星の召使さま

沙羅/和葉@KOM四回目行ってきた。
@aobiyori_sara

星からの贈り物


「雪乃お嬢様!今日のおやつは、宮子(みこ)の自信作です!」


 目をキラキラと輝かせ、自信満々に言い切った新米の和風メイド。

 雪乃は彼女の勢いにぽかんとしながら、机の上に視線を移した。

 テーブルの上に並ぶ星の形をしたクッキー。

 薄い茶色と濃い茶色のマーブル模様。

 小さく砕いたチョコレートが混ぜられた濃い茶色。

 余計な味付けは要らない。素朴な物が一番良いと主張する、薄い茶色。

 三種類のクッキーが、天秤の小皿に均等に並べられて、テーブルのど真ん中を陣取っている。

 小皿に乗りきれなかったクッキーは、天秤の傍らにある大皿に、一つ一つ丁寧に並べられていた。

 ひとしきりクッキーを眺めたあと、雪乃は宮子に視線を戻す。


「作って、くれたの…………?」


 恐る恐る、メイドに問いかける。

 宮子がこの家に来てから、今日で七日目。

 雪乃は、『雫(ねがい)に導かれて馳せ参じた』と告げた彼女に対し、どう接するべきか戸惑っていた。

 赤の他人。

 それも、幾光年も先にある星からやって来たという女性だ。

 怪しさのテストがあれば満点だ。

 それでも、『家族が欲しいという、雪乃の願いを叶えるため、雪乃のお世話をしたいのだ!』と、頭を下げて願う女性を、雪乃は追い返せなかった。

 そして始まった、主人とメイドの生活。

 主人の問いかけに、宮子は頬を赤く薄く染めて、はにかみながら言葉を返した。


「お誕生日に、ケーキをお作りすることが出来なかったので…………」


 宮子が初めてここに来た日。

 ご飯を炊く時に、お米をきっちり正確に計量していた。

 お味噌汁を作る時も。

 おかずの煮物を作る時も。

 しょうが焼きの生姜を削る時も。

 食後のアイスココアに入れるお砂糖も。

 宮子はきっちりと計量して、お料理を作ってくれた。

 お味噌汁の時なんか、しょうが焼きの計量に夢中になって、吹きこぼしてしまったほどだ。

 お料理が苦手なのかなと思ったけれど、彼女の作ってくれた物はどれも美味しかった。

 でも、慣れない家事でバタバタとしてしまい、ケーキにまで頭が回らなかったのだ。

 頑張っている彼女の姿を、扉の隙間から覗き見ていたから、ケーキが無くても雪乃はとても嬉しかった。


「本当はケーキを作りたかったのですが、スポンジとか生クリームとか、ケーキを作るにはまだ知識が足りず……!それに、種類もたくさんあって、お嬢様がどれが好きかとか、聞くに聞けなくて……!サプライズにしたくて……!」


「う、うん、わかった。落ち着いて、宮子」


 あわあわとしながら言葉を並び立てるメイドに、雪乃は言う。

 雪乃に宥められ、宮子は「はい」と一つ返してから、口を閉ざした。

 宮子から再びクッキーに視線を戻す。

 少しだけ焦げている部分もあるが、とても美味しそうだ。

 否。きっと美味しい。

 宮子の作るものは、どれも美味しいのだ。

 雪乃のメイドが作るものは、砂糖と塩を間違えていても、想いがたくさん詰まっているから、美味しいのだ。


「……食べていい?」


 作った本人に許可を取る。

 宮子は今日一番の笑みを見せて、深くうなずいた。


「もちろんですっ!今、お茶をご用意しますね!」


 台所へ走って行く彼女を見送ってから、雪乃は天秤の小皿に乗せられた濃い茶色のクッキーに手を伸ばした。

著作者の他の作品

ある日。失恋した神也の前に現れたのは、白真(はくま)と名乗る白狐。白真と...

悪魔の館を間借りして図書館を運営する魔女と、その館の大家の会話。