幻惑炎灯復活劇/指輪

かめわらじ
@tatamiwaraji

10、「どこへもかえれないみち。」

 二十六日土曜日───最終戦の翌日。

 チュンチュンとまた爽やかな雀の鳴き声に起こされた。

 朝日に差し込まれ、眩しさにう゛ぅ゛と妙にダルい上体を起こす。

 うへーと寝ぼけた頭で、昨日を思い返す。

 断片が飛び飛びで再現され、──しばし浸る。

 それから、まだ寝ぼける頭で、涎を滴ながら───立て掛けられた空の日本刀を見て終った事を実感した。


 あぁ、本当に………長かったボンゴレリング争奪戦が、終わったんだ……。


×●×●×


 ふわぁーと大欠伸をし瞼の上を擦りながら階段を降りて居間に足を踏み入れると、……巨人さんが居間にいた。

「にゃんにゃんっ」と柴犬サイズ程の赤ちゃん狗神『陽炎』にじゃれつかれ、更には子どもフゥ太、ランボ、イーピンにメチャクチャ懐かれている優しい巨人。

 私はしばし立ち尽くしたが、寝ぼけた頭がゆっくり再起動してから優しい巨人が誰であるか該当する。


「おぉ、ランチアさんだー!」


 と人に指を差すのはマナーが悪いが指を差し、膝立ちでずりずりと進んでランチアさんの前に座る。


「あ、あぁ。世話になっているぞ」


 めちゃくちゃにされているのに、律儀に返してくれる。髪を子ども引っ張られるわ、陽炎に手をめちゃくちゃ甘咬みされるわ……大変そうなのに……。

 子どもと子狗にしっちゃかめっちゃかされているランチアがどうして我が家にいるかと言うと昨日の出来事に遡る。


×●×●×


 アーシュを刺し倒し、滅茶苦茶で戦いの行方もわからなかったこのボンゴレリング争奪戦に勝利を果たした。

 しかし―――小さな霧が正門前に発生した。

 なんだと真美と凪ちゃんに抱えられた私は疲れた思いで見やれば、


「思い通りアーシュ様に手痛く痛めつけられたみたいだね―――ボンゴレ」


 小さな霧を払って嘲笑共に勝利同然だった戦いに水を差したのは、あの行方を眩ませていたヴァリアー側の霧の守護候補者マーモン!

 どうやら六道骸との敗戦後、なんとかこのボンゴレリング最終戦の終わりまで潜伏し、機会を伺っていたらしい。

 ザンザスが言っていたのはこれの事か…。ただで転ばずしっかり一矢報いるがヴァリアーらしい。

 マーモンは私の傷の具合に余裕気にせせら笑うと、「おーむね、よてーどーりっ」だとベルが不穏に笑う。レヴィは何故か月を見ながらへらへら目が逝っていた。ありゃ、あれは頭がイカレタな。

 スクアーロは笑いはしないが、喜びもしない。最初から知っていたのか。


「予定、…通りね。その余裕はあれでしょ―――戦力を外部から連れてきた。オレが勝利したのにこのタイミングで割り込んで来たってことはそれはもう捻り潰すのに余裕な戦力ってことだね」


 私の解答(もうザンザスが言っていた時点で解答もくそもないだが。というか、ザンザスなんで私にそんな大事なこと溢したのかな…? でも、昔は優しかったしな…)に、マーモンとベルは意外な反応をする。やけに冷静だったことが、だろうけど。

 この展開に、というより私に驚く若手ボンゴレ組だったが、チェルベッロ機関の少女らは冷静にボイスレコーダーを取り出し録音し、先を知る絢香と藍沢、ルルは無言だ。

 ベルは私のやけに冷静な様子にイラっとしながら、突っかかってくる。


「へぇ、なんかお前この二週間で馬鹿っぽいのが抜けたみたいじゃん。なになに、それって巫女の能力ってやつ? それとも、ボンゴレ特有の超直感?」

「…。」


 会話する必要もなし。と、無視するとベルは随分苛立ったようでナイフを取り出し、投げ付けてきた! それも、疲れているせいか避けきれる速度ではないっ。

 だが、それを咄嗟に割り込んだのは―――「せんぱげぶっ!」

 肩を貸してくれた真美ではなく、真美の頭を踏み台にして踏みつけて、飛び越しのひと蹴りで飛び越しのひと蹴りで叩き落した絢香だったっ。

 うなっ! と驚愕するベルあんど周囲だったが、絢香は続けさまに、落ちていた石をベルへ投擲する。その疾さは、―――山本の剛速球に比べ物ならない領域だった。

 ぐぁっとそのまんま食らい、ベルの欠けた歯が飛んだ。ついでにゴキッとなんか顎が砕けた音が聞こえた。

 さらに、続けて―――九字切りに構えた絢香。標的はマーモン。あの重たいズンっとした威圧が肩に圧し掛かる。それも、滅多にない誰もが恐怖で全ての脳の機能が動くことを拒否する本能レベルのっ。


 ヤバい、絢香抹殺する気だ!! 何が絢香の気に障ったのかわからないが、これではこちらの予定が崩れる!! 自分だって知っているのにどうしてそんな無茶するんだ!!


