一般人なヲタクの私がハイスペック審神者に

1話目 キッカケは突然に。

二次元っていいですよね。

…いきなりなヲタ発言すみません。でも思いませんか。画面見てたら思いませんか、私は思います。大事な事なので3回言いました。


大人になればなるほど私は思います、リアル?ごめんなさい日々クソ喰らえとか思います。楽しみ?なんだよそれ。あら、口調が乱れましたわ。


まぁそれはそれとして。さておき。

冗談だったらいいのに、私は本当に霊感がある人間でございまして…。

うっ…厨二病をこじらせたか!右手が…!でも頭がおかしいわけでもなく。本当に視えてしまったり気配を感じたりなどの普通の人には見えていない世界が私にとっての当たり前。


物心着く前から私の見えてる世界はおかしかった。もちろん、私はおかしいことすら知らない。だって物凄くバカだから。今でも頭が良いとは思えないがとにかくバカだった。子供だったからというのもあるけども。


よく両親にこんなの見えるよ!なにこれ!とかまだ無垢な私は言っていたような気がする。でも両親にはもちろん見えていなくて。


それでも二次元によくあるような気味が悪いから避けられるような展開にはならなかった。むしろ、その視えることを絶対人に言うなと特に母親にキツく言われた。否定するのでもなくとにかく言うなと。お陰様で不思議ちゃんにならずに済んだ。


早い話が母親が霊感ある人間だったのだ。若い頃はかなり見えていたそうな。

今でもたまに視えるらしい。

恐らくは私は母親譲りなのだと思う。霊感家系ってわけでもないらしいし。


この歳から見えてるんなら大人になる頃には見えなくなっているだろうと思っていた。…そんな私の思いとは裏腹に私の霊感は母親とは真逆にめちゃくちゃ視えて分かるようになっていた。


(今更どうとも思わないけど。)


………相変わらず暑い。

道産子の私は今、数年ぶりに京都へと来ていた。











その日この本丸の初期刀である俺、加州清光は大変気に食わない話を聞かせられていた。今思い出してもイラついて仕方ない。お陰で内番の畑仕事もなんだか八つ当たりみたいになっている。


「僕ね、主に会ったことあるんだ〜。まぁ、あの子は僕を認識していなかったけれどもね。」


源氏の重宝、髭切が昼ご飯を皆で食べている時になんてことないように言いやがったのである。

あの時にキレなかった俺を褒めたい。というか褒めて欲しい。

ちなみにかなりの騒ぎになったが割愛。ご想像におまかせする。

安定の様子だけ言うならば、箸落として固まってから騒ぎ出した。


話によれば主は平成の時代の人間。

北野天満宮で見かけたらしい。

200年以上も前の話になるがそこに俺たちは別に驚きはしない。


審神者はこの時代には居ないのだ。平成の人間が次元が違う画面越しで動かしている。つまるところ遊び…たしかげーむという奴だ。

その画面の世界に居るのが俺たちであり、どうあっても会うことはない。


そう、そのはずなのだ。


なのにこの本丸だけはおかしな事が1つ。

ごく稀に、主だと思われる人間の想いや声が伝わってきていた。



『どうか無事で…!』


『ぎゃあああ!ごめんなさいごめんなさい!手入れします!!って資材〜!!鍛刀キャンペーン嫌いだあ゛あ゛あ゛あ゛!!即効掻き集めてきますちょっと待ってくれ!!そんなわけで第一部隊お願いします。』


『やっときやがったなコノヤロー!ありがとう!』


ガサツだけど優しい想いと声。女であるのは分かった。

1度だけなら気のせいで済むが、何度もあり何人にも伝わるならこれは主なのだろうと俺たちは考えを改めていた。


そんな本丸での髭切の発言。

…騒ぎになるのは当然であり、俺が不機嫌なのも当然だった。


だって俺、初期刀。初期刀だよ?

