蜂蜜ライセンス

深矢
@fucaya

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好きだって気持ちは簡単に伝わってしまうもので、私が芥川くんを好きだってことは

多分、きっと、クラス中が知っていることなんじゃないかなぁ。











蜂蜜ライセンス










それでも私は良かったんだよ。

私が芥川くんの事が好きなのは本当のことだし、

それがばれてしまうような行為だって惜しみなくやってたし。



えっとね、えーっとね、例を挙げるとね、

授業中でも堂々とサボってどこかで寝ている芥川くんの授業のノートを変わりにとってあげたり、

芥川くんが大好きなムースポッキーはいつでもカバンの中に入れていたり、

窓際後ろから3番目の席で机にうつぶせている芥川くんがボソッと寝言で「暑い」なんて言ったときにはその隣に座っている私が即座に席を立ってカーテンをしめてあげることだってしたし、

授業が終わっても寝ていたりする芥川くんの机の上を片付けたり、6時間目の最後は起こしてあげたり、裏庭の木陰まで走っていって起こしてあげるなんてこともしょっちゅうだしね。

とにかく、私の1日は芥川くんづくしで、だから、周りのみんなにはバレバレだったんだ。










「苗字、そんな甘やかしたらあかんよ」








一度だけ芥川くんと同じ部活の忍足くん(同じクラス)が私に呆れながらそう言ったことがあるけど、私はそんなこと気にも留めなかった。だって、私は芥川くんのことが大好きだったんだもの。



だから、芥川くんが私の決死の告白に答えてくれた時、死んでしまうかと思ったんだ。









それは丁度1ヶ月前。

いつものように6時間目が終わっても教室に姿を現さない芥川くんを起こしに(だって部活があるでしょー?跡部くんに怒られたらかわいそうだしね!)私は校舎をきょろきょろ見回しながら歩いてた。



そうしたら裏庭の木陰に足が見えて、



なんだかんだでいつもその場所で寝ている芥川くんに少し顔が緩んで。

調子よく近づいて身体を揺すってみた。







「芥川くん、起きてー」



「ん・・・」



「こんなところで寝たら風邪ひいちゃうよ」



「ん、ん・・・」



「もう部活も始まっちゃうよ?」








何度も揺すって揺すって揺すって、そうすればやっと芥川くんは目を擦りながら状態を起こしてくれる。芥川くんに触れている手がじんわり彼の体温を感じていて、私はそれだけですごく、幸せな気持ちになれる。寝起きの彼はすごく温かいんだ、そして、なんだか甘い。








「んー・・・苗字さ、ん?」



「うん、ほら、起きないと」



「うん、・・・でもねむた、いよ」



「部活、あるでしょ?ほら!頑張っておきよう!」








いつもいつもお母さんみたいなこと言ってるなって自分で思う。

芥川くんが大好きだからって彼に構ってしまうその行為も全てそれらはどれも一方的な愛情で、それは絶対的なものなんだ。私が芥川くんを嫌うなんてありえないから、芥川くんが迷惑に思っていたとしたって、私はきっとずっとそれをしてしまうんだと思う。

彼が、彼の口で「やめてよ」って否定しない限り、私はずっとずっと。



もちろん、私は芥川くんのお母さんじゃないし、私が持ってる愛は恋愛の愛、だけど。










芥川くんは再び身体を横たえる。綺麗に目は閉じられた。








「もうちょ・・・と、苗字さん、一緒に寝よ?」



「え?」



「苗字さんに膝枕して欲Cー・・・」



「ええ!?」



「して欲C-・・・」








芥川くんは時々ドキっとするようなことを言う。

でも、そういうときは大抵寝ぼけていたりするってことにその頃漸く気づき始めてて、だから私は彼の意識は霧の中だってそう思って、その時、なんとなく胸に秘めていた想いなんぞを口にしてみたんだ。

