星ノ海ニ舞ウ姫

アメツキ
@black_a_dream

九、黒麒麟

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 春も終わりを告げる、新月の夜。

 平家の屋敷では、宴が開かれていた。

 「あなたの舞が見たい」と言う重衡に、宵藍は『人に見せられるようなものではない』と首を振ったが、将臣が「久しぶりに俺も見たい」、清盛が「おお!宵藍は舞ができるのか!」と言い、知盛が「お手並拝見だな?舞姫殿?」と煽ってきたことで、舞わなければいけない空気となってしまい、宵藍は渋々了承したのだった。


「…ほう」

「これは…」


 星空の下、ひらりひらりと舞う宵藍。


 この異世界に来るまで、宵藍に舞の師はいなかった。元々いた世界では、動画を見て独学で覚え、菫に見てもらっていた。異世界へ来てからは、斎久が舞ができるということで教わっていたのだった。


「美しい…」


 蝶のように優雅に舞う宵藍に誰もが息をむ。


「…なるほど、星海の舞姫、か」


 以前、弟が言っていた言葉を口にする知盛。その言葉に呼応するように、周りにいた者たちも「星海の舞姫」と口にし、この時から宵藍は[星海の舞姫]と呼ばれるようになったのだった。


「…蝶?」


 将臣の前を、一匹の金色の蝶がふわふわと横切った。

 どこかから飛んできたその蝶は、ふわふわと宵藍に近付いていく。


「あの蝶は…」


 以前、神泉苑で舞っていた宵藍の周囲にいた金色の蝶を思い出した重衡。

 「知ってるのか?」と聞く将臣に、重衡は「はい」と頷く。


「…なんか、増えてねぇか?」

「そう、ですね」


 宵藍の周りに集まっていく金色の蝶。

 宵藍は蝶を気にしていない様子だった。


「光が、強くなっている…?」


 宵藍の周囲で舞う蝶が放つ金の光が増していく。


「宵藍!蝶から離れろ!!

 宵藍!!聞こえないのか!?」


 将臣の声が届いていない様子の宵藍。

 まばゆい光を放つ蝶が宵藍を覆った瞬間、目が眩むほどの光を放った。


〔うつくしい、舞、でしたよ。

 わたくしの、かんなぎ


 鈴を転がしたような、しかし、男とも女とも言えない声が聞こえた。


〔あなたを、わたくしの巫に選んで、

 正解、でしたね。

 わたくしの”眷属けんぞく”たちにも、

 好かれている、ようですから〕


『くろ、きりん…?』

〔はい〕


 宵藍たちの前に現れたもの、それは宵藍が言った通り、”黒麒麟”だった。

 その姿を目に映した者たちは、その荘厳な姿に目を見開いた。


〔やっと、あなたの前に、

 姿を現すことが、できました。

 白の巫に、話は聞いた、ようですね〕


『はい』


〔わたくしは、あなたに”く”モノ。

 この”金の蝶”はわたくしの眷属であり、

 モノに命を、吹き込む存在。

 あなたが、”式”としたいモノに、

 この蝶は宿りますが、気を付けて。

 一度にたくさんの式を生み出せば、

 あなたの命が削れてしまう。

 多用は、しないように〕


 黒麒麟の優しい、しかし他者が割り込むことを許さないような声が、この場に響く。


〔わたくしが、あなたに、

 してあげられることは少ない、

 …ですが、あなたを乗せて、

 遠くへ行くことはできます。

 必要なときは、呼んでください。

 わたくしにも、寂しい、

 という感情はありますから、

 呼んでください、ね?〕


 黒麒麟は、ふふふ、と上品に笑うと、〔さて〕、と言って首を巡らせ、周囲を見渡した。


〔わたくしの巫を、

 くれぐれも傷付けることのないよう、

 守ってください、ね〕


 優しい声音だが、有無を言わせぬ言葉遣いに、宵藍以外の者はただ頷くしかなかった。


〔わたくしの巫。

 また、会いましょう〕


 そう言い残して、黒麒麟は姿を消した。

 この時から、そう頻繁ではないものの、平家の屋敷内で黒麒麟の姿が目撃されるようになるのであった。