大事だから繰り返すけど。


なのに大分あとに来た髭切が主を知っていて、俺が知らないとか…不公平すぎる。

いや、髭切が悪いわけじゃないのはわかってる。わかってはいるけど……。


刀だけだった頃とは違い、人の身と感情を与えられている俺たち。会いたい奴に会わせてくれた。そのきっかけをくれたのがげーむであっても主なのだ。


…なんていうのは建前。

あの温かい声と想い。その持ち主の刀であることが嬉しかった。きっと俺だけじゃない。



会いたいに決まっているじゃないか。



畑仕事に八つ当たりしながらもきっちりと終わらせた。









「…はぁ、内地は相変わらず暑い。」


持参しているタオルを首に巻きながら京都の街をバスで移動していた。

水分はこまめにと水分補給もきちんとする。


(さて、まずは池田屋周辺探索と。)


スマホを取り出して行き先をチェック。

よし、今のところは順調。方向音痴の私がここまで出来るとは…!

いや、駅に着いた時に駅員さんに聞いただけです。

高校生の時の修学旅行の場所がここ、京都周辺だったのである。

奈良や大阪にも行ったが、自由行動はこの京都であった。


(相変わらず見えないし、なんというか空気が違うよな〜。)


視界が普通の人とは違う私が普通な気分になれる場所、それが京都だった。


特に神社仏閣は古ければ古いほど視えないし空気もいい。

逆に新しいのは結構視える。でも京都全体の空気が違うからやはりその点はいいと思う。


(あ。とうらぶ開いてない。)


降りて池田屋に着いてから開こうか。ながらは嫌いだし。マナーは守らないとな。決まりを破るのは嫌いだ。

多分、遠征終わってるよな。

今度はどこに…冷却材と砥石があまりにグロい数なので鍛刀をちょいちょいしつつ遠征も回している。


鍛刀強化の時なんか久々に3桁まで減ったし運なさすぎる…なんで小烏丸じゃなくて小豆さんが日にちフライングできてくれたんだべ……でも長船が残すは一振だけだし、結果オーライ。


ちなみにまだお迎えしてない短刀を目指して回しまくって2桁まで減りました。本当、運がない…


(しばらくは日課の鍛刀で残りの短刀をゲット目指す。来そうな気配はしたんだけどなぁ。)


私の本丸は2年目をようやく迎えて来年で3年目だ。不思議なことにこんなことはなかったのに彼らに想いが伝わっているような気がした。


例えば池田屋攻略。6-4-3のボスマスの時は特にビビりながら進軍していた。どうか重症になりませんようにと祈っていた。同じく7面の初ボスマス到達時全てそうである。


なんとなくだけど画面越しに伝わっている気がした。…うん、気持ち悪いよな。でも、きのせいとは思いたいのだが…確信に近いことがあったのだ。


ぶっちゃけると、とうらぶはしばらく放置していた。ポケット配信日から始めたプレイヤーです。アプリでできる日を待ってた。お陰様でじじいと小狐は最古参太刀ですありがとう。


リリース当時、大学生だった私。刀剣乱舞は歴史好きだからめちゃくちゃ興味があったけど、PCが壊れて出来なかった。出来なかった。おかげでレポートすら書けなかった。図書館に通って書く日々。あのパチモンPC許さない。


放置していたのは…いや、いち兄こなくて心折れたんです…難民だったんです…絵柄とか口調とかその他もろもろドンピシャだった。そして何より早く弟達に会わせてあげたかったのだ。

