助けた人はトリプルフェイスだった

第3話 審神者業 復帰

それから数日後。


安室さんはあれから何も聞いてこない。

私が答えたのと同時に術式を解いて人を入れたからだ。彼には聞く隙を与えなかった。


まぁ、そんなことはさておき。

ここ数日、実は時空の歪みが出来ているのが感じ取れた。遡行軍の仕業か、或いは……とぼーっと考えていたら。


「迷った……」


ジーザス!!!迷子になりました。

ポアロで買い出しを頼まれて、よっしゃ任せろ安いやつお得に購入!!……と意気込んでいたものの帰り道、ボーッとしてたら迷った。すかさず梓ちゃんに連絡。現在地すら分かりません。梓ちゃんお手上げ。とにかく無事に帰ってきたら全てチャラと言われて今はあちこち歩いている。

確かに方向音痴ではあるけど、ここまでかよ!!と自身にツッコミたくなった。


「なんか……見たことある家……」


阿笠邸に工藤邸。

そこまで迷っていた。いや、これは本当になんの含みもないです、どうしよう。


(安室さんは今日お休みだし……はぁ。どーしよ。この辺うろちょろしてたら分かるかなー。)


3次元と繋がるグー○ルマップは意味をなさないし、今はこっちの世界のスマホ使ってはいるがやはり勝手が違うので使いにくいのだ。


そんな時である。

聞き覚えのある声が聞こえてきた。工藤邸から聞こえる。


「あれ?雪姫おねーさん?」

「……コナンくんだぁ。」


振り向いたら彼がいた。……なんか背後にめっちゃ見覚えのある人物いるけどガン無視。その場に座り込んでしまった。


「ど、どうしたの!?どこか怪我でも!?」

「違うよ。買い出しに出かけて迷子になって歩き疲れてたところに君が来て気が抜けた。」

「なんだ……良かった。」

「いや、良くないよ。迷子だからね。もう自分が情けないレベル……」

「おねーさん道に慣れてないんでしょ?仕方ないよ。ボク、丁度探偵事務所に帰るとこだから一緒に行こう?」

「いい子だね……そのまま真っ直ぐに育ってね……」

「おねーさん疲れてるだろ……」

「イエス。」


糖分欲しい……疲れた。


「あの……少し休んでいったらどうですか?」


……なんか置鮎ボイス聞こえる。

幻聴だ。うん、幻聴。

ノイズ混じってるもの。幻聴に決まってます。


「そうだよ。少し休んだ方がいいよ。」

「いや、申し訳ないよ……」

「ここで貴女を見過ごす方が悪いです。」


幻聴……じゃないですね、なんでだああああ!!


「すみません、どちら様でしょうか。」

「申し遅れました。沖矢昴と言います。訳あって工藤邸に住まわせてもらっている大学院生です。」


アカーーン!!!!

なんというフラグを私はたててしまったのだ!!

降谷さんのフラグをたてたあとは赤井秀一かよ!!!なんてこったあぁぁぁ!!


「はぁ……大変ですね……。加賀田です。」

「下のお名前は……」

「雪姫さんだよ。……おねーさん、休んだ方がいいよ。”過呼吸”になってきてる。」

「……マジか。きづかなかった。」


薬は持ち歩いているが、水を切らしている。まずい。直飲みは出来るけどなるべく避けたい。……やべ。酷くなってきた。沖矢さんは私の変化に気づいたらしく、何故か……



ひょいと私を抱き上げお姫様抱っこで移動させられた。

いや、なんで????歩くぐらいまだ出来ますよ???



「無理は禁物ですよ。」

「…………」


ツッコミたいがあいにく弱っている。

復活したらツッコミ絶対入れてやる。


ソファに寝かせられたあと、コナンくんがすかさず水を持ってきてくれた。

ありがとうと手で礼する仕草を見せかけたが、休めとやめさせられた。

大人しく受け取ってから強めの方の薬を口に含んで水で飲み込む。


マスクも準備してくれていた。

過呼吸になっている時には丁度いい。有難く受け取って付けてから目を閉じた。毛布は多分、沖矢さんかな。かけてくれた。


「しばらくボクら離れてるから。梓さんには連絡上手く入れとくよ。ゆっくり休んでね。」


パタン…。

リビングの扉が締まり1人きりになる。

いい子だなぁ……。

この家の気配は暖かい。あぁ、私が知らない空気。届かないものだ。



……やめよう。

感傷に浸ってもなにもないのだから。



今は、彼の好意に。甘えるとしよう。

一時の夢の時間だとしてもそれくらい、許されるでしょう?

薬が効いたのか私は浅くだが珍しく眠りにおちていた。ーーーここの空気が暖か過ぎたせいかもしれなかった。










ごめんなさい。ごめんなさい。

私が悪い、私が悪い子だからお父さんはきっと殴るんだ。殺そうとするんだ。

いい子にしてたらお母さんは殴られない。殺されない。

お母さんだって私に怒鳴らない。殴らない。

お願い。お願い。いい子にしてるから……。

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。


「ーーきーーん!!」

「…………」

「雪…………ん!!」

「…………?」

「雪姫さん!!!起きて!!!」


いきなりハッキリ聞こえた声は酷く心配した声。

なんだろ…と目を開ける。


するとめちゃくちゃ心配した顔のコナンくんの瞳が見えた。青い瞳が私を写す。沖矢さんも近くにいた。


「気がついた……?すごいうなされてたから……」

「…………そっか。ごめんね。大丈夫。」


テーブルにティーセットが置かれていることに気がついた。ハーブティーの香りがする。本当に準備良いなとテーブルに置いたメガネをとってかけた。


……今更、ガキの頃の夢を見たところで気分が悪くなる以外に何も無い。

冷たい心でしかもう思えない。

それくらいーーー私に根付いてしまった拭えない記憶。

叶わない夢。きっとここの空気が良すぎたせいだ。それだけに過ぎない。


「……ホント?」

「なんかすんごく胸糞悪い夢だった……気がする。そのせいだよ。」

「そっか……あ!梓さんに荷物渡してきたよ。喘息が酷くなってるって伝えたら気にせず休んでてだって。」

「何から何まで申し訳ない……ありがとう。沖矢さんもありがとうございます。

わざわざお姫様抱っこで運んだ理由はわかりませんけど。」


有言実行!

