追憶の園丁

豪が失踪してから随分になる。


あれほど咲き誇っていた庭の草花にかつての栄華は見る影もない。


枝は伸び放題。枯れてしまったものもある。


それでも新たな庭師を屋敷に招き入れないのは、豪への義理立てではない。


感傷などでも決してない。


結局二の轍を踏んだ自分への、惨めな戒めのつもりだ。



***



これ以上、豪を「口実」にした行動など、許される筈もない。


心砕きたい相手ではあった。だがそれも所詮は自己満足だ。


自己満足は、それこそ箱庭のように、自分の領分でのみ花咲かせるべきだったのだ。


悔やんでも悔やみきれない。


兄弟などという幻想に酔ってしまった自分を。



***



園丁に見捨てられた花園は、身の程知らずの夢の痕。


追憶の微笑みを思い浮かべながら、俺はまた窓越しに、その美しい仕事の影を追い求めるのだった。

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