恋する動詞111題・021~030

みもち(創作アカ)
@mimochi_sousaku

023. 弄ぶ:幸村精市

二人で浴衣を着て繰り出した夏祭り。

人混みの中、偶然触れた君の手を、何も言わずに握る。

赤くなった顔を覗き込んで、「どうかした?」とわざとらしく尋ねる。

「……手」

「ああ、だって、はぐれたら困るだろ?」

君が欲しい言葉が何かを知っているのに、はぐらかす。

「あ………うん、そう、だね」

小さく落胆する君を可愛いと思ってしまう自分は、我ながら意地が悪い。


屋台で買った焼きそばとかき氷を、人混みから少し離れたベンチに腰掛けて、二人で食べた。

君の口元についたソースを親指で掬い取り、それをそのまま自分の口へと運ぶ。

やっぱり君は頬を赤くして、やっぱり俺はそれを愛しいと思う。


不意に訪れた、わずかな沈黙。

気紛れで買ったかざぐるまに、君がふぅ、と息をかけた。

その唇の形に引き寄せられるように、顔を寄せる。


と、思惑を遮るように、君のかざぐるまが二人の間に割って入った。

「幸村くんもやってみる?」

「ああ…うん」

内心で苦笑いを零しながら、目の前のかざぐるまに、ふぅ、と息を掛ける。

カラリ、と回りかけた羽根は、しかしすぐに動きを止めてしまった。

「…あれ?」

「幸村くん、意外と不器用?」

「おかしいな」

もう一度、息を吹きかける。が、やはり上手く回らない。

「こうやるんだよ」

クスクス笑いながら、君はまた唇をあの形にして、何度も息を吹きかけて、羽根をクルクル回して見せる。


「……からかわれてるみたいだな」

「だって、仕返しだもの」

「え?」


ふぅ、と君が息を掛けると、かざぐるまはカラカラと回った。