秘めてたっていう言い方は可笑しいかもしれないけどね、みんな知ってたし。









「私、芥川くんが好きだからそういうこと言われると期待しちゃうよー」









本人は分かってないだろうと思っているけれどもやっぱり心臓はドキドキしてしまって、目線がキョロキョロ動いてしまう。芥川くんは相変わらず目を閉じて穏やかな呼吸を繰り返している。芥川くんの胸が上下に動く。返事がない、ただ、穏やかな息遣いと太陽に照らされた明るい髪の毛。








「・・・・・また寝ちゃったのかな」








こうやってこんな近くで愛を叫んでもそれは伝わらないんだ、と心のどこかで残念に思って、でも、どこかほっとして、さてどうしようかって私は芥川くんのすぐ傍にしゃがみこんだ。







「芥川くーん、起きてってばー部活だよー」



「んん、・・・・苗字さ、ん」



「なにー?」



「俺、苗字さんの彼氏にな、る」



「ハ?」



「苗字さん宜・・しくー」



























心臓が止まるかと思った。








嘘だって100回くらい心の中で叫んだ。





























そんな始まりがあって1ヶ月。





毎日がすごく幸せで。私の彼に対しての行動は付き合う前と何かが変わったってことはなかったけれど、芥川くんの傍にいれるのは私なんだって思うだけで本当に幸せで。

それまでと同じことをする私の心は全然違っていて、どれをするにも心はウキウキ気分で騒いでくれていた。



苗字さんから名前ちゃんになって、芥川くんから慈郎くんになって。

私が部活が終わるのを待ってたときは手を繋いで帰ったし、他愛もないメールを送ったときも優しい言葉で返してくれた。(寝ていたりするからリアルタイムには返ってこないけどね)




私の愛が伝わったんだって思ってた。

私が慈郎くんにしていたこと、迷惑じゃなかったんだって、そう、思ってた。





ほんとうに、本当に、幸せだったんだ。
























だけどそれはあっけなく崩れさってしまった。

























私の愛はやっぱり一方的なものだったらしい。


























慈郎くんは私が告白したその木陰で、隣のクラスの女の子にキスを貰って、それでその後、幸せそうにその女の子を腕の中に収めていたんだから。



その顔はすごくすごく幸せそうで、







最近の自分の顔もあんな顔だったのかなって漠然と思った。






























世界が反転した。














怖くなった。



一気に何もかもが怖くなって。





私が慈郎くんにしていた行為はやっぱり迷惑だったんだって、

一方的に押し付けてしまっていた愛を、

慈郎くんは付き合うということで私に返そうとしていたのかもしれないって。



そう思ったら、すごく怖くなった。





愛なんかなくて、ほんのお返し。











そういえば私は忍足くんに一言いただいていたんだった。





「苗字、そんな甘やかしたらあかんよ」





それは忍足くんなりの優しさで遠まわしの言葉。

本当はきっとこういいたかったんだ、「苗字、ちょっと押し付けすぎやで」






嘘であって欲しいと思った。

見たこと、聞いたこと、全て、嘘であって欲しいって。



でも私が目にしたそのシーンは確実に現実で、

他の女の子を抱きしめる慈郎くんのその顔はみたことないくらい幸せそうで、

私はあんな顔を一度だってもらったことはなくて、

抱きしめられたことだってなくて、キスだってなくて、







ああ、そういえば、「好き」とも言われてなかったんだ私は。

















ごめんなさい。











重すぎる愛を、私は彼に押し付けていたらしいんです。












どうしよう。













私は、彼を無意識に縛り付けてしまっていたようです。











































次の日、6時間目が終わって帰る準備をする私に忍足くんは近寄ってきた。













「あからさまやな」



「・・・自分がどれだけ迷惑な奴かって分かっただけだよ」







忍足くんは忠告してくれたのにね、そう付け足して私はため息をついた。

忍足くんは何か言いたそうだったけど悲しそうな目で微笑んでくれた。

教室に慈郎くんはいない。多分、隣のクラスの女の子とまた逢引しているんだろう。



ズキン



胸が痛い。

私は、慈郎くんを避けている。





夜中いっぱい時間を費やして涙もいっぱい流して出てきた答えはやっぱり自分の押し付け行為が慈郎くんに迷惑をかけたってことだった。それは私ばかりが悪いっていう結論みたいだけれど、少しは慈郎くんも悪かったとも思ったりしたよ?だって、別に私は押し付けた愛を返して欲しいなんて言ってなかったのだから。慈郎くんは私と付き合うってことでそれを返せると思ったのだろうけれど、そんなのあんなシーン見たら私が哀れなだけだよ。本当に好きな人がいるのなら、それは私が哀れなだけなんだよ。