……いや、たまにしかだけど。なんでわざわざあの姿勢にしやがった赤井さんよぉ???コナンくんもそれは気になっていたようだ。


「?特に理由はありません。弱っている女性を素早く運ぶ為にしたまでです。」


あ゛???

声に出しそうになったが抑える。コナンはジト目である。


「……そーですか。まぁ、いいや。」

長くため息をついた。

ノイズ混じってるのがなんまら気になる。

……こっそり後でコナンくんに伝えとくか。


「おねーさん、推理小説好きなんだよね?だったらここの借りても良いって新一兄ちゃん言ってたよ!」

「嘘だろマジか。ありがたくお借りします。」


頭を下げてから身体を伸ばしてみる。

……よし、大分いい。落ち着いてきた。ハーブティも有難く頂戴します。うめぇ!!


「ホォー…ミステリー、お好きなのですか。」

「あ、はい。シャーロック・ホームズは嫌いですけど。」


ピキリ。

2人が固まった。……仕方ないだろ。本当だし。

シャーロキアン2人を前にして言う言葉ではないがこれはハッキリ言うべきことだ。


「どこが嫌いなの?」

「ホームズの性格と翻訳がどうにも……これでも何度か少し読んだんだけどどうにも好きじゃなくて。ぶっちゃけワトソン博士いなきゃダメじゃねーの?というのがサラッと読んだ感想。」

「……ミステリー好きなんだよね?」

「ホームズ以外はね。アガサ・クリスティーとか江戸川乱歩は何冊か読んだことあるよ。ほかもあったけど忘れたなぁ。あとはほとんど現代物が多いかな。」

「ま、まぁ、現代物もかなり面白いからね…」

「誰しもがホームズが好きだと思ったらいけません。わたしは明智探偵の方がいい。」

「ぐぬぬ……」

「確かに貴女の意見はもっともですね。」


少し楽しげに沖矢さんは私に言う。

彼もシャーロキアンだからムカついてるはずだが、本音を言っただけなのでワタクシは悪くないです。

某ソシャゲでも性格悪いのは有名だしな!


「でもホームズも好きになって欲しい……」

必死か!

ちょっと笑ってしまう。顔が必死すぎる。


「この歳になってから読んでないから見方変わってるかも。久々に読んでみるのも悪くないかな。あ、でも現代物も読みたいし他のも読みたい。」

「……ちぇ。分かったよ。」

「ホント、コナンくんは表情筋どうにかしなさいよ。」

「……はーい。」

「おすすめは君に任せちゃうよ。なんなら工藤くんと連絡とっても構わないし。」

「……言ったね?」

「言いましたよ。ちゃんと読ませて頂きます。」


キチンと”工藤新一”に向けて言う。

彼は張り切ってリビング離れて本棚へと向かって行った。


「……元気だなぁ。」


ポツリと漏らす。

彼はどこまでも真っ直ぐだ。

ーーある意味私も真っ直ぐではあるけど、彼とは違う。


「そうですね。……貴女の調子も落ち着いたようで何よりです。」

「あ、はい……。ありがとうございます。」


………………。

会話が続かない。ハーブティーをお代わりする。

………いや、何か喋れよ。お前の方が年上やん?知ってますよ。あと言葉が足りないのもよく知ってる。緋色シリーズ昨日見たからな!!なかなか面白かった。コナンくんやべぇ。工藤家ハイスペック過ぎでしょ。


「ポアロで働いていると聞きましたが、何故そこで?」


沈黙を破ったのは沖矢昴からだった。

私はありのままに答える。


「へ?……あー。安室さんって店員さんに良かったら働いてみないですかーって誘われて。家から近いし仕事探すのも疲れてたんで承諾したんです。……何か気になることでも?」

「いえ、安室さんは確か女性に人気だと聞いた事がありますので……」

「…………まさかですけど私が安室さん目当てで入ったとか思ったんですか。」


ジト目になった。

確かにイケメンだけたどだからなんだ。顔が良い連中は家にもめっちゃいますが。


「いえ、とんでもない。誤解を招いたなら申し訳ありません。」

「ホントです。」

「おや、不機嫌にさせてしまいましたか。」

「不愉快ではありますが……まぁいいや。」


ふむ…と左手を顎にやる。

あー。そういえばこの人も左利きだっけ。

……あー……ノイズ混じってるのホント気になる。


「本当に申し訳ありません。何かお詫び致します。」

「んー。ポアロの飯奢ってくれるなら考えなくもないですね。」

「……それでいいのですか?」

「別にいいですよ。貴方が私をどう思っていようが関係ないし。」

「…………そうですか。」


片目が薄く開く。

エメラルド色の瞳が僅かに見えた。

ーーー隠す気コイツはあるのだろうか。いや、別にどうでもいいけど。


「……コナンくんガチで選んでるな。」


はぁ……ため息をつく。

時間が結構経っているがまだ戻って来ない。


「ホームズも面白いですからね。」

「あの子を本気にさせるんじゃなかった…」

「おや。あの子の本気をまるで知っているようですね。」

「いや、知りませんけど。」


本気って劇場版かな。

私は世紀末の魔術師と迷宮の十字路が好きです。


「貴女はお話をしていて退屈しない方ですね。」

「そりゃ良かったですね。」

「そう言えば左利きなのですか。」

「はい、そうですよ。」


もうやめてー。

モブ……で居たかったけどコナンくんの正体知ってるの本人にバレてるからもうモブじゃねぇぇぇ!

