魔導姫戦記 外典 ドラゴンハンター

ウロボロス団
@ouroboros_dan

ヴァナヘイム首都…


パーシアス「お疲れ、エルキュール。」

エルキュール「おぅ、兄上。

俺達が揃って首都の警備とは…議会の連中、採掘場を奪還する気は無いのか?

まぁ、フォシルの秘密を知った俺達としては願ったりだがな。」

パーシアス「あぁ…でも、そう楽観ばかりも出来ないよ。

おかしいと思わないか?

フォシルが失われた今、魔導師は言わば消耗品…なのに未だに魔法は供給され続けている。」

エルキュール「そう言えば確かに…」

パーシアス「…ちょっと塔の様子を見てみようか?」




2人はヘスペリデスの塔に訪れた。


パーシアス「ご苦労さん、ちょっと中に入れてくれるかな?」

衛兵「申し訳ありません。

何人も通してはならぬと仰せつかっておりますので…」

エルキュール「何?

俺は元々ここの警備主任だぞ!」


その時、上官らしき騎士が現れた。

「おやおや?

これはこれはお揃いでリュンポス卿。

半分貴族は2人で1人前という事ですかな?」

エルキュール「何だと?」

パーシアス「よせ、エルキュール。


…貴方がここの、今の警備主任ですか?」

騎士「いかにも。

まんまと賊にフォシルを奪われた、何処かの間抜けな半分貴族に代わってね。」

エルキュール「ちっ…」

パーシアス「…おっしゃる通り、フォシルは失われた筈ですが、新たに別なフォシルがあるのでしょうか?」

騎士「…そんな事は君達には関係ない話だ。」

パーシアス「…確かに、その通りですね。

では、失礼します。」


2人はその場を立ち去った。


エルキュール「いやにあっさり引き下がったな。

レルネーにも行ってみるか?」

パーシアス「いや、たぶん同じ事だろう。

それより、もう一つ確かめたい事がある。」


パーシアスはそう言うと、連れていたアルキュオネに話しかける。

「もしもし、メロディアナ?

……

……

……

やっぱりそうか…

私もそれを聞きたかったんだ、ありがとう。」

エルキュール「兄上…もしや、ムスペルヘイムも?」

パーシアス「ああ、思った通りだ。

…ここはまた、彼らに確かめてもらおうか。」










その頃、ヴァナヘイム・ムスペルヘイム国境…


帝国軍に占拠されたフォシル採掘場の上空を、翼竜の姿となったメリュジーヌの背に乗って飛ぶシグルズ・シェイミー。


メリュジーヌ「…?

ここはフォシルの採掘場ではないのか?

気配がせぬが…」

シグルズ「…そいつぁ妙だな。

あいつら自身はフォシルに用は無いはず…

魔導師になるって事がどういう事か、身をもって1番よくわかってる連中だからな。」

シェイミー「……

いずれにせよ、フォシルが無いなら、ここに潜入する必要は無いわね。」


シェイミーはほっとした様子で言った。

その時、アルキュオネが鳴き出す。


シグルズ「ん?パーシアスか、どうした?

……

……

……

わかった、確かめてみる。」

シェイミー「…どうしたの?」

シグルズ「フォシルを失ったヴァナヘイムとムスペルヘイムで、まだ塔が稼動してるんだと。」

メリュジーヌ「それで、再びフォシルの気配がせぬか確かめよ…という訳か。」

シェイミー「ここからだと、タルタロスが近いわね…」

シグルズ「よっしゃ、行くぜ!」


一行は、ムスペルヘイム国の魔法供給施設・タルタロスに向かう。




メリュジーヌ「間違いない、フォシルの気配じゃ。」

シグルズ「どこから持って来たか知らねぇが、フォシルがある以上、頂くっきゃねぇだろ。」

シェイミー「…それにしても…また正面突破なの?」

シグルズ「幸いと言っちゃ悪ぃが、前回のメタモルフ騒ぎで、俺らの存在はうやむやになったみてーだからな。」




そんな彼らの様子を遥か上空から窺う、巨大な猛禽に跨った者の姿があった。

「…おいおい、正面きって剣を抜くなんて、どこの馬鹿野郎だ?