でも心折れたんです。終わり。


そんな放置していた私がやり込むゲームなんて滅多にないのにやり込み始めたきっかけ。ヒヤヒヤして絵柄綺麗過ぎる方のとうらぶアニメを見たことだった。


久々に見てたらあ、やろう。とあっさり本丸に帰りました。戦力拡充でいち兄もようやくドロップ。止めない理由もなくなった。


それからとうもののアニメを見つつコメントにて。源氏兄弟はいいぞ…源氏万歳!など多数あり、よし検非違使狩りしようと意気込んで最初は5-3。後に6-2で探し始めた。


まず膝丸が来てくれた。心折れる前に来てくれてありがとう。次が本当に長かったし膝丸にも申し訳なかったが、顕現時を私は忘れたことがない。


その日も検非違使狩り…もとい兄者探しをしていた私。

ほぼ確信に近い形であ…来るなと胸騒ぎを覚えながら思った。


この胸騒ぎとほぼ確信の予知めいた直観。これもまた私の霊感の1つ。幼い頃から悪いことの方が圧倒的に多いが外れたことがない。


いや、外れてくれなかったことがないと言うべきか。事の善し悪しも胸騒ぎの感覚で分かる。


顕現時、良い方の胸騒ぎを覚えながらも髭切は来てあげたよとタイミングを見計らって来たのが凄く分かった。絶対話しかけてた。あれ、テンプレじゃなかったらいじわるで焦らしてたよとか言ってたよ絶対。

もし髭切に会えたら腹に一発お見舞いしたい。いや、無理だろうけど。


明日は北野天満宮に再び行くつもりだ。

確かめたいことがあるし。


そんなこんなで到着。

現在、池田屋は居酒屋になっている。せっかくなので何か食べていこうと思った。

内装は調べていた通り。某乙女ゲームのファンでもある私には最高でしたありがとうございます。


座って注文を待つ間に遠征行ってもらおうとササッととうらぶを開いて操作をした。あまり画面は見られたくない。間違えて本名にしてるしな!変えたい。


アプリを閉じてその後はメニューを見たり内装を眺めて待っていた。

食事、大変美味しく頂きました。チャアも美味いからなおのこと。鶯思い出しちゃったよ。


お会計を済ませて外に出る。

この辺りを探索する予定。スマホを見て確認。カバンにしまい、新撰組縁の場所を探して歩き始めた。


お店から出たその時。

金属の欠片を地面に見つけた。


なんてことのない欠片。きっとゴミだ。

…そう思いたかった。

でも多分違う。有り得ないだろうけど…私は広い上げてハンカチを珍しく持ってきたのでそこに欠片を置いた。



(俺、ここで終わるんだな。最期まで愛されていたかな。)



………え?


流石に驚いた。

なんで清光の声が聞こえるわけ?はい?


よく感覚と視界を欠片へ集中させる。




………嘘でしょ。

有り得ないことだってわかってはいるが、とにかく落ち着ける場所に移動しようと思った。


しばらく歩くとベンチを見つけた。

とにかく落ち着け、本当かどうかもう一度確かめなくちゃ。


誰も周りには居ない。

ここの空気も他よりいい。もう一度、私は集中して欠片を自分の全てを使って確認した。




………分からなければ良かった。

なんで霊感なんてあるんだろうと思った。


池田屋事件にて加州清光は折れた。これはとうらぶプレイヤーならおそらく知っている。


…認めたくはないし有り得ない話なのも重々承知。私はこんな変なやつだがかなりの現実主義者。

それでも私はわかる類の人間。それも分かっている。



この欠片はその加州清光の一部だ。



人間もあっけなく死ぬ。

でも刀も使い方を間違えばこうなる。

なんて脆いのだろうか。

なんとも言えない気持ちに包まれた。



ハンカチを握りしめる。

一瞬、血塗れの風景が視える。暗い中、京都の街を走る人達。パキンと折れた刀。


きっと清光の記憶だーーー。


何もしてあげられない。

ごめんなさい。

貴方に声すら届かない。約立たずだ。

私は欠片を強く握りしめていた。







夕日の指す頃、自室にてらしくもなく感傷に浸っていた。

俺の本体は折れてるんだよなぁと。

今更すぎるような気がするけど。


別にその歴史を変えたいとは思わない。

それを変えたいと文句を言っていいのはその場にいた加州清光だけ。

未来から来た俺じゃない。


だからいい。

あの人は折れるまでずっと俺を使ってくれたから。愛してくれたから。刀としては本望だ。


今はあの優しい声の主に会えれば嬉しい。俺は今はあの主の刀だから。初期刀だしね。

…それにしたってなんで今こんなことを。

不思議に思っていたら声が聞こえた。


『ごめんね、清光。私、貴方に何もしてあげられない。声すら届かない。約立たずだ。いや、届いても私は口下手だし何をいえばいいのか分からない。…ごめんね、ごめん。』


あの主の声だ。思わず立ち上がった。…今までで1番ハッキリ聞こえた。

主、聞こえてる。聞こえているよ。

謝らないで。


悲痛な声だった。

自分の事のように俺を大事に思ってくれているのが伝わってきた。


『辛かったよね…貴方に意思があったかわからないけどでも、最期までいたかったよね…それでもその事実を変えたいと思えない私を許して欲しい。それまでの清光の歴史を否定したくない。』