だがしかし。

これ以上は関わりたくない。平和……は無理でも平穏でいきたい。無理か。


「集めてきたよ!!新一兄ちゃんにも相談してセレクトしてきた!!」

「お、おぅ…」


ハァハァ言いながら分厚い本を何冊もカバンに入れて持ってきている。

改めてガチだと思わざるを得ない。


「……重かったでしょ。沖矢さん頼りなよ?今、居候してんでしょ?」

「あ、う、うん……つい夢中になって……」



「誰かに頼ることって難しいけど、大切なことだからね。」



私が戦場で何処までも冷酷になれるのは一緒に戦う仲間が居るから。

これが正しいと思える強さを持てるのも仲間が居るからだ。


「う、うん……。」


呆気にとられたまま私を見つめる彼を横目に本を受け取った。……む、重いな。


「ありがとうね。全部読んで感想ちゃんと言います。」

「……うん。…………あ、あのさ!」


重いのが伝わったのか沖矢さんが持ってくれた。

最初から持ってくんないかなー。くれるわけないかー。


「んー?なに。」


見上げる彼に視線を合わせる為にしゃがむ。

色々世話になったし、話はきちんと聞くべきだ。




「もしも……だよ。もしも、ボクが助けて欲しいって言ったら雪姫さんは助けてくれる?」




……そういえば彼はようやく誰かに頼ることを覚えたんだっけ。

私は出来る限りの笑みを浮かべる。


「残念。」

「え。」

「言われなくても助けます。勝手に助けるよ。」

「…………おねーさん。」

「嫌だって言っても助ける。だから、遠慮なく言いなさい。」


頭をぐしゃりと撫でる。

私は主人公補正も何も無いが、とんでもない味方が沢山いる。

そして霊力に関してはトップクラスなのは時の政府お墨付きだ。だから、知恵はかせないけど力ならいくらでも貸せる。


「あ、ありがとう……」

「そりゃこっちのセリフ。色々世話になったし。本も楽しみ。」

「……もう少しでおねーさんに推理聞かせてあげられそうだよ。」

「あら。……楽しみにしてるね。」


異世界から来たという過程。

怪我を治した過程。

さて、どんな推理が聴けるのやら……ちょっと楽しみだ。



もちろん気がついてはいたがあえて無視した。


ーーー沖矢昴の視線が鋭く私を見つめていることを私は完全に無視しきった。










数時間後。

荷物も多いので沖矢さんの車にてポアロに帰還。

使える人は誰でも使います。例えFBIだろうが関係ないですわ。


「無事帰還であります、梓ちゃん。」

「もーー!!心配かけさせないでよ!!大丈夫なの?」

「ん。ぐっすり寝たから良くなりました。あのさ、コナンくん……だけじゃないな。毛利先生と確か娘さん居るんだったよね?3人にご馳走したいんだけど。」


沖矢昴さんには奢らせます。私の分を!


「いいわねー。私もいいかしら?」

「時間いいの?」

「気にしないで。私が安心したいだけだから。」

「安心?」

「友達が具合悪くなったら心配するにきまってるでしょう。」

「……あー。そだね。」

「?」

「うん、ありがとう。」


友達は元から少ないのだが、審神者になってからはある事もしているために恨みを買いやすくなっていた。

……本当、梓ちゃん。いい嫁さんになれるわ。


「本当に奢らせるとは……」

「何か言いましたか?」

「いえ、なんでも…」


沖矢さんが隠さずにため息をついていることに気がつく。言ったことは守りましょーねー。

その隙にコナンくんにこっそり伝えた。


「あの人に変声機ズレてること、教えてあげてね。」

「え……」

「頼んだよ。」


準備をする為にその場を離れる。

コナンくんは固まっていた。

……あれ、推理出来そうなんじゃないの?

失敗したかな。


何言われようがワタクシはガン無視します、と心に決めてコナンくんから視線を外した。











見くびっていた。

江戸川コナンは心で舌打ちをする。


別世界の人間でもまさか沖矢昴の正体まで知っているとは思わなかったのだ。


別の世界の人間と最近ようやく整理でき、推理までこじつけたのはある言葉を思い出したからだ。


古来、日本人は言葉には魂或いは霊が篭っているという思想があり人々は発する言葉を大切にしていたという。


その名を”言霊”


ファンタジーの小説や漫画なんかでも希に見る言葉である。


方法は様々。

恐らく、加賀田雪姫はその言霊遣いなのだろうという前提で推理を組み立てた。

そうすればあの過程、結果も納得がいく。

自分の怪我を治した時の声色、 みるみるうちに治っていった足。

言霊だけではない。恐らくは霊力という普通の人には扱え無いものを利用し、言霊により力を注いだ。

……全てはオカルトの世界の中だ。

証拠だってない。霊力というのももちろん推測の範囲から出ない。だがーー。


こうでも考えなければあの結果も出せないのだ。

ここまではあの怪我を治した推理。


では異世界の住人である推理だ。

当たり前のようにこの世界が漫画でもない限り知らない情報を彼女は知っていた。

例えば、自分の正体。

例えば、黒の組織の情報。

例えば、安室さんの正体。

例えば、今まで解決してきた事件。

例えば、今はもう生きていない人の名前。

そして今しがたーー沖矢昴の正体。


だからこれも大前提をこの世界が漫画であると推理せざるを得ない。

有り得ない話ではあるが、有り得る話にしてしまえば無理に推理を組み立てる必要もない。


ただ異世界の人間である証拠を淡々とあげればいいだけの話だ。


別に漫画であるとしても自分のすることは変わらない。きっと彼女も分かっているだろう。彼女は展開を知っていてもきっと邪魔もしない。

だから問題など何も無い。


…ただ。それとは関係なく。


ーーーあの時は呆気にとられてしまった。


誰かを頼ることはとても大切なことだと言われたあの瞬間。

あまりにも真っ直ぐな言葉で凛としていて。

その姿に見蕩れてしまった。

別に惚れたわけでもない。心から尊敬したのだ。


(おまけに耳まで良いとか……安室さん、聞いてねぇぞ。)