しかも女の子2人も連れて…しょーがねーなぁ…」




衛兵「何者だ⁉︎」

シグルズ「フォシルをもらいに来た。」

衛兵「馬鹿め。

お前を殺して、そっちの2人は魔導師にしてや…


次の瞬間、兵士は雷撃に撃たれ、瞬時に炭と化す。


シグルズ「は?」

メリュジーヌ「…魔法じゃな。」

シェイミー「‼︎

……」

「誰かと思ったら…アンタかい、シグルズさん。

…と、そっちは…

⁉︎」

現れたのは、帝国魔導師ウィザードのアッシュだった。

彼はシェイミーに目をやると言葉を止め、シェイミーもまたバツが悪そうに目を逸らす。


シグルズ「…お前ら、知り合いか?」

シェイミー「……」

アッシュ「……

いや…他人の空似だったわ。

ンな事よりアンタ、何してんの?

家族旅行にしちゃ物騒だな。」

シグルズ「誰が家族だ。

…ちょっとフォシルを頂きにな。」

アッシュ「ンなの、子供連れてやる事か?」

シグルズ「その、子供に見える奴の用件でな。」

アッシュ「?……どゆ事?」

メリュジーヌ「…フォシルとは本来、アグエル文明によって封印されし我が眷属…竜の魂が宿りし骸。

我はその魂を解き放ち、力を受け継ぐべく旅をしておる。」

アッシュ「眷属が竜って…

おとぎ話はもう卒業しなよ、お嬢ちゃん。」

メリュジーヌ「…共に来ればわかるぞ、小僧。」

アッシュ「…こ、小僧って…」

シグルズ「ククク…言われてんな。

そう言うお前こそこんな所で何してんだ?」

アッシュ「……

…言える訳ないでしょ?察してよ。

でも、ついてっていいってんなら、見届けたいな。」

シグルズ「…シェイミー、構わねぇか?」

シェイミー「え…えぇ…」


かくして、アッシュを加えた一行は、再びタルタロスの塔に潜入。

衛兵との戦闘においてメリュジーヌの能力を目の当たりにしたアッシュは、大いに驚く。


アッシュ「嬢ちゃん、ホントにドラゴンなのか⁉︎」

メリュジーヌ「そう言うたであろう、小僧。」




やがて4人は、フォシルの祀られた祭壇に辿り着き、メリュジーヌがその前に立つ。


シグルズ「黙って見てていいのか?」

アッシュ「…あぁ、ゼルでも勝てなかったアンタに俺が勝てる訳ないしな。

それに、これはアンタ達に預けた方がいい気がする。」

メリュジーヌ「…では始めるぞ。

…忌まわしきアグエル文明により封印されし我が眷族よ…

その戒めを今、解き放たん。」


メリュジーヌが唱えるとフォシルは砕け散って光の粒子となり、小竜の姿を象った。

「我はバシリスク…

我が戒めを解き放てし眷族よ…

汝が力を我に示せば、盟約に従い我が力を授けん。」

アッシュ「…これが…フォシルの力の正体⁉︎」

メリュジーヌ「心せよ。

体躯こそ小さいが、あれの魔力は対象を石と化す。」


4人は協力してバシリスクを打ち破る。


「見事なり…盟約に従い我が力を汝に授けん。」

バシリスクはそう言うと、砕け散って無数の光の粒子となり、メリュジーヌに吸収された。

かくしてメリュジーヌは石化魔法の力を得て、一行は塔を脱出する。


シグルズ「さて、次はヴァナヘイムだな。

お前はどうする?」

アッシュ「…う〜ん、どうすっかなぁ…

ちょっと考えてみる。

縁があったらまた会うかもな。」

メリュジーヌ「息災でいるが良い、小僧。」

「小僧は勘弁してよ。」

アッシュはそう言うと、召喚した巨大な猛禽を駆り、その場を飛び去った。


メリュジーヌ「我らも行こう。」




翼竜に姿を変えたメリュジーヌの背に乗り、ヴァナヘイムへ向けて移動中…


シェイミー「…何も…訊こうとしないのね。」

シグルズ「は?

…何だ、いきなり。」

シェイミー「私が何者なのか…

何故フォシルを持っていたのか…」

シグルズ「女の過去を詮索すんのは不粋だろ?

それとも、聞いて欲しいか?」

シェイミ「…いいえ…」

シグルズ「喋りたくなったら喋れ。

…ま、誰にでも事情はあるもんだろ?」

シェイミー「…じゃあ…

革命戦時、貴方が実のお父さんの敵に回ったのも…?」

シグルズ「…へッ…

そいつぁ、ごくくだらねぇ理由さ…」










一方その頃、1人ヴァナヘイムに向かうアッシュ。


「もしもし、こちらアッシュ。

……






続く…

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