えるそこばなし

しらす( 'o' ∋ )))ミ
@Shalsh_Noir

黒と白

俺が自我をもったのは、切り離されてから随分と経ってからだったように思う。


シャルシュ・ホワイティアは姉を救うために同じ道を歩もうとしてダークエルに手を出した。

それがお互いに破滅の道と知っていながらも。

決心がついたのか、それとも?

今更俺を切り離した意味は、俺にはわからない。


もう必要ないのだろうか。

俺は、あいつを破滅させる気はなかった。

でもあいつの姉の力は別だ。

俺は…必要ないのだろうか。



そんなことを悩みながら。

自身の存在意義を悩みながら。

ああ、悩むだなんてなんて人間らしいのか。


とりあえず、会いにいこう。

俺も「シャルシュ」であいつも「シャルシュ」

同じ時空に同じ存在がふたつは有り得ないから、きっと俺はあいつに会えば消えてしまう。


せっかく持てた自我も

せっかく持てた身体も

解けて崩れ去るだろう。


だが、あったとて何の意味がある?

自分の存在意義がわからない現状で、そんなものに執着していてなんになるのだろう。


俺は捜した。

彷徨って、時には空中に漂って。

だんだんと保てなくなる身体、苦しくなる身体。

ああ、身体というのはなんて不便な……。

そのまま蹲って胸を押さえる。

くるしい、くるしい…呼吸が、くるしい。

呼吸をする度に空気中の力が流れて混ざって、またくるしい。


(……!)

なにかが、聞こえた。

誰かが、泣いている。


声のする方へ向かう。

「だめよ、ここで立ち止まったら…!」

小さいアレは…たしかミスティックというのだったか。

綺麗な人が水辺に倒れていた。


「泣いていたのは、貴女か」

ゆっくりと彼女の方へ歩く。

(え……?)

「泣いていたろう、痛いって。怪我してるのか?見せてみろ」

「ルアネに近付かないで!!」

彼女のもとへ歩みを進めると、ミスティックが間に入って遮ってきた。


「……手当をしたいだけだ」

「アナタみたいな混ざった黒いヤツ、信用ならないわ!」

警戒されている。

まあそれも仕方ないだろう。


(あ、あの……)

「ん?」

(私の声…聞こえるの…?)

おかしなことを彼女は訪ねてきた。

ああ、そうか。音がなければ人間には聞こえないからか。


「人は音に頼ってコミュニケーションを図ろうとするからいけない。俺には貴女の声、ちゃんと聞こえるよ」

「ルアネの声が聞こえるの…!?」

「俺はシャルシュ。……分け合って肉体がない身だ。手当だけ、させてもらえないだろうか。流石に見過ごせない。彼女が危ないと思ったら、遠慮なくココを撃ち抜いてくれ、そうしたら俺は霧散して暫く元に戻らないから」

そういって、胸の位置にある混沌の穴を見せる。

核だ。コレを中心に俺の力が集まって俺が形成されている。


「……なにかしたら問答無用で撃つわ」

「それで構わない」


ミスティックは俺に標準を定めたまま、道を開けた。

しゃがんで彼女の様子を伺う。

「見せてみろ」

(えっと……)

彼女が指さしたのは、彼女の尾ひれ。

焼けただれている。


(あ、でも待って…触られたら私熱いの…!)

そうか、彼女は人魚か。

「俺には実態はない。体温もないんだ」

俺は服の裾を細く破り、池で洗う。

「簡易的なことしか出来ないから、ちゃんと治療はするんだ。いいね?」

包帯替わりにしてそっと巻いてやる。おぼろげな「シャルシュ」の記憶を辿ってとても弱い「氷のルーン」を包帯に書いてやる。これで少しは冷えるはずだ。


「ご飯は…何を食べるんだ?木の実くらいならとってこれるぞ」

そういって手を差し伸べる。

彼女はおどおどとしながら手をとってくれた。


手をとったときに俺の中が綺麗な風が吹き抜けたような感覚を覚えた。

身体が、安定している。力が、安定している。


俺は周りの力を取り込む性質のモノだ。

彼女も周りの力を取り込んで…おそらくは浄化するのだろう。

その浄化のエネルギーを俺が取り込んだようだ。


そのまま手を握っていたら、案の定ミスティックに撃たれて俺は霧散した。




「ひどいな、ただ手を握っていただけなのに」

「握り過ぎなのよ!」

元に戻ってから、彼女とミスティックと少し他愛ない会話をした。


会話というのは楽しい。

冗談も言えるし、彼女の容姿を褒めることも出来る。

因みに彼女の流した涙は宝石になったのだが、それを食べるとひどく安定した。

彼女の力で安定したのは何故だろう?


まて、今俺は楽しいと思ったのか。

そうか。きっと彼女の特性は……。


「さて、俺はそろそろいくよ」

「ふん!とっととどこかいってしまいなさい!」

(わいん、そんな言い方しちゃだめだよ…)

邪険にされるのにも慣れたから俺はクスクスと笑った。

(えっと、ありがとう)

「いや、俺のほうこそ感謝を」

俺が微笑んで礼を言うと彼女はキョトンとした。

「お礼に、なればいいけれど」

俺の中の力を濾過して濾過して、なるべく綺麗なものを取り出す。

彼女の首にルーンを印す。


「ルアネガッサ。貴女に幸多からんことを」

(え……?)

「貴女の透き通る音で紡がれた言の葉は花咲き、実り、また巡ることでしょう」

俺は目を閉じる。彼女の言う想い人はどんな素敵なヤツなんだろう。

俺は見れなかった、彼女の花弁が綻ぶような笑顔を想像してみる。

なんだか寂しくてだけれども彼女の幸せを願って。


「声が出るように、っておまじないだ。描いたルーンも悪いものじゃないし、俺が拾ってきた力の中でも綺麗なのを選んで使った」

「次変なことしたら本気で撃つわよ!」

「はは、霧散するのはなかなかに怖いから遠慮したいな」

彼女は変わらずキョトンとしている。

「きっと今まで相当な苦しみがあったろうから、これからは幸せにな」


そう告げてふわりと地面を蹴って宙へ浮かぶ。


「それでは。縁があればまた会おう、美しい方」

(ありがとう、あなたにも幸せが訪れますよう)

そのまま漂って離れて……。


それでおしまいだった。

別れのなんて呆気ないことか。


涙が出た。

理解したのだ。


充実した時間だった。

誰かの為に、力を使うことが。


「俺は、姉貴のための力だったな」

涙がほろりと零れた。

俺を乱して不安定にさせていたのは俺自身の感情だったのだ。


ルアネのために行動したことで俺の力の揺らぎが収まり

ルアネの浄化の力で俺の不安な心が穏やかになり

ルアネのために行使した力で俺に充足が与えられた。


あいつに会うまでは、出会った縁のために生きよう。

あいつのために俺は生きよう。


長い髪をまとめて結ぶ。

ここからまた新たに始めよう。

そのためにはあいつとは違う名前がほしい。


そうだ、あいつはホワイティアなのだから……


「シャルシュ・ノワール」

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