蜂蜜ライセンス

深矢
@fucaya

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教室に入ると私の席には慈郎くんが座っていた。うつ伏せて、寝ている、の、だろうか。

こんなに朝早く(といっても普通の時間)に慈郎くんの姿をみたことはなかったので、ちょっとだけそれに驚いて、でも私座れないじゃんと困った顔もしてみた。



本当はどこか嬉しくて、それでもどこか痛かったけど。













「慈郎くん、おはよ、ここ私の席だよ」





意を決して話しかける 普通に、普通に。もう身体には触れてはいけない気がして、だから声だけかけた。途端に慈郎くんは起き上がって私を見つめた。少しおでこが赤くなっている。



いつからこうしてたんだろう。








「名前ちゃん!」








すごい勢いで慈郎くんは私の腕を掴んだ。



でもその勢いが強すぎて、



それに、私の中にある罪悪感が、無意識にそんな慈郎くんの手を払いのけていた。





咄嗟にしまったと思った。悪いのは私なのに慈郎くんを不快にさせてどうする。



目の前の慈郎くんは眉毛を下げて私を見上げている。










「名前ちゃ、ん?」



「・・・・・慈郎くんはそっちでしょ、席」



「・・・・・昨日、メールの返信なかった」



「・・・・・もうすぐチャイム鳴るよ・・・・」



「どうして無視したの?」



「ほら、みんな席について



「俺なんかした?」



「・・・・・・(じゃなくて私じゃん)」



「わけわかんないよ」



「・・・・ごめ



「だからどうして謝るの?」










「・・・・・・ごめ・・・ん」












顔がどんどん冷たくなる。顔中の血が一気に引いていく感じだ。

私はただ、ごめんしかいえなくて、どうして誤ってるかなんて説明すれば、また、余計に私はみじめになってしまう。でも、慈郎くんにしたらわけが分からない状態で。



別れるなら別れるで話をつけたいんだろう。



だめだ、今は本当に無理だ。

私の重すぎる愛の迷惑行為を語る気になんて到底なれない。

ましてやここは教室で、みんなだって周りにいる。

ほら、こうやって慈郎くんが私の席に座ってる時点でみんな注目しているのだから今は本当に無理。



今日中に気持ちを安定させるから、



放課後にはしっかり話せるようになっておくから。





ちょっと待ってよ慈郎くん。







私の愛は確かに重かったけど、慈郎くんが嫌だっていうなら



どれだけ自分が苦しくたって諦めることくらい出来るんだからね。



それくらい、好き、なんだからね。






だからちょっと待って。










ちょっとだけ、待って。














キーンコーン・・・



どんどん冷たくなっていく身体をただ感じるだけで、それ以上私は慈郎くんになにか出来るなんてことはなく、丁度いいタイミングで鳴ったチャイムに私は凄く感謝した。



先生が入ってきたので慈郎くんは納得いかない顔で隣の席に移動した。





























嘘でしょ怖い。




チクタク動く時計の針が気になって仕方が無い。







授業が始まってほっとして机の中から教科書を出して先生の話を聞いてノートをとって、ちょっとうたた寝して。で、なんとなく隣の慈郎くんの様子を伺ってみた。

結構自分で我慢したと思う。普段なら5分に一回はその天使のような寝顔を伺っていたのだから。

もうかれこれ授業開始から30分。自分でもびっくりするくらいの偉業を達成してしまっていた。

だからちょっとくらいいいんじゃないかなって思うのは仕方ない。



どうせ寝てるんだし、寝顔くらい見せてくれても減るもんじゃない。



だから私は首を軽く回してそちらの方を見た。








ドクン













堪能する間もなくその視線は逸らさずを得なくなった。











慈郎くんがまっすぐ私の顔を見ていたからだ。

嘘でしょ、どうしてこっちを見ているの?



慈郎くんは少し厳しい目で私を見つめていた。

机に肩肘ついてそこに全体重をあずけて、私の方に身体はむいていて、それはもうチラ見だとかいう話ではない。見ている、そのものだ。



起きているってことだけでも不思議で素晴らしく怖いのに、

どうして私にその目線が集まっているんだろうか。



どうしよう「早く言ってよ別れようって」とか、そんなメッセージがこめられてるんだろうか。

そうならどうしようもなくやっぱり怖い。



焦らないでよ慈郎くん。





ちょっとまってよ慈郎くん。







ちゃんと放課後には笑って「ごめんね」と「ありがとう」を言うんだから。

だからそれまで私の心を落ちつかせてあげてよ、お願いします。



ドクドク動く心臓の音が聞こえないか、それにもドキドキしながら私は慈郎くんの席とは逆方向へ視線を泳がせた。そうしたら廊下側の前から2番目の席に座る忍足くんがこっちを見て笑ってた。いや、笑ってないで助けてよ!少しだけ顔を顰めたら忍足くんは口元に手を当てて前を向きなおした。余計に笑い出したようだった、忍足くんは何を考えているかわからない。