………今までで1番強く思った。

会わせてくれ。

あの優しい人に会わせてくれ。


なんでもいい。

お願いだ。会いたい。会わせてくれ。

強く強く強く思った。



風景がいきなり変わった。







「審神者様、顔をあげてください。」


…………らしくもなく取り乱していた私に再び有り得ない声が聴こえる。


ワタシハナニモキコエテイマセン。


顔を上げずにガン無視を決め込む。

なんか狐いますね、とうらぶでよく見る狐。下を向いてても視界に入るね。キタギツネならよく見るけど京都にもこんな狐いたんだ〜(棒)



……なわけあるかあアアア!!



なんでお前いるの!?気配が狐じゃなくてなんか違うし!?マジで管狐っているのね…

審神者様〜とめちゃくちゃ煩い。

やがて背中に乗ってきやがった。


お前は猫ですか???



「…………はぁ、暑いなぁ。」


顔を上げてガン無視を続けた。

まるで視えていないかのように普通に振る舞う。

無視ですかぁ…と泣きそうな声になろうとも無視です。厄介事、もういらない。



その時だった。胸騒ぎがいきなりおこる。

あぁーーーとてつもなく嫌な予感。

善し悪しでいえばどちらだろう。いつもならなんとなく分かるのに。


ふと顔をあげた。




「……清光?」



本来ならそこに居ないし有り得ないはずの人物とふと目が合った。そして名前まで言ってしまった。

画面の向こうにいるはずの加州清光。

私の初期刀が目の前にいた。










「清光?」



あの声主と同じ声で俺を呼んでくれた女がいる。

肩までの黒髪に眼鏡。

顔は可もなく不可もなくといった感じ。

でも特徴が1つあった。


まるで雪のようだ。

健康的ではあるが色白の肌をしていた。

それ以外は地味だなと思った。


(この人が…俺を選んでくれた人……)


俺が呆然と見つめていると、彼女…いや主は俺の元へ駆け寄る。


「どうしたの。迷子?」


ハンカチを握りしめながら尋ねてきた。

……いやちょっと待って。

そのハンカチにある欠片は………。





俺本体の欠片じゃん。





「あ、いや…その……」


「まぁ、戸惑うのは分かるけどさ。こんのすけもいる訳だし、事情ゆっくり聞かせて。とにかく落ち着きな。」


「あ…主は…落ちついてるね。」


「うーん…まぁね。だって清光、泣きそうな顔してるもん。」


とりあえず座りなよ、と自分が座っていた場所を指して先に座っていた。


…あれ、俺……。

頬を水が伝う。違う、水じゃない。

俺の目から流れてる。

俺……泣いているのか。


「はいはい、早く座る。」


苦笑いをしながら主は言う。

視界が歪んで仕方ない。涙が止まらない。

……俺は言われるままに座った。



人は嬉しい時も泣く。

そんなことが確か本丸の書物に書かれていた。

本当にそうだ。


俺、思ってた以上に主に会えて嬉しかったんだ。

優しく背中を摩ってくれている。

手ぬぐいを俺に渡してくれた。俺は顔を覆う。


「事情はわかんないけどいいや。気が済むまでたくさん泣きな。泣ける時に泣いた方がいいよ。」


嬉しいという気持ちからどんどん悲しい気持ちが大きくなってきていた。

主が握る俺の欠片。

そこから伝わってくるのは彼女の記憶。きっと過去だ。



なんでだよ。なんでこんなにも……。




涙はなかなか止まらなかった。









「落ち着いた?」


随分長い間泣いた気がする。

相変わらずの優しい声。

なんでそんな風にできてしまうのだろうと思う。


「うん…なんとか……」


「目腫れてない?少し見せて。」


「あっ……」


顔を上げると主と目が合う。

黒い瞳と俺の元から赤い瞳。

主の瞳に俺が写るのが見えた。


ーーー視られている。

ひとつ足らず見逃すまいと俺の周りも見つめている。



(この人、こんなに霊力持ってんの…!?)


