雨の止まない世界にて……

そーじゃの
@souzyano_note

第二話

……えーと、「もしかして俺、死んだ?」

うっそだろおい。

そりゃ世の中クソだな日本死ね!って思ったことも何度かはあったけどまだ死ぬには早くないか??

大体足滑らせて川に落ちて死ぬとかダサすぎる……!


嗚呼、こんなことになるなら昨日クラスの帆並に告ってフラれときゃよかった。フラれるのかよ、俺。


「ここがあの世……ってわけでもなさそうだな」


何処かはわからないが水面から顔を上げると広い池のような場所にいた。そしてその池の中央に大きな大木が立派に立っている。

来たことはないと思うのだが、何処か懐かしい感じがする。そんなこと考えてられるほど状況は好ましくないんだけども。

依然、ザアザアと雨は降っている。いや、さっきより強いかもしれない。


で、俺は流されたと考えていいんだよな?ということは、俺はまだ生きてる!やったぜ。

早まって昨日フラれて無くてよかった!

……いやいや、そういう問題じゃない。

浅い所まで上がり、とりあえず体を確認する。どうやら重症なところは無さそうだ。細かいすり傷切り傷があったけどこれは流されていた時水中の木やゴミにやられたものだろう。洗って消毒しておけば恐らく問題ない。


(やれやれ、学校は遅刻かな)


「やほー、ひっさしぶり!!」

「!?」


さっきまで誰もいなかったはずの目の前に俺とは違う高校の制服を着た女子が傘をさして現れた。


「ど、どもこんちわ」


スキル:コミュショーが発動してしまった。状況がよく掴めていないけど恐らく俺のズタボロ姿を見て心配して声をかけてくれたのだろう。


「思ったより傷だらけなんだけど大丈夫?人呼ぼっか?」

「んと、いや大丈夫です」


と言っても俺のコミュショーはそこまで重度のものじゃない。


「心配かけて申し訳ない。俺は大丈夫だから、遅刻しないように学校行ってどうぞどうぞ」


やや口が悪くなってしまったけど口調やら態度やらでそういう悪気がないのは伝わったと思う。


「おっけー。……ところでなんか他人行儀じゃない?雫駆クーン?」

「え……なぜ俺の名前を?他人行儀も何も俺とあなたは初対面……」

「いやいやー、あるって会ったこと。ほれほれ思い出してみ?」


しばし思案。


「わかった!!八卦だろ!幼稚園で同じだった八卦京佳だ!!」

「誰?」

「違うんかい!!」

「んん……餅菓!小4のとき同じクラスだった!」

「餅菓って人間?おやつじゃん」

「これも違うんかい!!あと人の苗字をdisるなよ!」


「で、思い出せない……みたいだね?」

「ああ、これっぽっちも」

「やっぱり『外』に出ると記憶は……」

「?」


そろそろ家へ帰って制服を着替えて傷の手当して登校したいんだけど。

なにか目の前で思案する少女。一瞬寂しそうな表情を浮かべ、すぐに満面の笑みを取り戻した。


「 はじめまして。私は科視夕記って言います!以後よろしくね!」

「お、おう……」


勢いに押されるまま肯定してしまったけど何一つよろしくない。

とりあえず家に帰ってだな……。


「じゃあ本題ね。君は家へ帰ることができません」

「いや、そんなに怪我もひどくないんで自力で帰りますよ」

「ああ、そうじゃなくて」


科視はゴソゴソと手提げカバンを漁り俺に紙袋を手渡した。


「此処はキミが住んでいたところとは別の世界。今日からちょっとの間だけど、ここで暮らしてもらうよ」


「は?」


確かにここは見覚えのない場所だ。

だが、「別の世界?どういうことだ?最近はやりの異世界転生ってやつなんか?」


ただの軽口だった。

無論、否定されると思っていた。あははは、冗談に決まってんじゃんと笑い飛ばされるだろうと思っていた。


「飲み込みが早くて助かるよ、その通りさ」

「バカも休み休み言え。確かに来たことない場所ではあるけどそんだけで別の世界なんていう証拠はどこにもないだろ」


「雫駆さー、あんな状況になってたのにマトモな世界で助かってたと思ってるの?」

「あんな状況ってなんだよ」


「数十分前のことでも過去は切り捨てるタイプだったっけ?あんな濁流に落ちて意識飛んで、まだ生きていられるのおかしいと思わないの?あのまま行ったら確実に死んでたよ」


「俺が……死んでた?」

「まだ死んでないけどね。やばそうだったところを偶然私が見つけてこっちの世界に移動させたってわけ」

「そんな、ことってあるのかよ」

「別にいま信じてくれなくてもいけどね。ここに雫駆の世界のような人間関係コミュニティはないし。嫌でもこの世界のことを受け入れなくちゃならないと思うよ」


まじかよ・・・。科視の言葉が正しい正しくないの判断はおいておいて、それを信じるなら大体の状況は把握できた。

ん?ちょっと待て。


「じゃあ俺はもう一生元の世界に帰れないのか?」

「うん」


心臓が一瞬凍ったかと思った。


「というのは冗談で……」

「殺すぞ」

「あはは、ごめんごめん。でも私のチカラでもそんな頻繁に世界移動グランウォークはできないんだよね」

「つまり?」

「雨泊雫駆君には一ヶ月ここで過ごしてもらうことになりまーす☆」

「」

「さっきの紙袋の中身、こっちの学校の制服だから着替えたらさっさと登校しとこう!クラスの中には私のチカラで自然に溶け込ませるから大丈夫!」

「まったく大丈夫じゃあないが、一ヶ月経ったら元の世界に返してくれるんだな?」

「もちろん。あ、暦はあっちと同じだから君が帰れるのは十月十五日になるかな」


ここまで突拍子も無いことが起こると夢なんじゃ無いかと疑いたくなる。だが、足の傷の痛み、頬を伝う雨の冷たさが嫌でも現実だと認識させる。

とりあえず右も左もわからない別世界で俺がとり得る行動は彼女――科視に付き従っていくことだけなのだろう。


――今のところは。

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