えるそこばなし

しらす
@Shalsh_Noir

それはただの後悔の独白


「ゾフィ!」

鈴を転がしたような弾む声で俺を呼ぶのは、愛しの彼女。


「なんだよ」

めんどくさそうに返すけれど、その実心では浮かれていた。

「うふふ、なーんでもない」

そういってにこにこと笑う彼女が、ソフィアが俺は好きだった。



ソフィアと出会ったのは、俺がまだ弱かったころだ。

ハーメル地方の凍りついた水の神殿で出会った。

「あなた、太陽みたいね」

そういって彼女は俺に笑いかけた。

その笑顔の方が太陽みたいだ、なんて俺は思った。


知り合ってからは関係が進むのは早かった。

柄にもなくデートに誘い、たまに共闘して腕試しにトーナメントに参加したり。

ソフィアは槍の使い手でそれは美しい槍捌きを見せていた。

黒の長い髪が美しくて、動くたびに揺れる髪、そしてよく映える簪。それについつい見惚れてしまう俺はソフィアに勝てた試しがなかった。


月夜が綺麗な夜に俺はソフィアに呼ばれて部屋に行ったときの高揚は今思い出しても顔が赤くなる。

引き締まった身体なのに柔らかそうな四肢はひどく扇情的で。

俺はソフィアに夢中だった。


それでも俺はソフィアに唯一許さなかったことがある。

“楔”だ。

俺と相手を結びつけるそれは、俺が認めた相手に打つものだ。

それと同時に相手と俺には楔を打ち込んだ証として紋様が浮かび上がる。

俺のは顔に、相手には手の甲に。


これだけはソフィアには許さなかった。

なぜかはわからない。


「ゾフィ、どうして私に大事なソレをあずけてくれないの?」

「・・・さあな」


この件で言い合いになったことがある。

それでも俺はソフィアに楔を打たなかったし、だけれどもソフィアが好きだった。



ソフィアがどうなったかって?

・・・死んだんだ。



ソフィアがある日、誰かと密に話をしているのを俺は聞いてしまった。

「お任せ下さい。ええ、彼は私をとっても気に入っております。

あとは私を主人として認めてもらえれば、あとは彼は私の思うまま。

かの兵器は我ら一族のものになりましょう。

そのために、この身をあの化物に何度も穢されているのですから」


なあ、ソフィアの言ってる意味があんたにはわかるか?


俺は瞬時に理解した。

俺は騙されていたんだって。


それでも俺は、ソフィアが好きだった。



「ゾフィ」

ソフィアのあの可憐な声で俺の名前が紡がれるのが好きだった。

「なんでもないの」

ソフィアの黒髪が揺れて簪が音を奏でるのが好きだった。

「うふふ、ゾフィは素敵ね」

ソフィアの花が綻んだ様な微笑んだ顔が好きだった。

「だいすきよ」

ソフィアの。ソフィアのソフィアのソフィアの・・・・・・。



ぷつりと、その時俺の中で何かが切れたんだ。

俺は話している最中のソフィアに歩み寄った。


「ゾフィ・・・?どうして、ここに」

白々しいな、と。

それでも俺はソフィアが好きだった。


「何の話をしてたんだ?」

俺は問うた。

ソフィアの話している相手は・・・・・・。



ああ、魔族じゃないか。



「魔族は、殺す」

俺はドライヴに命令を下す。

「それが、俺の存在意義だ」

ドライヴの解析を見る。


ああ、なんだ。

あの女も魔族じゃないか。


「ドライヴ・・・インストール、アルティメット・・・フューリー」

淡々と指示を告げる。



「や、やめて・・・!ゾフィ、どうして・・・」

命乞いをする女。

おまえら魔族は人を殺すときに。

人が家畜を殺すときに。


命乞いなんて、聞いたことがあったか?




それでも、俺は。

ソフィアが好きだったんだよ。


彼女の血に塗れた簪にキスを落として

俺はただ静かに泣いた。