鳥肌が立つ。

こんなにも霊力がある人間を初めて見た。普通ならこんなにも霊力があれば気が狂うだろう。


有り得ないものが視え、有り得ないものを毎日のように感じる。人が耐えられるはずがない。


ーーーいや、違った。

この主にそんなことは囁かでしかない。

そんなことよりも……ずっと辛いことがあったのだから。


「うん、大丈夫そうだな。良かった。」


なんてことのないように彼女は言った。

俺は複雑な気持ちになる。


「で、こんのすけ。清光がいる理由についても全て説明してくれるんだよな?」


「は、はい…」


霊力に当てられたのだろう。こんのすけはかなり怯えていた。

主は気がついてない。

今、自身が言霊を使っているということを。











こんのすけがここに来れたのは時の政府からの司令だと言う。俺が来れたのは主が欠片を見つけて縁が出来たかららしい。

主は黙ってこんのすけを見つめている。



「ふーん。この清光の欠片といい、話がうますぎる気がするけど。…嘘はついてないな。隠してもいない。」


「と、当然でございます!貴女様を欺けるなど…」


「でも、時の政府とやらは信用出来ないな。この気配、あたしを舐めてるとしか思えねーよ。」


「…そこまでお分かりになるのですか。」


「まぁな。人間嫌いだし。」


「…………」


人間嫌い。

当たり前だろう。あれだけのことがあれば…。


「驚かないかぁ。清光、すまんな。余計なもの見せたか。」


何も言えずに黙っていると主が欠片を俺の手に握らせた。

冷静に言う主。何もかも察していたらしい。俺、余裕無さすぎだろ!


俺は慌てて主に返して握らせた。


「主が持ってて。俺の一部。なんの役にも立たないかもしれない。でも…こうして出会えた。主が危ない時、辛い時、駆けつけることができるかもしれない。だから…」


顔を上げると主は目を見開いている。

…こんな顔も出来るんだとつい魅入ってしまった。

やがて嬉しそうにわかったと笑顔を見せてくれた。


見えてしまった記憶の中で笑顔だった主はほぼ居なかった。

泣いているか、それか能面みたいな表情。


だからこそ、笑顔に魅入ってしまいーーー守りたいと強く思った。








「主が持ってて。」


清光の本体の一部。

それを持っていてほしいと言われた時、らしくなく思い出してしまった。


余計な記憶だ。

思い出しても変わらない。変えられない。


この私すら、変わらないのだろう。


でも少し…いや、だいぶ救われた気がする。

駆けつけるだなんてあの頃、誰か言ってくれただろうか。


…居なかったよね。

見捨てられてばかりだったから。見て見ぬ振りする人ばかりだった。


その言葉だけで救われた。


「わかった」


ありがとうーーー気がつけば私は久しぶりに当たり前のように笑っていた。










「御二方のお話が落ち着いたと見てお話がございます。」


「審神者になってくださーいだろ。なんで私さ。」


こんのすけの話にすかさず言う主。

この程度なら予想はつくだろう。


「話が早すぎて気味が悪いです…」


「はよ説明しな。お前の纏う気配が気に食わないって言ってるべ。」


霊力抑えて〜!

