ひとめぐり

あすみ@夢垢
@spica464ka

ひとめぐり

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「いいんだな、心操」

 先生の言葉に俺は頷く。

「むしろ俺がこの役でよかったです」

 先生は佐倉を見つめながら離さない。佐倉の個性は見事に封じられていた。制限時間は15分。先生の限界はそれぐらいらしい。ただ、瞬きの瞬間は佐倉に吸い取られる。それも微々たるものだ。気にしない。佐倉だって許してくれるだろう。

 佐倉は植物に対しても有効ということは出来るだけ多い場所に連れて行かねばならない。だが、ただ15分で行ける距離は限られている。

「場所はもう決めてるんだな?」

 先生の問いに俺は笑った。

「ええ、佐倉とよく行ってます」

 雄英は広い。だから、行ける距離でかつ植物の多い所と言ったらあそこしかない。

「じゃあ、行くぞ」

「はい!」

 俺たちは駆けだす。佐倉は眠ったままだ。もしかしたら佐倉の個性の発言時間も限られてくるかもしれない。そう思うと足は止まらない。

 俺はこれまでの佐倉がフラッシュバックのように蘇っていた。

 茶化すときの顔、本当に笑た時の顔、拗ねている時の顔、泣いている時の顔。そのいつだって俺の名前を呼んだ。だから俺もお前の名前を呼ぶよ。何度も、何度も。

 ――間に合え!

 校舎を出るとまっすぐにその場所に駆けていく。

 佐倉との思い出ではそこが一番印象的だった。

 いつもそこで何かが起こって、何かが収束した。だから、縁があるのかもしれない。

 考えに耽って転びそうになる。すると先生から激が飛ぶ。

「集中しろ!」

「すみません!」

 佐倉がまぶしく光る。その瞬間体力がごっそりと奪われた。だが、歩みは止めない。

 どんなことがあってもあの場所へ行くんだ。そうすれば佐倉も文句は言わない。人の命は奪わない。

 二十秒ごとのそれは俺の体力を持っていくが、俺は引きずってでも佐倉を運び続けた。

 途中意識が飛びそうになるが、唇を噛んで耐えた。

 そうしてたどり着いたのはいつもの桜並木。ここなら元気な木が群生してて生命力を奪いやすいだろう。俺は中心であろう場所に佐倉を降ろした。

 そして、佐倉から離れる。先生が言う。

「やめるぞ、いいな?」

「はい」

 先生はゆっくりと目を閉じた。

 息を飲む。

 すると佐倉は光らなかった。俺は目を見開いた。

 思わず佐倉に駆け寄る。

「佐倉!」

 嘘だろう。ここまで来て終わりなんて絶対に嫌だ。よく見るとリングが黒ずんで表示が零になっている。俺は青ざめた。

「佐倉!」

 個性を使って消費したのだろうか。ならば、もう少し早く気付いていれば助けられたかもしれないのに。だが、俺は諦めきれなかった。

 だから俺はあらん限りの声で佐倉に叫んだ。

「俺と一緒にヒーローになるんだろう? だったら根性みせろ!」

 すると佐倉はうっすらと瞳を開けた。リングを見てみると表示は一に戻っていた。それに安堵しつつも最後の最後まで自分を貫く馬鹿に呆れた。

「しん、そうくん?」

「ああ、個性を使ってみろ、教室でやったみたいに」

「でも……」

「いいから」

 朦朧としているのだろう。佐倉は言われた通りに個性を発動させた。

 まばゆい光が発せられる。俺は光に目がくらんだ。

 光は周りの木を覆い桜の木はざわめいた。

 風もないのにざわめいて木の葉が揺れる。

 そして何度も桜が咲き、散っていく。

 ひとめぐりを何度も繰り返して桜は散っていく。

 降り積もるように桜ノ雨は降り続いた。

 思わず息を飲む光景だった。美しくて幻想的で桜の花びらが光り輝いて落ちてくる。

 佐倉も意識が戻ってきたようで、目を白黒させている。

「きれい」

 佐倉のリングを見ると驚くべき速さで数字が増えていった。

 佐倉も気が付いたようでこちらを見て微笑む。

 俺は思わず、泣き出しそうになって、潤む目を拭った。桜の木は次第に光を失っていき最後には真っ黒な枯れ木になった。もう、この美しかった桜並木を見ることは出来ないだろう。けれど、この桜の木たちは佐倉を救ってくれた。

 光を発していた佐倉も次第に落ち着いて、自然と落ち着いた。

 俺は思わず抱きつく。

 佐倉は驚いて少し固まったけれど、すぐにクスリと笑って背中に手を回してきた。

「心操くん、泣き虫になったね」

「うるさい馬鹿」

「えへへ、でも、これで私もヒーローになれるのかな?」

 リングの表示はキャパオーバーなのかずっと数字が上がっていくだけだった。

「なれるさ、俺たちは勝ち取ったんだ」

 佐倉が背中にまわした手を俺の頬に触れる。

 そしてゆっくりと顔が近づいてきて唇に触れた。

 俺は一瞬何をされたのかわからなくて、固まったけれど、すぐに笑った。

「普通、男からするものじゃないか?」

「たまには私からでもいいでしょ?」

 赤らんだ顔が彼女の感情を伝えてきた。思わず俺は彼女の唇を奪う。

 何度も何度も、息をする暇もなくついばむ。

 佐倉は戸惑いつつも俺を受け入れた。

 そして笑いあう。

 指を絡ませて、お互いを感じ合って、これからも生きていく。

 そして、俺たちの新しいひとめぐりが始まるのだ。


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深夜の夢小説60分一本勝負にて書きました。