恋する動詞111題・021~030

みもち(創作アカ)
@mimochi_sousaku

025. 微笑む:手塚国光

「こーら、そっちはダメよ」

ふと耳にした声に、何気なく窓の外へ視線を投げると、少し離れた木陰で仔猫と戯れている女子を捉えた。

それだけなら、多分、気にも留めない光景。

けれど、その女子というのが、クールで有名なクラスメイトだったので、少なからず驚きを覚えた。


何故なら、彼女の顔に、柔らかい笑みが浮かんでいたからだ。


「ほら、こっちこっち」

言いながら彼女がリボンを揺らすと、それを追いかけて仔猫が飛び跳ねる。

その様子を見守る彼女の顔に、小さな笑顔が次々と生まれていく。


あんな顔が出来たのか。


何となく目を離せずにいたら、唐突に彼女と視線が合った。

彼女はハッとした表情を浮かべる。

見られていたことに対する驚きかと思いきや、どうやら違うようだった。


「手塚くん、そんな顔できるんだ…」

「……そんな顔とは?」

「優しい顔」

自分が知らず微笑んでいたことに気付かされ、決まり悪さを咳払いで誤魔化しながら表情を引き締める。

「その言葉、そっくりお前に返してやる」

仕返しの様にそう言ってやると、彼女も同じ様に動揺し、慌てて表情を引き締めた。


「…笑っていた方が良いんじゃないか」

「手塚くんもね」


普段通りの気難しい顔をお互い暫し見合わせて、それからどちらからともなく、俺たちは再び笑い合った。