名探偵はため息をついた。

そんな彼女はテキパキと動いている。


「コナンくん、もうちょいで準備出きっから連絡しといてね。」

「はーい。」


彼は思い出す。

きっと彼女にはなんて事のないような言葉。だが彼にとってはとてつもない勇気をくれた言葉を。



『嫌だって言っても助けるよ。だから遠慮なく言いなさい。』



まだまだ秘密がありそうな加賀田雪姫。

探ればとんでもないものを抱えていそうだ。

でもあの言葉は真だった。

だからーーー遠慮なく言うことにしよう。


小さな名探偵から多大なる信頼を勝ち得たことを彼女は知らない。













「タダ飯美味い。」

「雪ちゃん……」


沖矢さんに奢らせてご飯を食べていた。

毛利先生一行はテーブル席。私はカウンターで梓ちゃんと一緒に食べている。

少し離れて沖矢さんが座っていた。


「良かったですね。」

「良かったですわー……。」


赤井さんの嫌味すら受け流せます、はい。


「雪さん、改めてありがとうございます。とっても美味しいです。」

「良かったです。今度、お友達も連れて是非来てくださいね。」


蘭ちゃんとも対面。

これで顔見知りとなってしまったな……トホホ。

フラグバンバン乱立じゃないですか……。

いや、考えるのはよそう。


ブー、ブー、ブー……


バイブレーションが鳴る。

私のスマホだ。

断りを入れて店の前まで行き、電話に出た。


「長谷部か。どうした。」

「お食事中、失礼致します。緊急事態につき連絡致しました。率直に申し上げます。時間遡行軍がこちらの世界へ一週間後には来ます。」

「……そうか。今回は”遡行軍”で間違いないんだな?」

「はい。全刀剣に確認済みです。」

「……わかった。急ぎ術式を発動させる。お前は引き続きそちらで監視を続けろ。作戦は術式を発動させ次第直ぐに立てる。」

「拝命致します。……主、ご無理なさらぬように。」

「アンタもね。そっちの仕事、ハードでしょ。」

「俺は付喪神です。人ではない。平気です。」

「それでもよ。貴方も私の大切な刀剣なんだから。無理して倒れたりしなら許さんからな。」

「……はい。肝に銘じます。」


電話を切る。

言霊を使い会話をしていたので盗聴はおろか本来の会話すら聞けない。


(もうちょい普通の人になっていたかったけど…)


やはり私は審神者の勤めを果たさなければならないらしい。

長いため息をつく。

ご飯くらい食べてからでいいよな……と1人で言い訳をしながら店に戻った。








「あれ?雪姫さんお休みですか?」


あれから数日。

彼女……加賀田雪姫とは普通の会話しか出来ていなかった。肝心なことは聞けぬままだ。

今日こそと思っていたが休んだらしい。珍しいこともあるものだ。


「はい。昨日、電話に出てから大事な用事がはいって一週間は来れそうにないって……」


寂しげに梓さんが言う。

ーー違和感をおぼえる。

言葉だけで治してしまう摩訶不思議な力を持つ異世界から来たという女性。

急に一週間も休むとは何かあったのではと思わざるを得ない。


「そうですか……寂しいですね。」


探りをそろそろ入れてもいいだろう。

俺は風見に指示を出すことに決めた。


まさかFBIも調査しているとはこの時は知らない。











「めんどくさがらずやっておいて正解だったな。」


本丸の執務室で着替えを済ませる。

白い着物に赤い袴。

巫女装束によく似ているが所々に粉雪の模様がある為に違うのが分かる。


羽織を着る。

雪の結晶がいくつも模様としてある羽織。


審神者雪姫を象徴する羽織、戦闘装束だった。


腰には無銘の短刀と脇差。

私の霊力を込めやすくしたものだ。

それからもう1つ。


「これも慣れたもんだな……」


腰につけてあるホルスターの中身があるかを確認。ワルサーp38。ルパン三世が愛用していることで有名な拳銃だ。

ダブルアクションの為、安全ゴムは常に付けてる。引き金引いたら撃てるんで。


滅多に抜かないがまずいと感じた時は拳銃も使っている。

……時間遡行軍と戦っているので銃刀法違反とか言っている場合ではないのだ。


もちろんこれに霊力を込めないと時間遡行軍は倒せない。

これだけじゃまだ足りないのだ。


「……よし。術式を発動させるか。」


羽織がヒラリと揺れる。

久しぶりの着物に歩きずらさに似たものを感じたが無視する。


術式の起点は米花町の中心地の公園。

今だけは姿を見えなくしている。本丸から出た私はしっかりと足を付けて歩いていった。


これも発動させるための仕掛けの1つ。

大術式なので少しずつ霊力を込めていく。


(……ご苦労なこった)


公安にFBI。

どちらとも私の近辺を調べているらしい。私は何かしたんでしょうか赤井さんよぉ。

いまの私は霊力最大開放状態なので知りたくない情報まで流れてくる。

調べたとこで何にも出ないけどねー。と心で思うが勝手にどうぞとも思う。


しばらく歩いていると起点に到着。

刀剣も何振りか待機していた。


「よ!久しぶりの装束だな、主。」

「まぁな。ちょい歩きにくい。」


そう明るく言うのは驚きを常に求めている刀剣、鶴丸国永だ。

平安刀の1人だが意外と常識枠。頼りにしている。


「もうすっかり一人前だね。私から教えることもないのではないかな。」

「それはない。」


起点に両足を置く。

石切丸のセリフにめっちゃ首を振った。

んなわけないでしょバカなの。


「術式を発動させます。」


祝詞を言霊に載せて足を動かす。兎歩と呼ばれる中国に伝わる仙道の1つ。


特定のものを掌握する術式ーー具体的には時間と空間である。

これを発動することにより私はこの世界において時間と空間を自由に操ることが可能になる。

1人も死なせないためにはこれが必要だった。この世界におちた時に仕掛けておいて正解だったと思う。


「ーーーよし、上手くいった。」

「さすがですね。主。」

「いや、みんなが居るから。別に私は凄くない。」


太郎太刀の言葉に即答する。

自惚れなんてできない。

これが出来るようになったのは刀剣達のおかげなのだから。


「さて、と。作戦会議といきますか。」

「はいよー。」


次郎太刀がノリよく答えてくれた。











沖矢昴こと赤井秀一は仲間に連絡を入れていた。


ーーー加賀田雪姫の身辺を調べるように、と。


安室透が直々にスカウトとしたという人物。これだけでも気になるが、それだけではない。恐らく彼女は何かを隠している。重要なことをだ。

それはボウヤのやりとりでよくわかった。


(今のところ、あの女はグレーだ。)


ただの思い過ごしならいい。

だがそうでなかった場合が最悪に繋がることもある。


(守らなければ。あらゆることから。)


