MOTHER2・アフターストーリー「帰ってきたヒヨコ」

スニーク
@3Colorless1Red

エピローグ

その後の経緯。


静かになった巨大ニワトリをその場へ残し、ネスはポリスマン達が進路確保した道を加速区間に用いて、無事テレポートαを成功させた。


到着したウィンターズ、スノーウッド寄宿舎前で、ジェフ、トニー、アップルキッドの3人がネスを待っていた。


「やぁネス君、ジェフの親友のトニーです。毎晩、ジェフとはネス君みたいに電話じゃなくて、直接見つめあってお話している、大親友のトニーです。」


何故か毎回ネスに対して圧があるような気がするトニーが、ずいっと真っ先に進み出て挨拶していると、その横からジェフとアップルキッドが割り込んできた。


「挨拶は後だ、ネス、とにかくこれを持って行って。ぼくと、アップル君で作ったんだ。」

「ぼくはこれを、げんしかいきマシンと名付けました。げんしかいきは、原子回帰と書きます。」


手渡されたソレは、何やら小ぶりな光線銃の様な形状の機械であった。

丸みを帯びたラインと片方の先端に発射口の様な穴が、もう片方にトリガーの様な装置が付いており、何ともチープ感が漂うが、実績あるアップルとジェフの発明だけに、うさん臭さは全くない。


「スペーストンネルの技術を応用したものでね。対象の生命体を、それが生命体になる直前の状態までワープ、というか戻す事ができるんだ。つまり、これをあのニワトリに向かって使えば、生みたて卵の状態に戻せるはず。当然、その段階の卵は普通のサイズだったから、あの大きさになることはないよ。」


ジェフの説明を聞くと、何と言うか、もう便利とかいう段階を通り越して反則的な印象のある道具であったが、スペーストンネル完成から、どせいさんの力も加わり、発明の技術レベルが一気に跳ね上がったのであろう。そういう事にさせてもらおう。話の収拾がつかなくなる。


「あ、かなり危険だから、一定水準以上の知的生命体には使えないようにストッパーをかけてるよ。ニワトリなら、大丈夫。」

「それと、これをどうぞ。ビッグフットさんが前に見つけてきたモノです。」


ジェフの一言に少々ホッとしつつ、アップルから渡されたサイコキャラメルを口に含んでコロコロと転がすネス。体内のサイコパワーが少し回復していくのを感じる。


「ありがとう!おかげで何とかなりそうだよ。」

「ネス、これに懲りたら、何というか、もうあまりやたらと卵を買うのは、控えるんだよ。」

「大丈夫!オネットには、生みたて卵を売ってる店がないんだ!」

「いや、そういう問題じゃ……」


ジェフの意からは少々外れた答えを残して、ネスはトンボ帰りでテレポートしてオネットへ戻っていった。


ニワトリは、約束通り静かにその場でネスを待っていた。

ネスはじっとその目を見つめながら、あえて原子回帰マシンを差し出すように見せて、再び思念を飛ばす。


(あのね、これを使うと、キミを、タマゴの状態に戻すことになるんだ。生まれてくるのは、またキミ自身で、それは変わらない。今度は、そんな大きな身体じゃなくて、普通の身体で、普通に生きていける。……キミがよければ、ぼくがキミを孵化させて、ずっと育ててあげたいと思うんだ。それが少しでもぼくの償いになるかなって。嫌かい?もしそれでいいなら、このままそこでジッとして居てほしい。)


そこで、ネスは返事を待つように思念を止めた。ニワトリは……動かない。

10秒、30秒、1分……その場でネスを見つめたまま、佇み続けた。

その目は、心なしか穏やかな色を湛えている、様な気がネスにはした。


ネスは小さく頷くと、ニワトリにマシンの発射口を向け、トリガーを引いたのだった。



数時間後。

「ただいま!」と家に戻ってきたネス。

TVを見ていたママは、慌ててネスを出迎え、無事を心から喜んだ。


「と、言う事で、巨大生物は突如消え去ったとはいえ、オネットの街は大変な被害にあった模様ですが、警察官達の尽力もあり、死者は奇跡的に一人も出なかったとの事です。勇敢なヒーローとして、ポリスマン達には尊敬の念を禁じえません。」

「いや、一番のヒーローは、我々ではありません。」


ママがハンバーグを作り直しているのを待つ間、TVのニュースではストロング署長のインタビュー映像が流れていた。

署長の意味ありげな一言に、インタビュアーが「どういう事でしょう?」と尋ねるが、署長はそれだけ言い残すと微笑みだけを残して、その場を去っていった。


「いやぁ、大変でしたが!これからオネットは復興してみせます!大怪獣が現れた街、オネット!怪獣の足跡も見られますし、市民が撮影した怪獣の写真も展示します!お土産には怪獣Tシャツ、怪獣まんじゅう!皆さん、こんな経験できるのは、オネットだけ!今すぐご旅行の準備を!」


商魂たくましいというか、ピカール市長は転んでもタダでは起きぬとばかり、街のアピールに余念がない。

確かに、こんな大事件早々起こるものではなく、物珍しさに観光客が増えそうな気もする。

街の修復費用は、そこから何とか捻出できるであろう。


「お兄ちゃん、リュックはもう部屋に持っていったら?」

「いや、もしかしたら、そろそろ生まれるかもしれないからね。ここで見ておくよ。」

「?」


ネスの言う意味が解らず戸惑っている様子のトレーシーをよそに、リュックの中では、冒険の間と同じように、生みたて卵が孵化の時を着々と待っている。

今度生まれてくるヒヨコは、きっと、ニワトリになっても売られる事なく、ネスの下で飼われるであろう。

もう、お金稼ぎは必要ないのだから。