ドクドクドク















その後も心臓は動く。気づけば一日中動き続けていた。なんて可哀想な心臓なんだろう。



今日は運悪く全ての授業が教室で行われる日だった。

体育とか、家庭科とか、美術とか、そんなのは全然混ざってない時間割。

誰だこの時間割を考えた奴は成敗してくれる!どんどんなんだか腹が立ってきた。



慈郎くんはどの授業も1時間目と同じ体勢で私を視姦してくる。

それは時間を追うごとに厳しいものになっていって、早く別れを言えよとせかされているみたいで。

私は1日を使って、気持ちを安定させる予定だったのに、安定するどころかどんどんそれは不安定な方向に向かって走っている。怖いよ、怖いって。



こんなことなら今朝あの時点でやけくそになって言っておけば良かったんだ。








「私の愛の押し付けに答えてくれてありがとう、ごめんね、もういいよ」







それだけ言ってしまっていたならば、今、悲しくて心が苦しいなんてことはあっても、慈郎くんが怖くて手が震えるなんてことにはならなかったんだ。ああもう何か道を踏み外している気がしてならない。



でもそれは最初からだったのかもしれないと思ったら、妙に簡単に諦めはついた。





ああでも怖い。










やっと今6時間目で、この授業が終わればやっと私は解放される。



解放だ、そう、解放。私もこの視姦から解放されるし、




慈郎くんは私という重さから解放される。








時間は残り10分。








時計の針の動きはやけに遅い。
















それにしても今日は慈郎くん眠らないんだな。怒ってるときは眠くならないのかなぁ。

そんな考えがフワっと浮かんでチラとまた隣の席に伺いをたててみれば、やっぱり慈郎くんは目をぱっちりあけてこちらを見ていた。



ドクン

慌てて目線を反対方向に逸らす。

そしたら自ずとその先に忍足くんがいて、その顔はやっぱり笑っていた。性格悪いなぁ。





(人の不幸を喜ばないでよ!)






授業中なので声は出せないけれど口を動かして忍足くんに非難を浴びせる。

忍足くんは一瞬目を見開いたかと思ったら、眼鏡を外して、急にウインクを私にくらわした。







ギャーーー




気持ち悪い





きっと多分他の女の子ならその色のあるウインクに頬を染めるのだろうけれど、私の好きな人は慈郎くんで、でもって、今、誰かにときめいていられる現状ではない。何を考えてそんなことをするのかは分からないけれど、とにかく私をからかって遊ぶのはやめて欲しい。

真っ青になって私は一度視線をそらしたけれど、でもなんだかそれは逃げてるみたいで腹が立ったので、もう一度忍足くんの方へ顔を向けた。そうしたら忍足くんはもう眼鏡をかけていて、でも、こっちを向いて微笑んでいた。やっぱりムカツク。私は失礼かなと思いながら、先ほどと同じように口パクで忍足くんに言葉を投げる。







(きもいよ!)








忍足くんはまた一瞬目を見開いたかと思うとそれは面白そうに顔を緩めて、







( 可 愛 い な )








と確実に伝わるようにゆっくり一文字づつ区切って口を動かした。その顔は余りにも面白そうな、からかうような顔をしているのでどう考えても心の篭った言葉ではない。



ああ頭がいたい、とてつもなく。



私はもう構っていられないと机に頭を抱えて伏せた。この時間が終わったら、一発殴ってやるんだ。

そんな決意をして、残り少ない授業を机にうつ伏せてこなした。





















チャイムが鳴って、先生が教室を後にする。クラスメイトたちが次々に鞄に手を駆け出した。



私はさっと席を立って忍足くんの方へ向かおうとした。早くしないと彼は部活にいってしまう、殴れなくなる。視界に入っている忍足くんは何食わぬ顔でテニスバックに手をかけている。







「ちょ、忍足くへっ!!?」







酷いよなんなのあれは!そう言って詰め寄るはずだった。

だけど私は腕を何かにつかまれて、その場から動けなくなった。









慈郎くんだった。

















そうだしなくちゃいけないことが私にはあったんだ。

















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