隣に住む少女を思い出す。

その少女を守るにはあらゆることを把握しなくてはならなかった。







警察庁警備局警備企画課にて


「へぇ。風見さん凄いですね!」

「あ、いや。俺が凄いわけではない…降谷さんが凄いんだ。」


降谷零の部下の1人として潜入中、堀川国広は風見裕也と僅かな休憩時間に他愛のない話をしていた。

彼から見れば風見裕也も人の子としてはかなり優秀だと思っている。

ただ、降谷零という存在が大きすぎるだけだ。

もちろん、降谷零のことの評価も高い。……しかし、この間のこともあり無理は良くないとも考えてしまう。


「君の方が俺よりも優秀だろう。数日前の事件も降谷さんに煩わせず早急に犯人を逮捕したのだから。」

「たまたまです。僕なんかまだまだですよ。」


ーーー本当に守りたい人はいつも戦場にいるんですから。


言葉は飲み込む。

白い着物に赤い袴。羽織は彼女の名を象徴する雪の結晶。

戦場にていつもその小さな背中は戦っていたのだから。


「すまん、降谷さんからだ。」

「お気になさらず出てください。」


風見裕也はその場を離れて電話に出る。

会話を聞かれぬよう暗号で話をしていた。


(目をつける人物……間違えていますよ。降谷さん。)


暗号で話そうが彼には関係ない。

内容は普通に分かってしまう。


ーーー彼の主である加賀田雪姫の身辺調査の任務だった。


長谷部さんにも伝えるべきだろうか。

いや、必要ないか。と結論づけた。

この独特な殺気は彼のものだ。


既に知っている、ということに間違いない。


カツカツと音がなる廊下を歩いて部署に戻る際、その殺気の持ち主とすれ違う。


『殺気、抑えて下さいね。』

『これでも抑えているが。』


人の子には聞こえぬこの会話のみでお互いの情報を確認した。

やはり間違ってはいなかったらしい。


それだけではない。

時間遡行軍が一週間後に来ることを伝えてくれた。……確かに時空の歪みから感じ取ることが出来る。こちらも間違いはない。


(また……あの人を戦場に……)


少しだけ歩く速度が落ちる。

既に主が準備を始めているのが離れていても感じ取れた。


人を救う為ではなく、ただ歴史を守るために。


それが今までの戦いだった。

だが今回はーーー。


この世界の人を時間遡行軍から守る為に自分たちは戦う。


なんという皮肉だろうか。

今までだって主は間違ったことをしていないというのにだ。


(……雪さんはどうとも思わないんだろうな。…いや、少しは思っているか。だって。)


一度くらいあの世界でも人助けをしてみたかったことくらい、知っているんですよ。


だから今回の出来事はある意味彼女への褒美なのかもしれない。


今まで見捨ててきた人の分まで今度は救えと。


戦場に再び立つことになってしまうのは正直、彼は嫌だった。

けれどその分だけ彼女を守れるなら。

それでいい。


ブー、ブー、ブー……


スマートフォンのバイブレーションがポケットで振動する。

気配から相手はすぐに分かり、彼は再び普通の人には聞こえぬ声音で電話に出た。


「はい、堀川です。今大丈夫ですよ。どうしましたか?主さん。」

「お疲れ様。術式を発動させたんだけど……あとは主要建物に何重かの結界をはった方が良いよねとなってだな。警視庁、警察庁はアンタらに任せていいかな。刀紋と私の霊力による加護で結界をはる。強力なものにして欲しい。」

「わかりました。長谷部さんには伝えますか?」

「いや、現在進行形で伝えてるから大丈夫。」

「流石です、主さん。」

「みんな主を持ち上げすぎだって……んじゃ頼むわ!夕飯、光忠にリクエストしとけよ。」


ツー、ツー、ツー……


颯爽と電話の向こうの人物が着物を翻して目的地へ歩いていく姿が遠くに見えた。

現在進行形で伝えたということは霊力を介し、2振りに向けて話をしていたのだろう。


(謙虚過ぎるのもよくないよね……)


彼女に力を貸す刀剣の全てがいわゆる本霊と呼ばれる類い。

本霊から気に入られている審神者という稀有な存在でもあるのだ。


「さぁて、僕も頑張らないとね。」


お決まりのセリフを口にし、彼は再び歩き出すのであった。












「ふざけんなよマジで犯人こ」

「おーーーっとそこまでだ主。」


慌てて口を塞いでくる兼さん。なんでだよ。実行はしないぞ、多分。

時間遡行軍が来るまで残り2日。

主要施設及び建物の保護、民家の保護、8割以上は終了していた頃だった。


忘れてたけどこのマンガ、ミステリーが主軸だったわちくしょー!!


事件、起こりました。殺人事件です。

これから結界はろうとしてるとこにだよ。

時間惜しいんだけども。


「はぁ……あと残りは……」

「この辺りだ。だから慌ててもしゃーねぇよ。気楽に待とうぜ。」

「せやな。うん。」


人からは霊感あろうが今は見えなくしているので、ドスっと座り込んでから借りている本を取り出した。

兼さんが本に覗き込んでくる。


「面白いのか?」

「ん。ガチで選んできただけはあるわ。」


マジで面白い。

ホームズ……はまだ手につけてないけど現代物はドンピシャだ。

思わず無言で読み続ける。



「でもボクその時に見たよ?」

「僕も見ましたね。」



ピタリとページを捲る動作が固まる。

なんかめっちゃ聞き覚えのある声……ぎぎぎと首を動かす。

少し離れた所に江戸川コナンに安室透の2人の探偵がいた。




……あぁ、スペシャルかな……最近読んでないからわかんない……知らない……ははは。


原因はあの歩く死神か!!!

