童と仙人

🔞私のあろはんを返しなさい💢💕
@Brother_Acorn

二幕.仙人、父になる

「ようし、じっとしていろよ。おうおう、今日はよく泣かないねェ。偉い偉い。」


白褌姿の仙人様は赤子を抱き上げ、ゆっくりゆっくり風呂釜の中へその小さな赤子の身体を浸からせておりました。


煙る死体の中で赤子を拾った仙人様。彼はしばらくその子を自分の元で養っておったそうです。人間の里へ帰そうともお考えになられましたが、すでに子の母親は妖怪に殺され、父親の名も分からないのでは里に帰したところで赤子には宛はなく、飢え死にさせてしまうのは目に見えて明らかでした。


ですので子を哀れに思った仙人様は、子が自分の脚で立ち、自分で物事を考え、自分で飯を食べ、自分で死に場所を決められる年頃になるまで育ててやろうとお考えになられたのです。


ですがそれは容易な事では御座いませんでした。


赤子を拾ってからというもの、仙人様はそれはそれは多忙になられました。朝は食事を作り、昼はおしめを替え、晩は夜泣きがひどいもんだから赤子が眠るまで自分はずうっと団扇を仰ぎ続け眠れない。

子供の育て方など知る由もなかった仙人様はまるで暗夜の中を渡り歩くようでして、山を降りては人間の里へ赴き、街角でお喋りを楽しむ夫人らの会話に混ざろうとしたり、団子屋で知り合った老婦から子育ての手解きをして貰ったりもしたのです。

四六時中赤子に寄り添っておりますと、一日がそれはもう長く感じられるようで、暗くなる頃にはさしもの仙人様もヘトヘトにお疲れになられておりました。


「人間の童はこんなにも手の掛かるものなのか。…ハハァ、お母さんってのは大変だなァ…。それに比べこの子の親を殺した妖怪連中は気楽で良いもんだ。」


「こっちは赤ん坊一人育てるのに精一杯だのにアイツらときたらどうだ。あっという間に何人も食べちまうんだから…人間はたまったもんじゃないねェ。」


やっとのことで眠りに就いた赤子の柔らかい頬を仙人様は優しくつついてやった。


「ハハァ…まだ三日も過ぎてないのに言葉の分からん赤ん坊話しかけてんのだからねェ…。疲れがきてるのかな。仙人様のクセに……明日はいい日でありますように。」


仙人様はゆっくりと瞼を閉じた。

団扇を仰ぐ手は動いたまま。





妖怪や神様から見てみれば人間はとても成長の早い生き物であり、とても死にやすい生き物であります。『ある古文書』には妖怪の寿命に関する記載がされており、妖怪の一日は人間の数百年にも値すると記されております。それに習いますと人間の一日とはかくも儚く、そして掛け替えのない物だと思われます。


さて、山奥にあるここ仙人宅では可愛らしい人間の子が家を出る支度をしてございました。目鼻立ちは誂えたように端正で、やや小柄のほっそりした黒髪を朱色の紐で短く結んだ年相応の幼気な女の子である。

あの赤子は十歳になっておりました。

草履の鼻緒に両足の親指と中指を引っ掛け立ち上がると、後ろから育ての親である仙人様がゆっくり呼び掛けます。


「『仙姑』お出掛けかい?少し用事を頼みたいのだけれど。」


'"仙姑"とは仙人様が少女に付けた名前で御座います。仙姑は父親の顔に目もくれず髪を整える仕草をし

「帰ってからにしてくんないパパ。今から友だちと遊びに行くんだ。」と戸に手をかけ家を出てこうとします。


すると仙人様

「ハハァ…遊びに行くのは構わないよ。ただねェ、何かパパにねェ"ごめんなさい"すること…あるんじゃないのかなってね?しらばっくれてないでしっかり胸に手を当ててごらんなさい。」


「はぁ…めんどくさ。はいはい、昨日パパが頑張って作った下手くそお茶碗を破ったのはこの仙姑めです。どうもすみませんでした。これでいい?友だち待たせてるんだけど。」


「…本当に謝罪する気持ちがあるんだったらさ、パパの言うこと何でも聞けるよね?」


そう言うと仙人様は麻の鞄を少女に投げ渡し部屋へと戻って行く。


「いやぁー、子どもがいると楽でいいわー。お前を拾ってよかったよォ、仙姑ちゃーん。ハハァハハァ!」と高笑いする仙人様。


仙姑はその背中をじっと睨んで舌を出した後、急いで山を下って行きました。


自分の家からそう離れてない小川で友だちと待ち合わせてた仙姑。向かいの川岸にある大きな岩陰に涼んでいる友だちを見つけると、おーいと声を上げて


「おはよう!ごめん遅くなっちゃった!」


仙姑の大きな声に気付いた女の子は向こう側からバシャバシャと川を渡り、仙姑のいる此方へと夢中になってやって参りました。女の子は仙姑に近づくとめいっぱい抱き締め


「おはようおはよう待ってたよ!仙姑が来るのアタシずうっと待ってたよ!何して遊ぶ?ねぇねぇ仙姑!今日は何するぅ?」


「おはよ…。きょ、今日も熱い抱擁ありがと…。ほ、ホント暑い…。」


仙姑を抱きしめて離さない女の子。

頭には萌葱色の帽子を被っていた。

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