あんな顔見たくなかった。

私じゃない他の誰かに幸せにしてもらう慈郎くんなんて見たくなかった。



それなら最初から彼氏になるなんていわなければいいのに慈郎くん。



ああ、でも私に何かお返しをしなければいけないって考えるほど、そこまで慈郎くんを追い詰めてしまったってことなんだって考えたら、やっぱり文句は言えない。



悪いのは私なのだから。








ほらね、堂々巡りだ、どう考えても私は救われない。










「なんか、あってんな?」



「・・・・・ないよ、はじめから、何もなかったっぽい・・・」







何故か心配してくれる忍足くんのほうは見れなくて視線を隣に流した。

慈郎くんの机の上はごちゃごちゃだ。私が整理しなかったからだ、でもそれが普通だ。



じわっと涙が出てきそうになった。










「苗字さ



「部活、遅れるよ?」







やはり何か言いたげな忍足くんの言葉を遮って、私はその場を後にした。









忍足くん、慈郎くんを起こしに行ってあげてね。



慈郎くん、ごめんね、私はやっと気づきました。



だから、もう重苦しい愛は送らないから。



慈郎くんは返さなきゃなんて義務感は持たなくていいからね。



でもでもでもでも、



ちょっとだけ、不便だなって思ってくれたら嬉しいな。



・・・・・・ごめんなさい、嘘だよ、幸せになって。

























慈郎くんを起こすのは私じゃない。

慈郎くんにノートを貸してあげるのも私じゃない。

慈郎くんの机を片すのも私じゃないし、

慈郎くんに愛を与えて、そして、返してもらえるのも私じゃない。



そう望んでいたけれど、そうじゃない。








独りよがりな愛の結末。



鮮やかに自分で咲かせて、栄養過多で枯れさせて、








私は、これからどうやって生きればいいんだろう。














幸せ、やってくるのかなぁ。






































その日の夜メールが来た。

彼だけに設定した着信音が私の部屋に鳴り響いた。



どうやら慈郎くんは私の異変に気づいたようだ。

当たり前のように行われていた迷惑行為が今日は一切なかったのだ。そりゃ気づきますかって少しだけほんの少しだけ嬉しくなった。私の存在をまだ、気にかけてくれているらしい。



付き合っているとき、彼からメールが来たことは一度だって無かった。



だからそれも実は嬉しい。

とっくに枯れ落ちた恋の花びらは、まだ、風に飛ばされてはいないみたいだ。



慈郎くん、ダメだよ、また咲いたらどうする?













>>名前ちゃん、怒ってる?






彼のメールは1行だった。その文章をみて頭を捻る、返すべきか返さないべきか。

返したい気持ちはやまやまだ。でも何をどうやって返せばいい?



別れ話をすればいいんだろうか。

ううん、別れる別れないの関係などではなかった、少なくとも慈郎くんは。




だから、えっと、えっと。











>>ごめんね慈郎くん、本当に、ごめんね





そう打って送信した。

無視するって道もあったけど、私はそれを返信した。だって謝らなければならないと思ったから。



独りよがりな愛を押し付けたこと、自分がしてしまったこと、を置き去りにはしたくないと思ったから。ごめんね、慈郎くん、ごめんねごめんね。













>>どうして謝ってるの?名前ちゃん何かあったの?







すぐさままた慈郎くんから返信が来たけれど、私はそれきり返信できなかった。

今日は起きてるんだねとか思いながら、ずっとずっとその画面を見ていた。



慈郎くんは優しいね、知ってたけどね。

































そして朝日は昇った。

















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