と合点がいった。はぁ……私の予定が。


「主?」

「もう犯人ネタバレしていいかな。私、視えてるんだけど。天からのお声的な。」

「いやいやダメだろー!国広に怒られっぞ。」

「嘘だよ。……にしてもこの状態だと犯人まで視えてるとかさ、つまらない。」

「そういうもんか?」

「そういうもん。……はぁ。早く解決しとくれ、工藤くん。降谷さん。」


長いため息をつく。

あの中に入るわけにもいかないので再び読書を再開することにした。









「ん……なんだ?」


江戸川コナンは事件を解決した後にふと気配がした気がして振り向く。


誰もいない。

……そのはずだ。だが、何か……。

妙に温かい気がするのだ。


「どうしたんだい?コナンくん。」

「あ、ううん。……誰か居た気がしたんだけど、気のせいだったみたい。」

「……そうか。じゃ、帰ろう。」

「うん。」


もう一度振り返る。

やはり誰も居ない。


「気のせい……だよな。」


妙な胸騒ぎを抑えたまま彼はその場を去ることにした。

もう1人は小声で部下に指示を出していた。









「主人公補正ふっざけんなよ!!!末代まで呪ったろか!!!」

「落ちつけって……ほら、とっとと済ませようぜ。」


めっちゃコナンくんと何度も目が合いました。

目と目があう〜瞬間〜好きだと気づ……くわけないよね!!!!


いやぁ、もう。

結界はろうとしたらガン見だもん。さすがにビビるわ。

降谷さんの部下来るし邪魔!!!


……雑念を振り払うために八つ当たり気味に地面を蹴る。


ダン!!!


「……荒ぶっていらっしゃるなぁ……主。」

「ちゃんと霊力流し込んでますけど?」


いつの間にか鶴丸が来ていた。

見慣れた白い戦闘装束が目に入る。


「ドタバタしてるだけに見えるぜ」

「うっさい、下準備に疲れてんじゃ!!」


ダン!!!


再び地面を蹴った。

あーもう!!時間かかるったらありゃしない!

乱暴だけどきちんと結界はってます。


「……はぁ。これで1人も死なせずにやりきるとか……ははは。死なせたら時間戻して行かなきゃ……」

「政府から何も無いんだろ?酷いもんだ。」

「上がどうしようもないのは今に始まったことじゃないでしょ。腹立つけどそういうもんだ。」


タン……


結界を張り終えた。

時空が歪んでからのことだ。政府から連絡は1回だけあった。時間遡行軍及び歴史修正主義者からこの世界を守れと。しかし私から連絡を何度もしても出なかった。

理由は簡単だ。

これは何度も見えていた事実。


「政府にとって、私が脅威とかアホらし。」


はぁ……ため息ばかりが出る。

別に構わない。

脅威だろうがなんだろうが私は、変わらない。

今まで通りやりますとも。


「大丈夫か。主。」

「へーき。どうでもいいし。」

「無理、すんなよ。」

「髪の毛ぐじゃぐじゃになったんですけど。」


鶴丸がガシガシと私の頭を撫でる。

全く……不器用だなぁ。

私を慰めるとき、いつも鶴丸は頭をぐじゃぐじゃに撫でる。


「おっと、すまんすまん。」

「もー。」


髪を直しながら疲れが出ているのに気がつく。

流石に霊力使い過ぎたか。

すると鶴丸がひょいと私を抱き上げた。


「は?」

「疲れているだろう。お姫様は寝ていいぞ。」

「…………おんぶでよくない?ねぇ??」

「甘えとけよ、主。」

「そーいう問題じゃないんだなぁ……」


兼さんの発言にツッコんだ。

だけどもう疲れていたので黙ってされるがままにそっと目をつぶった。










当日。

早朝。本丸、大広間にて。


「作戦を確認な。私は起点を中心に動く。打刀、脇差、短刀は遠慮なく遡行軍を撃破してくれ。太刀と槍はそのサポート。大太刀、薙刀、は私の術式のサポート。以上。他ある?」


「主もいつもの如く戦うのか?」


岩融が尋ねる。

私はそれにうなづいた。


「基本的には起点から見守ってるけどまーいつもみたいにはなるかな。そこは臨機応変にってことで。……分かってるとおもうけど今回は1人たりとも死なせてはならない。いいな。」


