君を救えたなら

楓@色々勉強中
@Kaede_3g

すぅすぅと小さく寝息を立てながら眠るスウネを横目に、俺は低回していた。

スウネにも伝えたが、こいつに原因や発端が分からないのなら 俺に分かる筈が無いのだ。

どれだけスウネが好きで大切でも、こいつに自分の事が分からない限りはどうすることもできない。

己の無力さを、不甲斐なさを、痛いほど感じた。

今までだって一度も自分を誇りに思ったことなど無かった。それでも、こんなに恨めしくは思ってこなかったけれど…

俺には力が無い。圧倒的にそれが欠落している。だから補うために、必死で修行をしてきた。

きっと実力は上がったはず。そう信じて、戦士を続けてきた。

けれど、“誰かの力になる”力は微塵も持っていなかった。

『…っ…、俺は…?

じゃ、俺はぁ……っ…どうしたら良いの……?』


無意識に涙が溢れた。本当に、どこまでも情けなくて、愚かだ。俺がここにいる意味なんて、とうになくなっていた。


──スウネを救う力は、俺には無い。


「んな訳あるか、馬鹿」

『へっ……?』

「お前が居たから」

『あんた、起きて…』

「お前が居たから、正気を保てたんだ」


力強い語調と眼差し。

いつものスウネがそこに居た。

泣きそうになって、すがるように抱きついた。

ああ、暖かいな──







『なぁんて、な』




俺の肩に身を凭げて眠っていたスウネは、突然叫び起きて狂ったように暴れた。

正気を失った瞳からは恐怖とも感じられる涙が止めどなく流れていて、驚きで身動きの取れなかった俺を押し倒し、肩口に噛み付いた。

俺の肩が消える直前、スウネは震えた声音で


「おかあさん」


と 呟いた。

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