ヨンハクエスト後編・展開する運命の勇者

アッカ
@zuboranaAKKA

おまけ話・その頃の三人ともう一羽

永夏達が緒方に襲われ危機に陥っていた頃。


空飛ぶ絨毯も無く和谷も掴まらない。緒方の奇襲を受けているであろう永夏達の為、急いで山荘に戻ろうとしたまん丸ヒカルは、今度は加賀を呼び出そうとした。

「 かあーが!こっち来 」

「 ヒカル!あの巨体をここに呼ぶのですか!山が壊れてしまいますよ! 」

確かにそうだとヒカルは思い直した。しかもあの加賀ならば緒方を見付けた次の瞬間、問答無用で永夏達ごと火炎で焼き尽くすかもしれない。山火事必至の大惨事、そうなるともう悪魔騒ぎ所では無い。

空が急速に曇り始めた。轟き始めた遠雷と共に稲光が真横に走る。西の空が妖しく瞬く様に光り出した。

「 ごめぇーん! 間違い来なくていいよっ! 」

・・・・・・次第に暗雲は遠ざかっていく。

「 んじゃあ伊角さんを! 」

「 伊角さんは和谷といると思います絶対に掴まりませんから! 」

「 じゃあどうしよう!あいつらきっと大人しく家の中にいないよ!早く戻らないと! 」

ヒカルと社が青くなり駆け足で戻ろうとしたが、佐為は周囲に目を凝らし始めている。

「 そうか、私よりもここに住む精霊の方が断然早い 」

「 何の話? 」

「 社、この山にいる精霊にここと山荘が繋がる穴を聞き出してください 」

「 へ、穴ぁ? 」

「 あるのですよ、遠い場所と場所を繋げる事が出来る見えない穴が 」

「 分かった! 」

社が精霊にその場所を見付けて貰うと、今度は佐為がその穴を繋げて道を作った。

「 ヒカル! 」

「 オッシャア!行っくどおおっ! 」

女の子の愛らしい声で逞しく掛け声を上げると、まん丸ヒカルはポッカリ空いた穴にドレスの裾を跳ねらせ飛び込んで行った。

「 さて私達も行きましょうか 」

「 お、おう 」

社は異空間を通るのは初めてだ、どきどきが止まらないでいる。恐る恐る片足を一歩、爪先から穴の中に入れようとして、鳥の羽ばたきの音に気付き振り向いた。

「 あ、あれ! 」

社が指差す方向からオウムの太善が飛んできた。

「 キタ! アクマ!マタ!タスケテ! 」

太善は永夏達の危機を佐為達に知らせに飛んで来てくれたのだ。

「 太善さんありがとう、あなたも一緒に行きましょう 」

佐為が差し出した右腕に太善は留まった。翼を閉じた太善を見て佐為は永夏を思った。

永夏は佐為に対して、今一歩信用が持てないでいた。なので佐為が太善の世話をするのを嫌がり、太善が佐為の肩に乗ると直ぐに引き離していた。

永夏の抱く不信感に佐為は気付いていた。今までの経緯を思えば当然だろうと思ってもいた。だが今はきっと切なる想いで、自分が来るのを待っているのだろう。

しかし佐為は緒方と直接対決するつもりは無かった。

佐為と緒方、稀なる実力者が正面から対決となれば、国の一つ二つと消える覚悟が必要だ。・・・・・・もう二度と自分は彼と戦うつもりはない。

大丈夫、あの子は自分が育てた愛弟子が救う。運命に導かれし子らが星の愛護者を守る。

「 ヨッシャアア!気合ぃ入れたるぅぅ! 」

自分の顔をバシバシ叩くと社はヒカルに続いてずんずん穴の中に入っていった。佐為と太善も穴の中に入る。入ると同時にこちら側の穴は閉じてしまった。


「 おじ様!おじ様!大好きな緒方のおじ様ぁあ!」

「 うわあああっっ!!」

佐為と社、太善が出口側に辿り着いた。山荘の門に近い絶妙の場所、丁度緒方がまん丸ヒカルに飛び付かれて悲鳴を上げている所だった。

それは予想以上の展開となっていた。

着くなり佐為と社は腰砕けとなり、地面に両手と膝を突いてしまった。緒形の喘ぐ声が聴こえる度に俯く二人は肩をぶるぶる震わせる。そのままの体勢を保ちつつ必死に笑いを堪えていた。

「 アー、ダメダナアコリャ、キュイキュイキュイーン! 」


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