銀色の夜空

沢田千姫
@riayamato

第3訓

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暗くどこかもわからない部屋の中で私は目を覚ました。


「うっ...。痛いなぁ...もう...。神楽ちゃん達ちゃんと逃げられたかな?」


もう何時間前かもわからない。日付が変わったかどうかすらも定かじゃない。それでも気を失う前のことを確かに覚えている。







あれは3日前に糸井さんから今日は藤吉が外出するという話を聞いたことから始まった。わざわざ藤吉が出かけたことを糸井さんが知らせに来てくれた時だった。


「すいませーん。いと...いと...伊藤さーん。ちょっと教えて欲しいことがアルネー。って誰アルか?その超キレイなお姉さんは」


「か、神楽様!なぜここに!?」


「なぜって伊藤さんを追ってきたアル」


「神楽?」


サーモンピンク色の髪を左右でお団子にした可愛らしい女の子が糸井さんを追いかけて来た。糸井さんが前に話してくれた神楽さんはもしかしたら彼女なのかもしれない。そう思ったら話しかけていた。


「あなたもしかして銀時のところにいる...」


「ん?銀ちゃん知ってるアルか?私は神楽ネ!万事屋銀ちゃんの工場長アル!」


そう言って彼女はニカッと笑った。私と違って幸せそうに笑う彼女にどこか私は安心した。もう、大丈夫なんだと。私が守らなくても、生きていてくれる。


「そっか...。銀時は今元気なんだね…。私がいなくても、もう大丈夫なんだね…」


「お前どうしたアルか?」


目から涙が零れた。神楽ちゃんが心配して近づいてくるのがわかっていたけど、溢れてくる涙が止まらない。


「お嬢様...」


糸井さんが呆然と立ち尽くす。この場には私の啜り泣く声だけが響いていた。





暫くして泣き止んだ私は神楽ちゃんに銀時のことを話した。


「じゃあ銀ちゃんとは幼馴染みアルか?」


「んー...幼馴染みとは違うかな?銀時に拾われて、仲間として、妹として一緒にいたから…。剣も銀時から教えてもらったし…。兄弟子?かな...」


「兄弟子?師匠じゃなくてアルか?だって銀ちゃん言ってたアルヨ。同じ師匠に先に教えてもらってる人のことだって。なのになんでアルか?」


神楽ちゃんが純粋な瞳で私を見てくる。私にはこんなふうに彼女達を見れなかった。だからこそ、神楽ちゃんが羨ましく、微笑ましい。そんな感情を与えてくれた銀時達に感謝している。


「銀時がね、『俺には師匠なんて似合わねぇし、そんなタマでもねぇ。バカなお前の、バカな兄弟子で十分だ』ってね。そう言ったの。だからそれでいいの」


「...、千ちゃんってもしかして…」


「ん?」


「銀ちゃんのこと好きアルか!」


「...。えっ!?」


神楽ちゃんの言葉を聞いた瞬間、ポカンとしてしまった。けど理解した瞬間に顔に熱が集まる。それに比例して神楽ちゃんの目の輝きは増していく。


「好き...とか...。そういうんじゃないし...。別に...」


「別に隠さなくてもいいアルよ〜」


ニヤニヤ顔で言われてなんとなく拗ねてみたくなった。


「うるさいよ...」


そんな他愛もない会話をしていたときだった。


「...!何か声が聞こえるアル」


「え...。ちょっと!神楽ちゃんっ!?」


夜兎だからだろうか。常人なら決して聞こえることのない距離での話し声を拾った彼女は、いきなり立ち上がったと思ったら、猛ダッシュで駆け出した。嫌な予感がする。私の中の血が頭の中で警鐘を鳴らす。それでも今の銀時が見つけた幸せを壊させる訳にはいかない。頭が痛みを訴えているが関係ない。痛みを無視して私も神楽ちゃんのあとを追って走り始めた。だけど、相手は夜兎族。一度離されたら追いつくのは難しい。しかも私は最低限の動きしかできないように、重く動きづらい着物を着させらていた。やっとの思いで神楽ちゃんの近くまで来た時だった。


「神楽ちゃんっ!!」


「チャイナっ!!」


聞いたことのない男の子の声が2つ聞こえた。1人は神楽ちゃんと、もう1人は恐らく神楽ちゃんのことだろうチャイナと呼んでいた。焦っているような声だったから彼女に何かあったのは間違いない。着物が着崩れようが関係ないと走った。


「藤吉様...何をしていらっしゃるんですか…」


角を曲がって見えた光景に、声が震えた。

藤吉の側近であり、護衛の克斗《こくと》が神楽ちゃんの首を思いっきり締め上げていた。


「何って千姫。この天人の小娘がうるさく喚いていたから、少々説教をしただけだよ」


その瞬間、自分の中の何かが急速に冷めていくのを感じた。同時に動くことなんてほとんどない感情が昂る。


「克斗。神楽を離せ」


「すまんが千姫様、俺は主である藤吉様にしか従わない」


「いいから離せ」


「千姫。何を言っても無駄だぞ...っ!!」


「離しなさい。克斗」


「っ!!」


いつまでも神楽を締め上げている克斗に、ほんの少しだけ殺気を当てる。藤吉はもちろん、克斗までも怯む。今まで殺気なんて欠片もみせなかった、しかも下に見ていた女がいきなり殺気を向けてきたのだ、怯まないはずがない。


「神楽ちゃん!しっかりして!」


殺気に慣れていたのか、後ろの2人(特に茶髪の子)は驚きはしたものの、すぐに動き出した。茶髪の子が私と克斗の間に入り、神楽を掴んでいる腕を狙い刀を振るう。克斗はすぐさま避けるが、神楽を離してしまう。それを見越していたのか続け様に刀をまた振るう。それと同時に眼鏡の子が神楽を抱きとめる。


「神楽ちゃんっ!聞こえてる!?」


必死に神楽を呼ぶ。茶髪の子も視線こそ向けないが、気にしているのか少しずつ攻撃の手が緩んでいく。それを克斗が見逃すはずもなく、反撃に出始めた。


「...チッ」


茶髪の子はそれなりに修羅場を潜っているようで、少しなら持ちこたえられるだろう。先に眼鏡の子を落ち着かせるために2人に近寄る。


「神楽ちゃん!!」


必死に名前を呼び、肩を揺さぶる。眼鏡の子の手首を掴み、その行為を止めさせる。神楽の口元に手を当て、次に首筋に当てる。

「落ち着いて。...大丈夫、息も脈もある。気を失ってるだけみたい」


「ホントですか...」


「えぇ」


「よかった...」


眼鏡の子に神楽の状態を伝えると、次第に落ち着いていった。





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