Mirrordoll

卯月姫@夏花
@hanahanasikihim

変化した盤上

「鏡を見ると命に関わるってどういうことなんだ?」

「鏡を見ると強制的に為りが解かれちゃうんだよ。鏡を見ると10時間、為りが出来なくなる。僕が自分の姿でいられるタイムリミットは12時間。……ただその12時間、万全な状態でいられるわけじゃなくて、タイムリミットが近づくにつれて体に異常が出てくる。10時間も為りが出来ないのは僕にとって致命傷になるから、鏡は見れないんだ。」

ややこしいよね、と笑いながら話す僕から目を逸らし、悠は「なるほど…それなら…」と何かぶつぶつ呟いている。

「悠?どうしたの?」

それからパッと顔を上げてこう言った。

「俺が護ればいいんだな」

「……へ?」

うんうん、と悠は頷きながら続ける。

「お前が鏡をうっかり見ないように〝冬華〟をやってる間俺が護ればいいな。よし、名案。あ、鏡って見なければ大丈夫なのか?写っただけでお前が認識してなければ大丈夫「うん、そう!大丈夫だけど!な、なんでそこまで僕のこと気にかけてくれるの??まだ出会って二日目なのに!」

「時間なんか関係ないだろ?」

さも当たり前のように言う。

「人は皆護られるべきだろ。その逆もだけど。」

〝人〟……君は、僕でも〝人〟に入れてくれるんだね。

「……君は本当に優しいなぁ…」

「ん?何か言ったか?」

つい本心が漏れてしまったが悠には聞こえてないみたいだった。

「ううん!何でも!…じゃあ頼むよ、西宮上等兵どの!」

「あぁ、任せろ」

ふざけて言う僕に不敵な笑みで返す悠。

強い人だ。こんな強い人に愛されているなんて、冬華は幸せ者だと思う。

そもそも、誰かに愛されているというだけで僕にとっては充分羨ましい。


先に周りの異変に気づいたのは悠だった。先ほどから、やけに空気がざわついている。隣の鏡に伝わっている様子はない。

「……おい、鏡。」

「何?」

「さっきから、何か変だ。空気がおかしい。」

「え…?」

そう言われてから鏡も周りの異変に気づいたようだ。二人は警戒を強める。

空気がおかしいのには気づいたのだがその原因が何かわからない。

「……どうする」

「時雨達と合流するか。俺達だけで動くより安全性は上が「悠!!冬華!!」

時雨が大声で鏡達を呼ぶのが届いた。

声に反応しすぐにそちらへ走る。時雨と花火は既に佳乃と合流しており、三人とも緊迫した面持ちを浮かべている。

「時雨、何があった。」

訊ねる悠に間髪いれずに時雨が答える。

「強盗が出よったんや!!人数は少なくとも四人以上、確認できる限りでは銃も刃物も持っとる!!」

「何だと?!」

「あたし達から少し離れた店だったの!!警察が来たらそのまま店内に立て籠って…!!」

四人に向けて佳乃が指示を出す。

「警察を援護します。各自最大の警戒を怠らないように!」

「「「「はい!!」」」」

全員で件の宝石店に走る。


現場は凄惨な状況だった。

周りの住人が混乱し大騒ぎになっている。強盗達の姿はないが、店の周りには怪我をした人々も見られ、警察が手当てや騒ぎを収めるのに追われていた。

「大和帝国軍所属の朝霧班です!!警察部隊を援護します!」

佳乃が声を張り上げると警察は朝霧班の到着に気づいたようだ。

警察の中からこの場で最も権力を持っているのであろう人物がこちらへ走り寄ってくる。

「帝国軍、ぜひ協力を。現在強盗達は六人全員が店内に立て籠っている。全員武器を所持。人質は二人。人質救出のため最大限の注意を払って強行突破しようと考えているがどうか。」

「それが最善ですか。」

「強盗達が『自分達を逃がせ』という条件をこちらが飲まない限り断固降伏の意を見せないのでね。人質の命が最優先だ。」

「……わかりました。時雨君!花火さん!」

時雨と花火が佳乃の方へ顔を向ける。

「とにかく周りの住人を避難させましょう。被害がこれ以上広がらないように。全員が避難したことを確認したらすぐにこちらへ戻りなさい。」

「わかりました!」

「任しとき!!」

二人が避難誘導に取りかかったのを確認してから佳乃は鏡と悠を見た。

「あなた達は突入隊の突入後の援護を。ただし絶対店内には入らないで。あくまで安全を最優先に。いいわね?」

「「はい!」」

宝石店の表は全面ガラス張りになっている。そこから見えるのは三人、リーダー格であるらしい男は銃を所持しており、怯えきっている人質の女性達を押さえている男二人は刃物を持っている。残りの三人は恐らく店内に散らばっているのだろう。

鏡と悠は警察の突入隊と合流した。

「君達が帝国軍か。」

突入隊の隊長が二人を見る。


「作戦を話す。全員聞いてくれ。」


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永い時を生き、それでも夢見たのは、誰かのそばにいること。

黒を纏った、雪のように美しい〝悪魔〟に、恋をしたのだと思っていた。