トーンが自然と低くなった。

”死なせてはならない”という言葉の重さ。

見捨ててもいけない、誰一人として。


「いつもとは逆ってことね。りょーかい。」

「はい、そーです。守るのはこの世界の人達だから。」

「主、本当は嬉しかったりする?」

「……まぁ、気分は悪くないよ。いつもより大変だとは思うけど。」

「……そーね。」


清光が色々と察し良すぎて私はウチの初期刀やっぱすげぇな……となる。

ホルスターから今一度拳銃を取り出す。

陸奥守がひょいっと確認の為か銃を私から取り上げた。


「どした?」

「……いや、またこれをおんしが握るかと思うとな……」

「気持ちはわかるけどね。仕方ないよ。」

「わかっちょる。おんしは強い女じゃ。」


拳銃を確認したあと、両手に持たせてくれた。


「おんしのこともワシらが守るぜよ。」

「ん。頼りにしてます。」


修行終えてる陸奥守は更に漢気増した気がする。

ホルスターに仕舞いながらはぁ……ウチの刀剣たちマジ尊いとかあさってなことを思い始めた。


あさってなことを考えながらも本丸の外へいく。

半分は待機組。私はもちろん最初から最後まで現場にら居ます。


「じゃ、行きますか。臨機応変に。」


今回はわざわざ時間遡行をしなくていいので空間だけ転移をする。


しゃがみ込み、手のひらを地面につけた。



粉雪が私を中心に舞っていく。



ここ一週間、霊力最大開放状態だったが今日は更に上。

私に備わっている霊感、霊力全てのリミッターも外している。


平成の時代の出陣。

何があるか分からないからだ。最大開放状態も実はあまり気分よくないのだが、そんなこといってられないし。リミッターは御神刀、霊刀に頼んで今朝外してもらった。


『空間 転移 』


陣が言霊に反応を示す。

粉雪が雪に変わり吹雪にへとどんどん激しくなる。



ーーー審神者・雪姫の名を表す力だった。






吹雪で刀剣達を覆い隠しながら米花町中心地到着。吹雪なんて見えてもいないが、こうしておけば一般人からは姿が見えないのだ。


「毎度思うが大将すげぇな。名前だけでこの力だろ?」


修行を終えた後藤藤四郎が私に尋ねる。

……まぁ、雪国出身だしな。

だからなんだ私。


「……どうだろうね。凄いのかな。」

「大将、相変わらず自己評価低いな……」

「根暗なんだよ…………」


根暗大将ですけど仕掛けた術式を足でつついて発動。


『時間 掌握。 空間 掌握。』


これでこの世界において、時間と空間は操り放題。こうでもしないと死人出るのでしっかり発動する。


「さて……と。そろそろお出ましかな。」

「だな。」

「なんで時空が歪むんだか……」

「そいつはわからねぇが、やる事は1つだろ?」

「そだな。……来るな。」


薬研との会話に終始をうつ。

時空の歪みが酷く感じ取れる。間もなく来るだろう。



『審神者 雪姫の名において主命を下す。時間遡行軍を殲滅し、この世界の人々を守れ。以上だ。』



言霊に込めて私は言った。

短刀と脇差を抜刀し、霊力を込める。

基本的に短刀の方が動きやすいので今は脇差を納刀しておいた。


「おいでなすった。……時間停止。空間転移。」


吹雪を止める。

時空の歪みから時間遡行軍はぞろぞろとやってきた。……相変わらず気持ち悪い。

時間停止をして人々の動きを止める。空間転移で予め決めていた公園や空き地に避難させた。


「結界、起動。」


一般人に手出し出来ぬように強力な結界を起動。

これも下準備していたので楽にできた。

一応私の周りも結界をはるが、多分意味なくなるだろうな……と予測。


「大将首は真っ先に捕りたいだろうしねぇ……」


執務室にいる時と同じように様子を映し出してはいるが、これをどれくらい見れるかな……。

大抵は1分持てばいい。

さて今回は。



キンンンンンンンンン!!



陸奥守が宣言通り私を守るようにして大太刀を一撃で撃破。

極つよ……。

負けじと清光も反対から私の首を狙ってきた槍を一撃で撃破。

……なんでこれとうらぶで反映されてないん??


「大将首狙う前にまず俺たちと遊ぼうぜ?」


うわ……ウチの初期刀しんどい。

カッコイイわ……。

イケメンにしか許されないセリフだよね。


「1分もった……」


珍しい。

みんな気合い入ってるからかな。

私がまだ起点から動いていないのは刀剣達のおかげだ。


「すかさず手入れっと。」


本丸のシステムと連動させ、怪我を負えば自動的に手入れを瞬時に終わらせるようにしておく。

……ここまでまだ私が動いていないとは珍しいこともあったものだ。



まぁ、そんなこと思ってたらすぐに敵がまた来ましたけどね!くそぉ!!


「ムスカの時間まで持たなかった……」


3分間、待ってくれなかった。

結界を維持したまま私は一気に短刀を突き刺す。

相手は打刀だった。

そのまま左足を軸に回転し、今度は脇差を抜刀。短刀は邪魔になるので納刀する。正眼に構えてから一気に敵の太刀を脳天から斬り裂いた。


「遠くからはないわ……”破壊”!!」


遠方から一気に詰め寄ってきた敵短刀は言霊で対処。


基本的にはこの2種類で私は対応する。

イレギュラーは……例えばこんな時。


(結界やぶってきやがった……!)


こういう場合だ。

すかさずホルスターから拳銃を取り出す。刀を言霊で納刀。左利きなので右手をきっちり添えて標準をきっちり合わせる。




バンッ!!!!



……多分、日本の警察官より私は撃ってると思う。考えてみたらなんてこった。FBIやCIAよりは………………多分撃ってない。多分。

それはさておき。あらかじめ霊力を込めているからこそ拳銃でも撃破可能なだけで、普通のままでは何も出来ない。


ちなみに、今は戦闘装束を来ているから反動は来ていない。この服装の時だけ、だけ、身体能力めっちゃ高くなる。チートな服なのである。


普段、運動能力なんてないから変な感じはします。ホント皆無だからな。体育の成績とか思い出したくねぇ。小学校、万年がんばりましょうでした。がんばってましたよ先生!!


「太刀撃破。……とりあえず不穏な気配私の周りはおk。」


敵の動きを陣を通して見る。

…………これは。……マジかよ。


「警察庁、警視庁に向かっていやがる……」


やめろよ事件解決するとこにこれ以上攻撃やめてホントマジで。

しかもフラグ乱立しそうなとこだし……(現在FBIと公安に身辺調査されてます)

やめてホント。


『6振り着いてきて!警視庁、警察庁側に向かいます!』


一部隊分ついてきてもらう。

6振り揃ってから空間転移で移動した。






「……うわ、ヤバかった。……建物に居たんだ。」


灰色のスーツ姿の降谷零が見える位置で止まっていた。

……時間停止はきっちり効いているようだ。

霊力があってよかったと思った。

この人たちは民間人ではないけど、こちら側視点からすれば変わらない。


でも、なんとなくだがこの人や私と同じ左利きのFBIの人に霊力を込めた拳銃を渡さなきゃならない日が来そうな気がした。


私ならそう書くね!!共闘みたいな。クロスオーバーされてるし。

……ありそう。うわぁ。めんどくせ。

そうしたら身体能力も言霊と霊符で最大に強化して……うわ、えげつないな。あの二人を強化したら敵なしでは……黒の組織オワッタナ。

私は楽にで……きるわけないか。うん。


「うじゃうじゃとキモイっつーの!!」


言霊で撃破していく。

基本的には動かず敵の動きと味方の動きを見守るようにするが……


『……刀種変更。太刀。』


敵が強くなってきたのが刀剣達の戦い方を見て分かったので折れないように太刀にする。



キンンンンン!!!!