と思うが主に言っても、そんなの分かるかという回答になるのはもう分かっているので黙って聞いている。


「はい。それは、貴女様なら戦場にでもお立ちになられるかと考えたためで」


「あたしのプライバシーはないわけ?誰でも人様の情報を暴いていいわけじゃないよなぁ?」


…うわぁ。言霊が本領発揮だ。

こんのすけの命が危うい。言霊が殺気を纏い始めている。下手したら…。


「いいいいいいえ!と、んでも、ない、です…!!」


「……戦場に立ててどうする。あたしじゃ足でまといにしかならんぞ。」


「ご冗談を。ワタクシにここまでの言霊を浴びせる事が出来るのに足でまといになどなりますまい。」


スっ…

いきなり殺気はなくなり、冷静になった。

こんのすけも調子を取り戻す。


「その判断はウチの刀剣男士が判断することだ。お前さんがすることじゃねぇべ。」


「謙虚でございますね。」


「事実を言ってるだけだ。あたしは平和育ちだからな。」


…たしかに。

平和な時代ではある……よね。うん。

なのになんで……。


「清光?どした?」


「ううん。なんでもないよ。…主がどこにいようが俺たちは変わらない。主を守るよ。」


「……ありがと。」


その笑顔反則ーーー!!!

思わず顔を背けた。


話はこう纏まった。

主は正式に審神者となり実際に歴史修正主義者に立ち向かう為に本丸とこちらを行き来しても良いということ。

政府は全面的に彼女に協力するということ。

そんなことが話に出た。


主は政府を全く信用出来ていないらしい。

人間不信でもあるし、主でなくても簡単には信用すべきではないだろう。


政府は信用しないが刀剣男士は信用できるからやってもいい。それが彼女の答えだった。







「詳しいことは明日以降にしてくれ。私の本丸で待っていて構わないから。」


どうせ本丸に行かなきゃならないのだろう。

なら、こちらに居るうちに私はアイツに会っておきたい。


「…その方が良いでしょうね。貴女様は神に愛されやすいようです。お会いになられるべきかと。」


…プライバシーなさすぎて殴りたい。

どこまで私を調べてるんだよ。

清光は仕方ない。私が欠片を握っていたのが悪いのだし。


「愛されてるかはどうでもいい。とりあえずあたしをわかっていたら腹に一発お見舞いしてやるだけだ。」


「いや、なんの話!?」


「……あとでする。清光。アンタが明日まで居なくても本丸は大丈夫?多分夕方くらいまでだと思うけど。」


「多分、大丈夫じゃないかな。三日月や小狐丸も居るし。乱も居るから大丈夫。」


「ウチの古株は頼もしいわね…ならさ、一緒に京都回ろっか。どう違うか、もし嫌じゃないなら聞かせて。」


「え……いいの。」


「いいも何もあたし一人旅だし。どう?」




「断るわけないじゃん!!!行くよ!!!」




顔を真っ赤にして言うもんだから思わず笑ってしまった。…清光といると自然な自分になる。気楽でいいなとか思ってしまった。


そういえばとふと思い出す。

見渡せばこんのすけは姿を消していた。


(用は済んだから取り敢えず撤退ってことかね…)


実をいえばあの管狐も信用はしていない。

まとわり付いていた気配にあいつ自身の気配。


まとわり付いていた気配は人間の悪意とかそういった悪いものだ。だから信用できない。あいつ自身は悪い気配はしないが…どうにも胡散臭い。だからこそ信用できない。

あの狐に意思はなくとも、行動を移せば別の話だからだ。



まぁ、狐の話は今はいいや。

今は旅行に集中。忘れてしまおう。

…そーいや清光の欠片。どこにしまうべ。


(小物売ってるとこ…やっぱ清水寺かなぁ…)


