いた目でこっちを見てきた。

それが、きいちゃんだったのだ。

あの目に見つめられた時、全身に鳥肌が立ったような感覚がした。今だって忘れられない。

足の先から髪の毛の一本も残さず先っちょまで、言いようもないなにかが駆け抜けて行った。

今ならそれが、紛れもなく俺が求めていた「手応え」だったんだってわかる。

今までにない反応に、俺の本能が叫んでいた。

「あいつを逃がすな!」って感じだった。

著作者の他の作品

友人と一緒に作った子達の小さい頃のオハナシ。ー双子はお父さん、お母さんと...

「“不良”じゃねぇよ、“普良”だよッ!」友に感化されて久々に戻ってきたジャン...