「あーちゃん! それ以上駄目っ! 殺しちゃ駄目っ!! 絶対、駄目っ」


 寸前、私は絢香の腕を掴んで、無理やり止めた! つい、昔彼女と母子家庭だった時呼んでいたあだ名で呼んでしまった。

 絢香はこちらに振り返り、珍しく驚いた顔して―――誰にも聞き取れない「なー、…ちゃん…」と泣きそうな声音で昔のように私を呼んだ。

 私は絢香にだけ聞き取れるように、「大丈夫。絢香の事、もう一人にしないから」と呟いて肩を叩いた。

 絢香はギコチナク、こくりと小さく頷き―――あの張りつめていた縛らせる重圧がなくなった。

 絢香の本気に当てられて、死にかけたマーモンは酷くガタガタ震えながら、


「ジっ、ジタバタしたところ君達に勝機はないよ! そこのボンゴレの通り、―――総勢五十名の生え抜きのヴァリアー隊が、間もなくここに到着するからね」

「!」

「当初はねボスの勝利後にそのボンゴレに関わりある者全て片付ける要員を向かわせておいたんだよ。僕ら幹部クラスの次に戦闘力の高い精鋭をねっ」


 マーモンは温存していたヴァリアーの戦力総員を並盛中学校に集結させて関係者の抹殺を最初の手札から選んでいたのだ。

 成程、狡猾で用意周到だ。これがヴァリアーの誇るところなんだろうな。

 勝ち誇ったように高らかに宣言する。既に彼らの中では勝利は確定済みのようだ。

 マーモンはついでに続けて声高に言う。目の前にいる恐怖対象=絢香に負けないように。


「『亜流のニセモノ』で九代目の直系でない君なんか絶対ボスの座はに継がせたくないからねっ」


 しかし、六つの指輪はボンゴレに属す私側の凪ちゃんが持ち、大空の指輪は私が持っている。だから、勝敗は―――言うまでもなく、私達の方だ。

「ボス。」と凪ちゃんが呼んだ。

 振り返ると、左の耳を押さえた彼女が、「うまく、いったって…。もう、大丈夫だってボス」とかなり安堵した表情で報告。

 私はそれに、「助かったって伝えておいて、凪ちゃん」とここに居ない誰かに労い、彼女は嬉しそうにこくりと頷く。

 私はマーモンへ振り返り、―――笑いかけた。


「ははっ―――残念、タイムアウトだ。マーモン?」

「は? 何言って……」

「最初からこっちの手元にある指輪を奪わなかったのは―――全く君の敗因だね。敵を前にして油断した挙句に長いお喋りは戦いに禁物だって、初歩の初歩じゃなかったっけ? まぁ、『いい時間稼ぎ』になったからいいけど」

「まさか、―――ボンゴレ!!」


 マーモンは私の言ってることを理解したようで驚愕の声を上げた。

 そこに、ヴァリアー部隊のリーダー三名到着!

 だが、彼らの様子は、もうひどくボロボロで恐怖に歪んでいた。その中の一人が声を張り上げるっ。


「報告します! 我々以外の――――ヴァリアー部隊全滅!!」

「なっ!!」

「鬼神のごとき男が間もなく……―――ぐあっ!!!」


 皆の前に───あるの男がそのヴァリアー隊を圧倒的な実力を見せつけ蹴散らしながら、颯爽と現れた。


「取り違えるなよ、ボンゴレ。オレはおまえを助けに来たのではない───礼を言いに来た」


 北イタリア最強と恐れられたファミリー惨殺事件を起こしたが、実際は六道骸に操られていたランチアさん。彼は私を見ながら、場違いにも苦笑いして。

 その彼の登場で戦況は─── 一転した。


×●×●×


 うむ、ランチアさんはやっぱり人が善くてよかった。じゃなかったら、あの計画はうまくいってなかったし、あの最終戦『巫女神選盃継承戦』は終わらなかったかもしれなかった…としみじみ思う。


「…ボ…、…ボンゴレ、オレの顔に何かついているか?」


 何故か大分赤面したランチアさんがそんな事を言ってくる。

 あぁ、ずっとランチアさんを眺めていたみたいだ。


「いえ、何も。昨日はどうもありがとうございました。オレのクラスメートまで助けていただいた上に協力もしてくださったそうで」

「あぁ……だが、その話は後でな」

「あと?」


 と首を傾げる私に、リボーンが一言。


「ぱーちーだ」


×●×●×


 さて、リボーンの言うぱーちーにランチアさんを連れて山本の竹寿司の暖簾をくぐる。

 すれば大集合でわいわいとお寿司を摘まんでいた!


 表向きはランボの退院祝い、深い意味合いは次期後継者争奪戦の祝賀会。


 選ばれた獄寺くん、山本、極限先輩は既にあのボンゴレの指輪を嵌めていた。ランボはゴミ箱に落ちていたとハルと京子ちゃんに指輪を見せつけていた。

 雲雀と凪ちゃんは不参加だが、指輪はちゃんと届いているらしい。

 なら、ひと安心だ。


 それでボンゴレの次期後継者の証である大空の指輪は───


「なんでオレになっちゃったんだよぉー?!」


 チェーンを通された指輪を無理矢理首に下げている今にも泣きそうな藍沢路可。


 そう、あの最強のランチアさんが登場後もしてからも実は色々―――やらかしておいてやったのだ。


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