修学旅行でも行った懐かしの場所へ向かうことに決めた。あそこの通りでお土産は大体済ませたことを覚えていた。








「一発お見舞いしてやるだけだ…って髭切か。」


乗り物で移動。

ばすというものらしい。俺は周りからは見えないので上手く主と離れないように座っている主と距離をとっていた。

会話は欠片を通じて。

おかげで縁が出来たし、彼女の霊力とんでもないからこんなことが出来てしまう。


そのことに少しだけ感謝をした。

別に霊力とかなくても主が主なら俺は満足していたと思う。だって放っておけないもん。


「そ。…あ、そーいえば髭切って不思議ちゃんな性格って設定らしいけどホント?」


「…ある意味不思議ちゃんかもね。空気読まないし。」


主見たことある発言するくらいだし、ある意味不思議ちゃんだ。少し意味は違うかもしれないが。


「それ単なる爺さん或いは変人なのでは。」


「いーや違う。主の言う通り、狙ってやってる。源氏の刀だけあるよ。油断ならない感じ。」


「なるほど確信犯ってわけだな。」


「そーそー。そういえばね…」


元から話すことが苦手というか嫌いな主。

でも欠片を通じて良くわかる。

俺と話すのに疲れも何も感じてないみたいだ。


ほんの少しずつでいい。

アンタが楽になるならばそれで。


俺は本丸の事を思いつく限り話をした。




それからしばらくして。


「よし、降りるよ。」


と声がした。

一人分だけ賃金を払い主は降りる。俺も続いて降りた。


「便利だね、ばす。」


「時間が合わないと乗れないのがデメリットだけど。便利だよね。」


目指すは清水寺…に続く道。

その道にはお土産さんが沢山あるらしい。

そこを目指してついでに清水寺にもという計画のようだ。


「何か買い物?」


「うん。この清光の欠片を持ち歩けるケースかアクセみたいなのが欲しくて。」


「…………」


「顔真っ赤だよ。ウチの清光は真っ赤になりやすいのかな?」


「主が悪い!」


だってそれ勘違いでもなく、御守りにしようとしているのだ。

嬉しくないわけないし、顔はどうしようもない。


もしかして、刀剣キラー…或いは天然タラシ???


「どっちも違うと口に出して言いたい。」


「怪しまれちゃうよ。」


「ソレナー。………あら、あまり探す必要なかったかも。」


入ったお店は綺麗な耳飾りや首飾りなど沢山ある場所だった。

綺麗だなぁ…と思わず見とれる。


主は早速お目当てを見つけたらしい。

紅色を主役にしているガラスの首飾り。どうやらそのガラスも飾りで本体はガラスをくっつけているところ。パカパカと開閉するのを店の人が主に見せていた。

ろけっとぺんだんと、というらしい。


「それにします。すぐに付けるので包みはいらないです。」


あっという間に決めてしまい、買い物をすませた。もう少し見て回っていいかと主は店の人に聞く。快く承諾してくれた。


「よし、この中に欠片を入れるね。」


店の人から離れた場所で主は俺の欠片を首飾りのしまう場所へ入れた。


「…!」


紅色そこまで好みでないのにした理由。

俺を意識した色だったからか!