薙刀が私の首を狙う。

私は下がって構え直し刃をうけとめた。


「どいつもこいつも……!」


長い棒に重い刃。

両手で受け止めるがなかなか厳しい。

何せ重たい。身動きがとりにくい。

言霊で更に強化すべきだと声色を変えようとした。


その時だ。


「お覚悟!」


水色の髪の毛に物腰の割に派手な服装。

粟田口吉光により唯一無二の太刀として打たれた刀、一期一振が助太刀し、撃破してくれた。


「助かった、一期。」

「お怪我はありませんか!?主殿!」

「残念ながらありますよ。無傷でなくて申し訳ない。」

「…………主殿。」

「まだ任務は終わっていないぞ。……その表情は帰ってからにしてくれ。」


悔しげな表情。

隠したところで見破られるのは分かっていたのであえて話した。


ーーみんな、優し過ぎる。


温かいのには慣れていない私には、いつだかに哀ちゃんが言っていたように火傷してしまいそうな気がした。





それから数時間後。


『あともうひと踏ん張り!!気合い入れ直せ!』



陣をサポートしてくれていた大太刀、薙刀も入れて最後のふんばりを見せる。

私は再び脇差に大きさを戻し、私も自分に襲いかかる敵を一体一体撃破していった。


「はぁ……はぁ……流石に息上がってきた。」


着物を見れば返り血と自分の血。

いつもの出陣より遥かに多い敵の数。さほど強くないのがまだいいと言うべきか。

……情けないな。もっとできるはずだろ。だってこの着物はそういうものなんだから。私は審神者だぞ。しっかりしろ、雪姫。


「もう休んでて大丈夫だよ、主。」

「安定……」


修行を終えた彼の服装は以前より軽装になった。戦闘狂さらにupして帰ってきたけど、彼らしいので私は好きだ。


「後は僕達に任せて。敵が多すぎるもん。息が上がるのは当然だよ。」

「……分かった。結界の強度を変える。……すまないが私のことも守ってくれ。」

「当たり前だよ。」


安定は笑って答えてからそのまま敵に斬りこんでいった。頼もしいな、ホント。

……無茶はこういう誰かに任せられる場面だと良くはない。


結界の強度をさらに強力なものにする。

武器は全てしまった。

はぁ……流石に疲れた。


壁に寄りかかるように座り込んだ。

……怪我、し過ぎたな。

ちょっと血を流し過ぎた気がする。


「大将!……気休め程度だが止血するぜ。」

「……すまんな。」

「女がこんな傷作るもんじゃねぇだろ…」

「やれる人間が居ないならやらなきゃ。」


手馴れたように私に処置する。

何ヶ所かに止血の為に布でキツめに巻かれた。


(はぁ……情けないな……)


根暗モードに入りそうなのが分かったのか、薬研が優しい声で私に話しかける。


「よく頑張ったな。大将。」

「……薬研ニキ優しい。」

「だいぶ疲れてるな……」


私の頭を軽く撫でてから少し離れると彼は持ち前のステータスで私を狙う大太刀を一撃で撃破した。


「鎧なんざ紙と同じよ!!」


……短刀の極、1番エグい。

アサシンやん……。

毎回思います、はい。


「時空の歪みの気配が薄くなってきた。……もう来なくていいですというか二度と来るな。」


ようやく帰ってくれるらしい。

もう戦いが始まって数時間、夕方になりそうだ。


よっこらせと立ち上がり、最後の仕事をする。


『浄化!!』


手を地面につけ、不穏な気配を完全に消した。

これで人々に影響はない。


『主や。敵は全員撤退したぞ。』

『……お疲れ様。申し訳ないけど誰か私を運んで下さい。マジで疲れて動けない。』


三日月からの伝言で平成の時代の初出陣が成功に終わったことが分かった。

………………はぁ。

つ……かれた。


「ぬし様をお姫様抱っこするチャンスと聞きまして。」

「どんなチャンスだよ……」


まぁ何故かお姫様抱っこされる時は毎度動けないので大人しく小狐丸に抱き上げられた。

なんでだよお姫様抱っこフラグいらんわ!!


「お疲れ様でした。雪姫様。」

「小狐丸もみんなお疲れ様。」


こうして誰にも知られることなく”名探偵コナン”の世界及び平成の時代の歴史を守ることに成功した。


まぁ、誰も知られることもないのはいつものことなんで気にしません。

目立つの大嫌いだしな!


……明日までは流石にポアロ休もう。

本丸に到着してから全ての術式を解いた。

時間は止めてはいたが特別支障はない。術をとけば本来動いていた通りになる。




数日経てばまた審神者業しばらくお休みだ。

ごく普通にバイトです。

いえーい、ピースピース()

……マスターと梓ちゃんに何か持っていくかなぁ。安室さんは……いるかなぁ。警察庁いたし。いらねぇか。

いや、ダメかそれは。


「明日なんか差し入れ買おうか……」


めんどくさいけど買いにこう……。

何がいいかなぁと考え始めた。









警察庁にて


「……助かった。見事にシロだな。」


風見に調べさせた加賀田雪姫の身辺調査は見事なシロだった。

だいぶ家族は複雑な構成のようだが。


「まさか家族に2人、公安部がいたとはな。」

「はい。自分も驚いています。」

「しかも1人は僕の直属の部下か。」

「……はい。堀川国広。優秀な警察官です。」

「そのようだな。」


加賀田長谷部、堀川国広。熱を出して倒れて雪姫さんの家世話になった際に僕に服を用意してくれた彼だった。

この2人は公安部所属だ。

2人とも記録を見る限り優秀な警察官で長谷部は僕と同じ階級。


「……妙に出来すぎな気もしないが。」


書類をデスクにしまう。

ポアロのマスターによれば明後日には彼女は復帰するらしい。


(次は逃がさないぞ。加賀田雪姫。)


君があの日に助けたのは、安室透でも降谷零でもないのなら。


”バーボン”


なんだろう?




同じ内容を沖矢昴ーー赤井秀一も報告を聞いていた。





審神者業復帰 加賀田雪姫(今回は刀剣割愛)


剣術は一から刀剣達(特に新撰組刀)にスパルタ指導されているため、もっぱら実践剣術。腕前は遡行軍倒せるくらいなので結構なものになり、拳銃はとうらぶ世界で陸奥守から教えてもらい練習しまくって撃てるようになったという経緯あり。ワルサーP38にしたのはルパン三世も好きなため。

運動神経は全くないのでかなり大変だった。ホント大変だった。ウチの刀剣達すごい。


推理小説は好きだけどもホームズはどうにも……以降、コナンにぐいぐいこられる。現代物はドンピシャな為にもう全て読み終えた。

身辺調査されてるの正直解せぬ。


身辺調査命じた降谷零

あまり今回は出番なかった。審神者によりフラグたった。


沖矢昴

審神者も左利きなのでちょっと仲間意識湧いてなくもない。遠慮ない態度に好感度アップ。

ポアロで食べた審神者のご飯めっちゃ美味かった。でもコナンとのやりとりで違和感があったので調査。……シロ?ホントか?

こちらも審神者によりフラグたった。