えるそこばなし

しらす( 'o' ∋ )))ミ
@Shalsh_Noir

さみしがりのばけものの話


「やあ、姉貴。・・・久しぶり」


火山地帯の深いところ。

大地の裂け目。


シャルシュは自身の姉と対峙していた。


いつか見た気がする結末は共倒れだった。

何故か何度も繰り返している、そんな気がする。


「ああ、見つかってしまったか。久しいな」

「・・・声を聞いたのはもっと久しぶりかな」


レオーネに向かって微笑みかけるシャルシュ。

だけれどもこれから起こることを彼はなんとなく感じ取っていた。


殺される。

自分はいまから、この異形になりつつある姉に殺されるのだ。


とはいえ。

彼はそっと彼女のことを思い浮かべる。


黒髪で控えめな性格の彼女を。


「なあ、シャルシュ。私はずっと寂しかった」

レオーネが剣を構えてそう告げる。

「じゃあどうして俺から逃げたの」

シャルシュはまだ武器を抜かない。

「・・・シャルシュが、私とともに堕ちるのをやめたから」

レオーネの瞳が少しだけ陰る。

「私はどうせ助からない。だから、最初はおまえを悲しませたくなかった」

だけど、とレオーネは続ける。


「それは私にとって間違っていた。ばけものになる前に死にたかった。

だけれど、ひとりで死ぬのはさみしくてさみしくてどうかしてしまいそうだった」

レオーネは剣の切っ先をシャルシュへ向ける。


「だから、私に殺されてくれ。一緒に死のう?シャルシュ!!」

レオーネはそのまま腰を落として一気にシャルシュへ突っ込んでくる。

「・・・くっ」

シャルシュは即座に剣を抜いてそれに応戦する。

「俺、ごめん死ねない・・・!」

にぶい金属の音がしてシャルシュはなんとか弾き返す。


「姉貴、俺・・・死ねない。このまま死ぬには少し後悔が残るんだ」

シャルシュのハッキリとした拒絶にレオーネは目を見開いた。

「どうして・・・?今までずっとおまえは私のために生きてきたじゃないか」

レオーネがゆらりと揺れてまたシャルシュに飛びかかる。

それを受け止め、反動に呻くシャルシュ。

「ぐ・・・う・・・っ!・・・そうだけど、そうなんだけど・・・!俺、他に大事な人ができたんだ!」

シャルシュのほぼ叫びに近いその言葉はレオーネの頭の中をぐるぐるとかき回した。


「・・・おまえは・・・!私のものだろう・・・!!」

「俺は、誰のものでも・・・!」

段々押し負けていくシャルシュ。

その横を掠めてレオーネに向かって、黒いトゲが飛んだ。

「っ!?」

レオーネは咄嗟にそれを払い除け、バックステップで距離をとる。


「今の・・・まさか・・・」

シャルシュが驚きに目を見開いて後ろを振り返る。

それより先にレオーネが地を蹴った。


「スオウ・・・っ」

シャルシュがその名を呼ぶが、彼女には届かない。

彼女はただ迫ってくるレオーネに恐れを見せていた。


レオーネが払いのけるようにスオウを殴りつける。

「あぐ・・・っ」

スオウはいともたやすく吹き飛び、地に伏せる。

「スオウ!逃げて・・・!」

シャルシュの叫びも虚しく、スオウは恐怖に足がすくんで動けない。


「おまえは・・・なんだ?」

レオーネがスオウの首を掴み、持ち上げる。

「うぁ・・・あ・・・っ」

苦しそうに呻くスオウ、ぱくぱくと口を動かし呼吸をしようとする。

「おまえは・・・シャルシュのなんなんだ?・・・いや問わずともわかるか、おまえがシャルシュの後悔か」

ぐい、と顔を近づけるレオーネ。

「おまえを殺せばシャルシュは私のところに帰ってくるな?」

レオーネの落ち着いた声にスオウは、ひっと息を呑んだ。


「さ、せるかよ・・・!!!」

レオーネの顔面を横殴りにするように爆発のルーンがぶち当たり、発火する。

「ぐ・・・っ」

レオーネが呻き、手が緩んだスキにシャルシュはレオーネからスオウを引き剥がし自らの背に隠した。

げほげほと咳き込んで酸素を取り入れようとするスオウに小さくごめんと呟いて、シャルシュはレオーネを睨みつける。


「姉貴の目的は俺だろ・・・!スオウが可愛いからってよそ見してんなよ・・・!」

片手でスオウをかばうようにし、剣をレオーネに向けて。

「こんな脆弱な奴を庇うのか?おまえも守れるほど強くないだろう」

レオーネがシャルシュにやれやれ、と言うようにため息を吐く。

「それでも守るって決めたんだ・・・!スオウには生きて、生きて幸せになってもらうんだからな・・・ッ!」

シャルシュの答えにレオーネは少し顔を歪める。


「私の幸せを願ってはくれないのに、そいつの幸せは願うのか」

そう呟いて、いや、と頭を横に振る。

「なら、守りきって死ね。守りきらねば諸共殺す。

だがシャルシュは渡さない、おまえは私のものだ!!」

レオーネが接近、剣を振り下ろす。

それをシャルシュは受け止めて、弾き返す。


「スオウ、有難う。助けてくれて」