……ああああ!もう。


「………なんとか付けれた。清光。言霊でいいからお呪いかけてくんない?頑丈なやつにしたけど壊れたら嫌だからさ。」


「…もちろん。」


付け慣れてないのだろうに、俺のためにつけてくれた。

それだけでもう、胸がいっぱいだった。



「『主を必ず守るように。絶対に壊れたらダメだならな。』」



首飾りに呪いをかける。

上手くいった。霊力の扱いとかほとんどできないんだけど、きっと主を見たからかな。


「ありがと。」


欠片を通じて俺に伝えてくれた。

お礼はこっちだよ、バカ主。

顔を背けた。





「お悩みですか?」


「はい。お土産に買おうかと…赤というか朱色が好きな子なんです。私は買ったことなくてどれがいいか…」


爪紅がそのお店にあったので、俺に買ってくれるとのことだった。

いや、いいよ!と普通なら断るけど、あまりに自然に品物を前にして悩み始めるものだから機会を完全に逃した。


紅色といってもたくさんある。

これは俺でも悩むな…。


「こちらなど人気ですよ。あとこのようなものもよろしかと。」


「どれも綺麗ですねー。あ、これもいいかも……すみません、時間かかっちゃって。」


「いえ。ごゆっくりお選びください。」


いい人だなと思った。

この人は本当にそう思っている。適度な距離感がある。

多分、主も感じ取っていたから珍しく接客に応じたんだろう。


「大抵はしつこいのよ、お土産さんとかこーいう場所。でもこの人は悪い気がしないし、この店珍しく視えない。さすがは京都って感じだよな。」


首飾りを握占めて欠片を通じて伝えてくる。

…俺、大切にされてるなぁとしみじみ思ってしまった。


「そうなんだ。…俺、どれでもいいからね?なんかもう沢山貰ってるし。正直、買ってもらうのも悪い。」


「イヤだー。アンタが満足してても私はしてないの!色んな話聞かせてくれたお礼する。……これにしよ!!」


赤過ぎず、薄すぎず、単純だけど綺麗な紅色。直観凄い。俺の凄く好みだ。


「すみません、これにします。こっちは包んで下さい。」


「ありがとうございます。包装はどの色がよろしいですか?」


「赤でお願いします。」


…ほんと適わない。

俺はまた顔を真っ赤にしていた。






「ありがとうございます。また是非お越しください。」


「お世話になりましたー。また来ます。」


最低限の挨拶を交わして私はお店から出る。

買い物は嫌いだけど、あの人は悪い気しないや。珍しい店員さんだった。

隣にいる清光はもう真っ赤に顔を染めて顔を逸らしてる。


(渡すのは後にしよ。)


鞄にしまい、私にしか見えない連れを引き連れて歩いた。



それからしばらく歩き回ったあと。


「はあああああああ……疲れた。」


暑さもあったからもう疲れてしまっていた。

私と清光は(あ、清光は疲れてない)歩き疲れており、適当な公園で休んでいた。


「歩いたもんねー、お疲れ様。」


「うーっす。」


誰もいないので声に出している。


スポーツドリンクを飲んで一時的な水分補給をする。

……体力は簡単にはつかないものだ。

明日にはきっと筋肉痛。

普段、実家暮ししてる為に今日あったことを緑アイコンのアプリを開いて母親に説明。全部書いた。


返信は、なんかそんな予感した。というサッパリしたものだった。


「さっすが…」


「何が?」


「母に連絡したの。全部あったことね。そしたらそんな予感したってさ。」


「母娘で霊感あるってすごいよね…」


「…どーだかな。」


いい思い出はない。

微妙な返事しか返せかなかった。


「休んだら宿に向かったら?結構時間いいと思うよ。」


「んー…そだな。清光もおいでよ?タダで泊まれるとかラッキーなんだから。」


安いが景色は最高なホテルを予約できた。これは親の知識のおかげやな…。

付喪神だし清光はノーカンだろう。このチャンスは逃させない。


「え。いやいや俺は適当なその辺で寝るよ。慣れてるし。」


「馬鹿野郎。あたしがそーいうの嫌いなの分かってねーの?」


「う………」


「さ、行こう。」


「…はーい。」


全くこの子は…


過去覗いたんなら分かるべさ。

……私は清光を大切にしか思えないよ。私の中では高レベルではあるんだけども。


男として見ることはできない。

きっとこれから先、誰かに恋することなんてない。

だからきっと、恋だの愛だのに絡む嫉妬というものも私にはわからない。


(いらない感情は捨ててきた。)


何処に捨てたのかも分からない。

興味もない。


(だから、ごめん。)


罪悪感すら感じなくなった。

私の捨ててきた……いや、正しくは殺してきた感情は死んでしまったのだろうか。


……なんて冗談。

それすらもう、どうでもよかった。









(別に男として意識して欲しいわけじゃない)


主をそっと見つめる。

眼中にないとかではない。


彼女はわからないのだ。


誰かを好きになること。誰かに恋すること。

それがわからない。


だってそんな暇なんかなかった。


ただ生きることに必死過ぎた。

恋する感情なんか育むこともできなかった。


……俺より人間歴は長いのに。

あまりにも彼女は最初から欠けている。


(だから、せめて)


生きていてもいいかなと笑顔で心から思えるくらい、それくらいでいい。


本当は普通の女の子でありたかったこの人に思わせたい。


きっとこの沢山の感情は、アンタが捨ててきたもの。俺たちはそれを沢山貰ったんだ。


なら今度は俺たちの番だよね。


きっと、笑わせてあげるから。



そっと俺は誓った。




1話目 おわり