恋する動詞111題・021~030

みもち(創作アカ)
@mimochi_sousaku

026. 拗ねる:芥川慈郎

「…ねぇ、それ、そんなにおもしろいの?」


うたたねから覚めて、最初に目に入ったのがキミの微笑みだったのは、すっごく嬉しかったんだけど。


「え?…ああ、この本? うん、すごく」


それが俺に向けられたものじゃないことはすぐにわかって、だから、俺はちょっと、不機嫌になる。


「読んでみる?」

「…………いい」

「そう?」

「ん」

寝起きのブアイソにいじけた気持ちを混ぜ込んで、俺はまた机に突っ伏す。

キミはまた本に視線を戻したのだろう、暫くしてから、ページをめくる音がした。

「……ねぇ、それ、どんな話?」

突っ伏したまま、くぐもった声で尋ねる。

「気になる?」

「…………べっつにぃ。そんなの、どーでもいいしー」

あ、今の、ちょっとヤな言い方だったかも。

なんて自己嫌悪に陥りかけてたら、不意にパタンと本を閉じる音がした。

首だけ動かしてキミを伺うと、両手で頬杖をついて、こっちをじぃっと見ている。


「……本、もーいいの」

「うん」

「おもしろいのに?」

「だって、拗ねてるジロくん、かわいいんだもの」

「……別に、拗ねてないしー」

「ふふ、そうね、ごめんなさい」

「だから、本、読みなよ。俺、まだ寝るし」

「寝ちゃうの? 私、ジロくんとお話がしたいのに」


俺に向かって、キミが陽だまりみたいな笑顔を浮かべた。

それだけで、俺の機嫌はすっかり直ってしまった。