そういって彼はにこ、とスオウに笑いかけた。


「本当に、姉貴はさみしがりなんだから」

シャルシュもルーン魔法を使って牽制しながらレオーネに向かって斬りかかっていく。

恐怖に腰が抜けたスオウは、それでも。

「しゃ、シャルシュさん・・・たすけなきゃ・・・」

震える手で、狙いを定めようとするが、恐怖のあまりそれ以上なにも動けない。


シャルシュはレオーネから放たれる魔気の斬撃をくらい、血を吹き出した。

それでも彼は立つ。

レオーネは笑って、スオウへ向かって魔気を飛ばす。

シャルシュはスオウとレオーネの間に割り行ってルーンを描いた。

彼の渾身のルーン魔法。

色とりどりのルーンが踊る、綺麗な・・・魔法。


レオーネは魔気を込めた剣でそれをいとも容易く引き裂いた。

そのままその切っ先は。

シャルシュを貫通した。


スオウは自身の体から血の気が引くのを感じた。

「あ・・・あぁ・・・」

目の前で、よく見知った彼が。

いつも頼もしく、少し遠くに見えてた背中が。

真っ赤に染まって。そのまま倒れた。

スオウの顔に血がぱたぱたとはねる。


ただ、意外だったのは。

刺した張本人であるレオーネもまた、絶望に濡れた顔をしていたことだろうか。


剣をずるずるを引きずるようにしながら、レオーネはスオウの方へ歩いていく。

それがたまらなく恐怖を煽っていて、レオーネの空虚を宿した瞳と目が合ってしまったスオウは逃げることさえ叶わない。


「シャルシュ・・・シャルシュ・・・ああ、どうして・・・こんなやつを庇って・・・」

ぶつぶつと何かを唱えるように。

「ああ、そうだよ・・・」

レオーネはスオウに向かって魔気の斬撃を放つ。


「ぁああ゛あ゛っ!!」

身体を切り刻まれて、血がぼたぼたと垂れる。

痛みにスオウは叫び声をあげた。


「おまえが・・・いなければ・・・!おまえがいるから・・・!シャルシュは・・・!シャルシュはぁああああっ!!!」

レオーネの激昂にスオウは視界が滲む。


前にも言われたその言葉。

「俺さえ・・・いなければ・・・?」

ぼたぼたと溢れる涙はスオウの表情を絶望に染め上げる。


「ああ・・・あ・・・ご、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!」

泣き叫ぶスオウをレオーネは蹴飛ばした。

「あぐっ・・・」

レオーネは軽くだったのだろうが、それでもスオウには十分すぎるほどの暴力。

鼻から血が流れる。

その血に黒いヘニルも混ざって、より一層スオウの恐怖を駆り立てた。


「ご、ごめんなさい・・・しゃる、しゅ・・・さ・・・!逃げる勇気もなく、て・・・俺・・・ごめんなさい・・・っ」

スオウの視線は悲しげに目をうつろにさせたままのシャルシュ。

もう動かない、彼。


レオーネがからからと剣を引きずる音に身を強ばらせる。

「あ・・・あう・・・、ごめん、なさい・・・」

レオーネの足がスオウの視界に映る。

ヒュッと剣を振り上げる音に目をぎゅうっと瞑る。

「ごめん、なさい・・・!あなたのシャルシュさん、取って、ごめん、なさい・・・!」


スオウは身をこわばらせていたが、来るであろう痛みはいつまでも降ってこなかった。

それどころか。

がらん、と音をたててレオーネの剣がスオウの目の前に落ちたのだ。


「あやまったところで・・・もう遅い・・・」

レオーネが崩れ落ちる。

「シャルシュは・・・死んだんだ・・・!私を、残して・・・おまえに心があるまま・・・!死んだんだ・・・!」

レオーネの瞳からぽたぽたと熱い感情が流れていく。

「シャルシュは私のものじゃない、私が自らシャルシュから逃げたんだ、おまえが・・・奪ったんじゃない・・・」

レオーネがスオウの方へ涙で濡れた顔を向ける。

「私が、シャルシュをこの世界から奪ってしまった・・・!」

そのままレオーネの顔が歪み、泣き叫ぶ。


スオウもその言葉に。彼が死んだことの現実味を感じたからか。

それとも痛みにか、彼女の嘆きにか。

ただただ涙をぽろぽろと零していく。


レオーネが横たわったままのシャルシュに手を伸ばす。

その顔に触れて、そっと瞼を閉じさせ。ぎゅうと抱きしめた。

「つめたい・・・つめたいよ・・・シャルシュぅ・・・」


スオウはぽろぽろ泣きながら、シャルシュの言葉を思い返していた。

「シャルシュ、さん・・・幸せって・・・なんなんですか・・・・・・」

そんなの知らないんだよ。


「ああ・・・おまえがいなくなってしまえば・・・私はどうやってこのさみしさを埋めたらいいんだ?

シャルシュ、ねえ。シャルシュ」

レオーネが何度も何度もシャルシュを抱きながら名前を呼ぶ。


だが奪われた彼は、返事など返すこともなく。

さみしがりのばけものは、そのさみしさを募らせ。

涙はいつ乾くのかわからない。




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